ファクター投資入門

近年スマートベータとして流行しているファクター投資を解説した本です。

ファクター投資入門 (ウィザードブックシリーズ)

ファクター投資入門 (ウィザードブックシリーズ)

  • 作者: アンドリュー・L・バーキン,ラリー・E・スウェドロー
  • 出版社/メーカー: パンローリング株式会社
  • 発売日: 2018/11/18
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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著者らは数百もあるさまざまな投資ファクターのなかから真に価値あるファクターを選り分けるために5つの基準を設定しています。

・持続性・・・長期間にわたり、異なる経済的レジームでも有効である。

・普遍性・・・あらゆる国、地域、セクター、さらにはアセットクラスで有効である。

・安定性・・・どのような定義でも有効である(PBR、PER、PCFR、PSR)。

・投資可能性・・・机上のみならず、取引コストなど実践するときの検討事項を考慮したあとでも有効である。

・合理的な説明・・・そのプレミアムとそれが存続する理由を、リスクに基づき、または投資家の行動に基づいて、合理的に説明することができる。

これらの基準をクリアするファクターとして、本書では市場ベータ、サイズ、バリュー、モメンタム、収益性・クオリティ、ターム、キャリーが紹介されています。また付録では、配当、低ボラティリティ、デフォルト、タイムシリーズモメンタムも取り上げています。

 

各ファクターは持続性・普遍性・安定性・投資可能性・合理的な説明の観点から詳細に解説されています。長期的なリターンはどれくらいあったのか、アメリカ以外の国でも機能しているのか、実際の投資信託のリターンはどうなのか、そのファクターが有効な理由はなぜなのか、など。

これらの解説はほぼすべてが学術的な研究に基づいておりとても信頼感がありました。また、数式は出てこないので数学の苦手な人も読むことができます。難しい数式のある英語の論文を大量に読むのは難しいので、このようなまとめ本があるのはとても助かります。

個別ファクターの解説以外には、論文発表後のリターンの変化やファクターの分散効果といった話も書かれています。

以上のように内容的には文句なく素晴らしいので、ファクター投資について正確な情報を知りたいという人にとっては必読の一冊だと思います。難点を挙げるなら図表が少なく堅い文章がぎっしり詰まっている感じなので読んでいて面白みを感じないところでしょうか。

 

なお、各ファクターについての簡単な概要は下の記事にメモしています。