香港に上場しているマカオのカジノ株を調べてみました。
今回はマカオのカジノ市場とアメリカ系の3社について書きます。
市場規模
マカオのカジノ市場は2009年~2014年まで順調に成長した後、政府の規制強化によって大きく落ち込みました。2016年中頃に底打ちした後は現在まで回復が続いています。
下のグラフはマカオ・ゲーミング規制当局が発表している月次の売上高です。
2018年は10月まで前年比+14.3%と堅調ですが、9月と10月は前年比+3%に減速しています。
HPではゲームごとの売上も発表されているので、VIPバカラとそれ以外をグラフにしてみます。
VIPバカラは2011年までは売上の7割前後を占めていましたが、その後は徐々に低下しており2018年(1月~10月)は55%になっています。
運営会社
カジノ運営ライセンスを持つのは6社です。
ギャラクシー・エンターテインメントとメルコ・インターナショナル・デベロップメントとSJMホールディングスの3社が中国系、サンズ・チャイナとウィン・マカオとMGMチャイナの3社がアメリカ系です。
各社はメルコを除いてマカオ半島地区とコタイ地区の両方にカジノを持っています(SJMのリスボア・パレスは建設中)。マカオ半島地区は旧市街などもある街中で、コタイ地区は超巨大リゾートが立ち並ぶ埋立地です。
各社の主要カジノは下のとおりです。
コード | 会社 | マカオ半島地区 | コタイ地区 |
---|---|---|---|
0027 | ギャラクシー | スターワールド | ギャラクシー・マカオ |
0200 | メルコ |
アルトリア シティ・オブ・ドリームス スタジオ・シティ |
|
0880 | SJM | グランド・リスボア | リスボア・パレス |
1128 | ウィン・マカオ | ウィン・マカオ | ウィン・パレス |
1928 | サンズ・チャイナ | サンズ・マカオ |
サンズ・コタイ プラザ・マカオ ベネチアン パリジャン |
2282 | MGMチャイナ | MGMマカオ | MGMコタイ |
なお、各社のカジノ運営権は2020年~2022年に満期を迎えますが、満期後の詳細は決まっていないそうです。各社ともに相当な金額を投資しているので更新はされると思いますがやや不安になる話です。
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1928 サンズ・チャイナ
ラスベガス・サンズの子会社です。親会社は統合型リゾートの大手であり、シンガポールのマリーナサンズ・ベイも運営しています。
サンズ・チャイナのカジノは、サンズ・マカオ(2004年)、ベネチアン(2007年)、プラザ・マカオ(2008年)、サンズ・コタイ(2012年)、パリジャン(2016年)の5つです。ベネチアンはコタイ地区開発の先駆けとなったカジノリゾートです。
ゲームテーブルはベネチアンとサンズ・コタイが多く、パリジャンがそれに続きます。サンズ・マカオはやや小型、プラザ・マカオはフォーシーズンズホテル内にあるラグジュアリーなカジノとのことです。
5つのカジノリゾートの位置は下のとおりです。サンズ・マカオのみ左上のマカオ半島地区にあります。コタイエリアの4カジノリゾートは互いに隣接しています。
売上高と純利益はグラフのとおりです。2014年まで右上がりに伸びた後、市場の低迷を受けて業績が落ち込みました。2017年は増収増益に転じています。
純利益率のピークは2014年の27%で、ここ3年は20%前後です。
カジノごとの売上高です。
2017年はベネチアン29億ドル、サンズ・コタイ19億ドル、パリジャン14億ドル、サンズ・マカオ6億ドル、プラザ・マカオ6億ドルでした。
2017年の調整EBITDAは、ベネチアン11億ドル、サンズ・コタイ6億ドル、パリジャン4億ドル、サンズ・マカオ1.7億ドル、プラザ・マカオ2.3億ドルです。
EBITDAマージンは、ベネチアン38%、サンズ・コタイ33%、パリジャン29%、サンズ・マカオ28%、プラザ・マカオ39%です。過去の数字も見ると20%後半~40%くらいが多いです。
バランスシートを見るとネット有利子負債は31億ドルありますが、2017年の営業利益が17億ドル、調整EBITDAが26億ドルなので問題ないレベルだと思います。
