イールドカーブは短期金利と長期金利との差をグラフ化したものです。通常は短期金利よりも長期金利の方が高くなるのですが、両者が逆転することもあり逆イールドカーブと呼ばれます。逆イールドカーブは将来のリセッションを示唆すると言われています。
逆イールドカーブと景気の関係についてはこんな感じに説明されるようです。
景気拡張期には中央銀行が短期金利を徐々に引き上げます。一方で長期金利は投資家の景気への期待を反映して当初は上昇しますが、彼らが景気に悲観的になるにつれて上昇が鈍り短期金利とのスプレッドが縮小します。イールドスプレッドが縮小すると銀行の収益性が悪化するため、貸出が鈍り景気が減速します。
この逆イールドカーブについて書かれた記事をいくつか読んだのでメモします。
Federal Reserve Bank of San Francisco | Economic Forecasts with the Yield Curve
サンフランシスコFEDの解説。
過去60年に起きたすべてのリセッションに先立って逆イールドカーブ(この記事では10年-1年の国債金利)が発生している。
逆イールドカーブが起きた後には1度の例外を除いてすべてリセッションが発生している。
逆イールドカーブからリセッションまでのタイムラグは6~24か月。
Waiting For An Inverted Yield Curve, Waiting For Godot
1957年以降の過去9回のリセッションに先立って逆イールドカーブ(10年-1年国債)が起きている。先行期間7~24か月で平均は14か月。
過去9回のリセッションのうち、逆イールドカーブが株価のピークに先立って起きたのは6回。平均のリードタイムは6か月。
逆イールドカーブなしのベアマーケット(マイナス20%以上)も5回起きている。
リセッションのない逆イールドカーブも1965年12月~1967年2月の期間に起きている。
Is The U.S. Yield Curve Flashing A Sell Signal For Stocks?
1976年6月以降では、逆イールドカーブ(10年債と2年債のスプレッド)が起きた年のS&P500のリターンは12.51%でプラスリターンの割合は77%。
逆イールドカーブ翌年のリターンは10.81%でプラスリターンの割合は70%。
2年後の成績は落ちるものの、リターンは5.73%でプラスリターンの割合も61%。
Macro Wrap-Up: The Yield Curve Is a Very Interesting Topic
オーストラリア、日本、ドイツの逆イールドカーブを検証。イールドカーブの説明力は必ずしも明確ではないとのこと。
オーストラリアでは1990年以降で4度の逆イールドカーブが起きたが、リセッションが起きたのは1回だけ。ただし、他の3回でも景気のスローダウンは起きている。
日本では1991年以降に逆イールドカーブは起きていないが、何回ものリセッションが起きている。日本ではイールドカーブと景気の関係を見つけるのは難しい。長らく金利がゼロに近い状態が続いているからかもしれない。
ドイツでは1990年代初めと2000年代中頃に逆イールドカーブが起きており、いずれもリセッションが続いている。一方で2012年の欧州ソブリン危機のリセッションではイールドカーブの傾きは急だった。ただ、このリセッションはドイツ以外が原因だったのだろうとのこと。(そのほか記事に解説はありませんが、グラフを見ると2000年前後にも逆イールドカーブが起きており、タイムラグがあるもののリセッションが続いています。また、1995年にはイールドカーブは正常でスプレッドが大きいにもかかわらずリセッションが起きています。)