持ち株&気になる銘柄の決算チェック その2

決算シーズンも終わったので持ち株や気になっている銘柄をチェックしてみます。今回は内需系の銘柄です。

 

9267 ゲンキー

食品比率の高いドラッグストアチェーン。

1Qは売上高+12%の増収・経常利益+7%の増益でした。進捗はいまいちで、中間予想を達成するのに2Q単体では売上高+17%の増収・経常利益+37%の増益が必要です。

通期予想は売上高+16%の増収・経常利益+20%の増益です。

月次売上高は7月~10月まで全店115.2%・既存店107.2%と堅調です。

今期のPERは15.4倍弱とほどほどですが、下振れ懸念があるのが不安材料でしょうか。

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ファクター投資入門

近年スマートベータとして流行しているファクター投資を解説した本です。

ファクター投資入門 (ウィザードブックシリーズ)

ファクター投資入門 (ウィザードブックシリーズ)

  • 作者: アンドリュー・L・バーキン,ラリー・E・スウェドロー
  • 出版社/メーカー: パンローリング株式会社
  • 発売日: 2018/11/18
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
  • この商品を含むブログを見る
 

著者らは数百もあるさまざまな投資ファクターのなかから真に価値あるファクターを選り分けるために5つの基準を設定しています。

・持続性・・・長期間にわたり、異なる経済的レジームでも有効である。

・普遍性・・・あらゆる国、地域、セクター、さらにはアセットクラスで有効である。

・安定性・・・どのような定義でも有効である(PBR、PER、PCFR、PSR)。

・投資可能性・・・机上のみならず、取引コストなど実践するときの検討事項を考慮したあとでも有効である。

・合理的な説明・・・そのプレミアムとそれが存続する理由を、リスクに基づき、または投資家の行動に基づいて、合理的に説明することができる。

これらの基準をクリアするファクターとして、本書では市場ベータ、サイズ、バリュー、モメンタム、収益性・クオリティ、ターム、キャリーが紹介されています。また付録では、配当、低ボラティリティ、デフォルト、タイムシリーズモメンタムも取り上げています。

 

各ファクターは持続性・普遍性・安定性・投資可能性・合理的な説明の観点から詳細に解説されています。長期的なリターンはどれくらいあったのか、アメリカ以外の国でも機能しているのか、実際の投資信託のリターンはどうなのか、そのファクターが有効な理由はなぜなのか、など。

これらの解説はほぼすべてが学術的な研究に基づいておりとても信頼感がありました。また、数式は出てこないので数学の苦手な人も読むことができます。難しい数式のある英語の論文を大量に読むのは難しいので、このようなまとめ本があるのはとても助かります。

個別ファクターの解説以外には、論文発表後のリターンの変化やファクターの分散効果といった話も書かれています。

以上のように内容的には文句なく素晴らしいので、ファクター投資について正確な情報を知りたいという人にとっては必読の一冊だと思います。難点を挙げるなら図表が少なく堅い文章がぎっしり詰まっている感じなので読んでいて面白みを感じないところでしょうか。

 

なお、各ファクターについての簡単な概要は下の記事にメモしています。

 

持ち株&気になる銘柄の決算チェック その1

決算シーズンも終わったので持ち株や気になっている銘柄をチェックしてみます。今回はネット系の銘柄です。

 

3633  GMOペパボ

個人向けレンタルサーバーやネットショップ運営支援の会社です。主力事業は安定して伸びていますが、ハンドメイド事業が大きな赤字を出しています。

3Qは売上高+11%の増収・経常利益+93%の増益でした。通期の経常利益を46%上方修正していますが進捗率は95%と依然高いです。

セグメント別に見ると、ホスティングが1桁の増収増益、EC支援が+28%増収+15%増益、ハンドメイドが+11%増収5.35億円の赤字です。

EC事業は Canvath 事業譲受の上乗せがありますが、オリジナルグッズ作成のSUZURIが伸びているようです。

ハンドメイド事業は先行投資のため赤字ですが売上高の伸びは少し物足りなく思えます。ただ、月次の流通額は直近やや減速しているものの10月まで+18.5%の伸びです。

通期の営業利益は4.3億円の予想ですがハンドメイド事業の赤字が7.6億円あります。現在の時価総額は103億円なのでハンドメイド事業の赤字がなくなればPERは10倍台前半でしょうか。

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オニールの成長株発掘法

成長株投資で有名なウィリアム・オニールの本を読みました。 

オニールの成長株発掘法 【第4版】 (ウィザードブックシリーズ)