中間決算は売上高+17%の増収・純利益+44%の増益、3Q単体は売上高+13%の増収・純利益+13%の増益でした。
ベネチアン、サンズ・コタイは好調ですが、パリジャンの3Q単体は減収減益になっていおりオープン3年目としては伸びがいまいちに見えます。
株価は35.2HKドルで、実績PER22.6倍、実績の配当利回りは5.7%です。PERに割安感はあまりせんが、配当利回りは高めです。
サンズ・マカオは利益率も高くマカオを代表する優良カジノ株です。ただ、2016年にパリジャンがオープンしたばかりでそのパリジャンの売上がいまひとつ伸びていないので、いまは市場の成長率を超えて大幅に業績アップする時期ではないのかなと思います。
1128 ウィン・マカオ
ウィン・リゾーツの子会社です。
2006年にマカオ半島地区にウィン・マカオを、2016年にコタイ地区にウィン・パレスを開業しています。
2017年はウィン・パレスが本格的に寄与したことから大幅な増収増益でした。
ただし、開業2年目というのと利息費用が増えたことから純利益率は10%と低い水準にとどまっています。ピーク時には25%もあったので、運営が軌道に乗り有利子負債の返済も進めば利益率も上がってくるのではないかと思います。
2017年のカジノごとの業績は、ウィン・マカオが売上高193億HKドル・調整EBITDA50億HKドル、ウィン・パレスが売上高166億HKドル・調整EBITDA33億HKドルでした。調整EBITDAマージンはウィン・マカオが26%、ウィン・パレスが20%です。
なお、テーブル数はウィン・マカオが305台(VIP110台、マス・マーケット195台)・スロット933台・ポーカー11台、ウィン・パレスが310台(VIP112台、マス・マーケット198台)・スロット1,013台とのことです。
バランスシートを見るとネットの有利子負債は228億HKドルあります。2017年の営業利益は53億HKドル、調整EBITDAは84億HKドルです。
中間決算は売上高+20%の増収、純利益+91%の増益でした。
カジノ別に見るとウィン・パレスの売上高は100億HKドルとウィン・マカオの90億HKドルを越えています。調整EBITDAマージンはウィンパレスが26%、ウィンマカオが29%でした。
株価は19.16HKドルで、実績PERは27倍、実績の配当利回りは5%になります。上期のペースが続けば今期PERは14~15倍になりそうです。ほどほどの評価ですが、配当利回りが高めなのは良いと思います。
2282 MGMチャイナ
MGMリゾーツの子会社です。
2007年にマカオ半島地区にMGMマカオを、2018年にコタイ地区にMGMコタイを開業しました。
業績はおおむねマカオのカジノ市場に連動していますが、2016年と2017年は市場の成長率に後れを取っています。コタイ地区の開発に乗り遅れたのが響いていそうです。
利益率は過去数年20%前後でしたが2017年は15%まで落ちています。
バランスシートは有利子負債が急激に増加しています。ネットの有利子負債125億HKドルに対して営業利益26億HKドル、調整EBITDA45億HKドルです。
中間決算は売上高+25%の増収、純利益-44%の減益でした。
カジノ別に見るとMGMマカオが売上高69億HKドル・調整EBITDA20億HKドル、MGMコタイが売上高21億HKドル・調整EBITDA2億HKドルでした。
3Q単体は売上高+37%の増収・調整EBITDA+7%の増益でした。
なお、テーブル数はMGMマカオ342台・スロット1,063台、MGMコタイ185台・スロット1,147台とのことです。
MGMコタイはオープンに際しての割当がサンズ・チャイナやウィン・マカオより少なかったそうです。会社の売上の内訳を見るとカジノが9割以上を占めるのでテーブル数が少ないのはやや不安です。
株価は13.3HKドルで、実績PERは21.8倍、実績の配当利回りは1.6%です。
MGMマカオはアメリカ系3社のなかではいまいちな印象です。ただ、MGMコタイが成功すれば業績が倍増するので株価の値上がりも期待できるかもしれません。成功すればですが。