10か月移動平均線を使ったマーケットタイミング戦略を検証した A Quantitative Approach to Tactical Asset Allocation という論文を読みました。
非常にシンプルな戦略で、月足終値が10か月移動平均線を上回ったら買い、下回ったら売るというものです。これだけでボラティリティや最大ドローダウンが小さくなりリターンが向上するそうです。
検証しているのは、1901年~2012年のS&P500、1973年~2012年のアメリカ株・外国株・債券・REIT・コモディティとこれら5つの資産クラスのアセットアロケーション戦略、さらに対象資産を13に広げたアセットアロケーション戦略、モメンタムやレバレッジなどの組み合わせです。
シンプルな内容ですし、図表が多用されており読みやすいので興味のある方は一読をおすすめします。
以下はもう少し詳しいルールと、タイミング戦略とバイ&ホールドの比較チャートです。
条件
・月足終値が10か月移動平均線より上であれば買い、下であれば売る。
・月の最終日に売買(それ以外の株価は無視)。
・キャッシュ期間のリターンは90日Tビル。
・配当込み。税金、手数料、スリッページは含まない。バイ&ホールドと比較すると、実際の運用で税金は大きな問題になるとのこと。
・10か月移動平均線を使うのは、もっともよく使用されるのが200日移動平均線という理由です。GATT(下を参照)では3カ月、6カ月、9カ月、12カ月移動平均線も検証していますが、どれもシャープレシオを向上させています。
S&P500とマーケットタイミング(1901年から2012年)
タイミング戦略はバイ&ホールドを上回るリターンを低いボラティリティと小さい最大ドローダウンで達成しています。
比較チャートを見ると、大恐慌やITバブル崩壊やリーマンショックといった大幅下落の時期をうまく回避しています。
GTAA(1973年~2012年)
US株式、外国株式、債券、不動産、コモディティの5つの資産クラスにそれぞれ20%ずつ配分する戦略です。すべての資産クラスが10か月移動平均線より上にあればポジションは100%となります。
リターンもバイ&ホールドより上ですが、素晴らしいのはボラティリティと最大ドローダウンが1桁に落ち、年間マイナスも1回(-0.59%)しかないところです。
なお、この戦略の問題点については下の記事を書きました。