オニールの成長株発掘法 【第4版】 (ウィザードブックシリーズ)

  • 作者: ウィリアム・J・オニール,スペンサー倫亜
  • 出版社/メーカー: パンローリング
  • 発売日: 2011/04/15
  • メディア: 単行本
  • この商品を含むブログを見る
 

この本で解説されているのは株価が何倍にもなるような大化け株を見つける方法です。オニールはこの方法を「CAN-SLIM」という7つのルールにまとめています。

C=当期四半期のEPSと売り上げ(Current Quarterly Earnings)

A=年間の収益増加(Annual Earnings Increases)

N=新製品、新経営陣、新高値。(New Products, New Managment, New Highs) 

S=株式の需要と供給(Supply and Demand) 

L=主導銘柄か、停滞銘柄か(Leader or Laggard)

I=機関投資家による保有(Institutional Sponsorship)

M=株式市場の方向(Market Direction)

CAN-SLIMについてのオニールの言葉を引用すると、「われわれの手法は、強いファンダメンタルを持つ企業、つまり独自の新製品や新サービスによってもたらされた大きな売り上げと増益を見せる銘柄を見つけだし、そのような銘柄が適切に形成されたベース期間から抜け出して強気相場で大きく上昇を始める前に、正しいタイミングで買うということだ」とのことです。

他のファンダメンタル系の投資手法と違うのは、最高の成長株のみを対象にする、バリュエーションにこだわらない、上げ相場のときだけ参加する、チャートを重視するといった点かなと思います。

 

CAN-SLIMの有効性についてですが、客観的な検証結果が掲載されているわけではないのでこの本を読んだだけではよく分かりません。上げ相場でのグロース株は強烈に値上がりするので正確に実践できればかなり効果的な気はしますが。

ただ、実践に当たってはマーケットの方向性を見極めるという点がかなり難しいのではないかと思いました。オニールはチャートさえ正しく読めればマーケットの天井や底を見抜けると言いますが、解説ではいくつもの条件が羅列されているだけで明確なルール化はされていませんし、その根拠も成功したチャートが掲載されているだけです。これは個別株のセットアップに関しても同じで、取っ手付きカップ型などの解説はあるものの有効性についてはいまひとつ謎でした。

 

そんなわけで個人的にはこの本のチャートの解説はやや微妙に感じましたが、CAN-SLIM自体は代表的な成長株投資法なので読んで損はないのかなと思います。

 

コバルト27(KBLT.V)

コバルトそのものを大量に保有するほか、コンゴ以外のコバルト権益に投資している会社です。

コバルトはほぼすべてが銅やニッケルの副産物として生産されるため専業の会社がほとんどありません。また、コバルトの過半数がカントリーリスクの高いコンゴから産出されているという問題もあります。

コバルト27はコバルト専業でありながらカントリーリスクの比較的少ない銘柄になります。

 

コバルトの保有

2905.7トンのコバルトを保有しています。プレゼンテーション資料によると2018年10月31日の時価で285.6百万カナダドルとのことです。現在のコバルト27の時価総額は500百万カナダドルです。

※マウントマリオンの権益取得に伴いコバルト200MTを引き渡すことを1月9日に発表しています。

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YY(YY)3Q決算

中国のライブストリーミング大手です。ゲーム動画配信サイトのフヤ(HUYA)を子会社に持ちます。

3Qは売上高+33%の増収、営業利益-7.6%の減益でした。Non-GAAPの営業利益は+12.9%の増益です。

過去4四半期の希薄化EPS(特別損益があるのでNon-GAAP)を合計すると51.1RMB(7.16ドル)で、株価61.07ドルに対する実績PERは8.5倍です。

YahooFinanceのアナリスト予想を使った今期PERは8.6倍、来期PERは7.3倍です。

 

会社別に見るとYY本体の業績は売上高+13%の増益、営業利益-9%の減益でした。依然として売上は2桁伸びていますが営業利益は3Qまで横ばいです。

子会社フヤの業績は売上高+119%の増収、営業損失200万RMBでした。ただ、3Qまでの通期で見ると黒字転換しています。

バランスシートにはネットキャッシュ(現金+短期投資-有利子負債)が20.2億ドルあります。

 

現在のYYの時価総額は38.6億ドルです。PERはすでに一桁と低いのですが、現金や子会社フヤの価値(現在の時価総額37.7億ドルで17年決算の時点で48.3%を保有)を考えるとさらに割安になります。

