超長期のデータを使った配当利回りによるリターンの予測可能性

4世紀という長期のデータを使って株式リターンが予測可能かを調べた Four centuries of return predictability という論文を読んだ。

著者によると、ファンダメンタル指標によるリターンの予測可能性を調べた研究はあるが、そのほとんどは近年のアメリカ市場が対象とのこと。

この研究では1629年~2014年の期間における金融首都のマーケットデータを使ってリターンの予測可能性を検証している。

・1629年~1809年 アムステルダム 5銘柄。時価総額/GDPは15%~64%。

・1825年~1870年 ロンドン 125銘柄~250銘柄。時価総額/GDPは10~30%。

・1870年~2014年 アメリカ 1871年に50銘柄。時価総額/GDPは39%~152%。 

 

結果はこんな感じ。

・名目リターンは、オランダ/UK期間(1686~1809)が5.5%、UK期間(1825~1870)が6.9%、戦前のUS期間(1875~1945)が6.9%、戦後のUS(1945~2014)が10.3%。ただし、1945年以降の高いリターンはインフレによるところが大きく、実質リターンだとすべての期間が5.1%~7.5%の範囲に収まる。

 

・4世紀にわたって配当利回りは安定しており、長期平均の5%前後で推移している。ただし、1945年以降の平均は3.4%と大幅に下落している。

 

・17・18世紀には利益の100%に近い配当が支払われていたが、20世紀中頃から配当性向は急激に低下している。19世紀終わりのアメリカでは80%だったが、現在では40%程度まで落ちている。

 

・配当利回りは落ちているものの株価の上昇によってトータルリターンに変わりはない。1945年以前はリターンの大部分が配当だったのに対して、近年のアメリカ市場の実質リターンの半分は株価上昇による。

 

・配当利回りによってその後の株式リターンを予測できる(高い配当利回りは高い株式リターン)。すべての期間において、1年でも複数年でも、配当利回りの予測係数はプラスとなる。両者の散布図の傾きはUKで最も大きく、近年のUSで最も平坦。

 

・配当利回りによってその後の配当成長率を予測できる(高い配当利回りは低い配当成長率)。しかし、近年(1945年以降)のアメリカは例外でほぼ関係がなくなっている。

 

・配当利回りが高くなるリセッションの期間でリターンの予測可能性は強まる。