YYの不安を挙げるなら成長性でしょうか。本体の業績は頭打ち感がありますし、フヤの成長率は非常に高いのですが、テンセントが議決権ベースで50.1%まで株式を買い増す権利(2020年3月8日~2021年3月8日の期間)を持つため、これが行使されると子会社から外れてしまいます。

一方で期待が持てそうなのは東南アジアで人気のライブストリーミングアプリのビゴライブ(BIGO LIVE)に投資しているところです。YYはビゴライブの筆頭株主で、さらに株式を50.1%まで買い増す権利を持ちます。

 

ライベント(LTHM)3Q決算

堅調な決算でした。

3Qの売上高は前年比で+19%(数量+17%増、価格+2%の貢献)の増収、EBITDAは+25%の増益、純利益は+18%の増益です。

2018年の調整EPSのガイダンスは0.89~0.91ドルで、株価は17.22ドルなので今期PERは19倍前後になります。

 

カンファレンスコールからのメモです。

・2018年のリチウム生産量は21Kt(LCE)になる見通し。2019年のキャパシティは22Kt、2025年に60Ktとの計画。

・2018年の水酸化リチウムの生産量は16Ktの見通し。キャパシティは2019年末に30Ktまで拡大する予定。

・2018年のリチウム需要は+17%の伸びで250Kt(LCE)程度。

・水酸化リチウムの需要は+27%の伸びで74Kt程度。正極材がNCA811や622に向かうことで水酸化リチウムの需要が増えている。

・2018年通年のリチウム価格は2017年に比べて+10%くらいの上昇になりそう。2019年は現在の価格よりもやや高くなると予想。

 ・中国のリチウム市場は夏のあいだ減速したが回復のサインがみられる。スローダウンは補助金政策の変更により在庫削減や高パフォーマンス素材への移行が起きたため。

・リチウム供給は増加したが、生産の遅れや生産量の未達があり、事前のアナウンスと実際の供給量を比べると半分以下のキャパシティの増加しか達成できていない。

 

中国のスポット価格の下落についてはギャラクシー・リソーシズと似たような見解です。また、過剰供給説に疑問をとなえる人の言うとおり供給の未達も起きているようです。来年の価格見通しが良かったのはポジティブサプライズでした。

11月に入ってリチウム株が大きく反発していますが、売られすぎの反発なのか潮目が変わったのか注目したいと思います。

 

マカオのカジノ株 その2

前回の記事でアメリカ系の3社を見たので今回は中国系の3社を見てみます。

 

0027 ギャラクシー・エンターテインメント

サンズ・マカオと首位を争う会社です。

主なカジノリゾートはマカオ半島地区のスターワールド(2006年)とコタイ地区のギャラクシー・マカオ(2011年)です。ギャラクシー・マカオは5つのホテルを含む宮殿のような巨大カジノリゾートです。

 

業績は下のグラフのとおりです。利益率は一桁の年もありますが、2017年は17%まで上がっています。

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マカオのカジノ株

香港に上場しているマカオのカジノ株を調べてみました。

今回はマカオのカジノ市場とアメリカ系の3社について書きます。

 

市場規模

マカオのカジノ市場は2009年~2014年まで順調に成長した後、政府の規制強化によって大きく落ち込みました。2016年中頃に底打ちした後は現在まで回復が続いています。

下のグラフはマカオ・ゲーミング規制当局が発表している月次の売上高です。

2018年は10月まで前年比+14.3%と堅調ですが、9月と10月は前年比+3%に減速しています。

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HPではゲームごとの売上も発表されているので、VIPバカラとそれ以外をグラフにしてみます。

VIPバカラは2011年までは売上の7割前後を占めていましたが、その後は徐々に低下しており2018年(1月~10月)は55%になっています。

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バイドゥ(BIDU)決算

中国の検索最大手のバイドゥが3Q決算を発表しました。

前年比で売上高は+27%の増収、営業利益は-6%の減益です。

過去4四半期のEPS(特別利益があるのでNon-GAAP)で計算した実績PERは19.5倍になります。YahooFinanceのアナリスト予想を使った今期PERは20.3倍、来期PERは17.6倍です。

 

バイドゥの四半期業績をグラフにすると下のようになります。売上は大きく伸びていますが、利益の伸びはいまいちです。

2016年後半から2017年初めにかけて業績が低迷しているのは不正医療広告の問題の影響で、今四半期に減益なのは動画サイトを運営する子会社のiQIYIの損失が大きくなっているためです。

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