ALB アルベマール 2022年1Q決算

リチウム、臭素、触媒を生産する会社。

リチウムでは最大手の一角。チリのアタカマ塩湖、オーストラリアのグリーンブッシュ鉱山(持分49%)、同じくオーストラリアのウォジナ鉱山(持分60%)のかん水や鉱石からリチウム化合物を生産している。アタカマとグリーンブッシュはかん水と鉱石でベストの資産とされる。

臭素は難燃剤が主な用途。他にもエレクトロニクス、自動車、建設、アプライアンスなど幅広い産業に使用されるGDP比例のビジネス。アルベマールはこの業界のマーケットリーダーとのこと。コスト競争力のある死海とアーカンソー州で事業を行っている。

触媒はガソリンなどの精製やディーゼルや石油原料の汚染物質を取り除くのに使われる。この部門は新型コロナによる移動制限が逆風になっている。

 

1Qの業績は、前年比で売上高+36%の増収、調整EBITDA+88%の増益となった。

前年6月に売却したファインケミストリーサービスを除くと、売上高は+44%の増収、調整EBITDAは+107%の増益とのこと。

売上高 1,128Mドル(前年比+36%)

営業利益 311Mドル(前年比+100%)

調整EBITDA 432Mドル(前年比+88%)

調整希薄化EPS 2.38ドル。

 

四半期の売上高と調整EBITDAの推移が下のグラフになる。

新型コロナで落ち込んだ後は前年4Qまで回復が鈍かったが、1Qは売上高・調整EBITDA共に久々に大きく伸びた。

 

四半期のセグメント売上高の推移が下のグラフになる。

前年比では、リチウム+97%、臭素+28%、触媒-1%。

2020年1Qを底に回復が続いていたリチウムの伸びが加速している。臭素の業績も好調。

 

四半期のセグメント調整EBITDAの推移が下のグラフ。

前年比では、リチウム+190%、臭素+37%、触媒-33%。

リチウムは前年4Q比でも2倍以上の増益で、一気に業績が好転している。臭素も前年4Q比で+48%の増益と好調。

 

好調な決算と同時に通期のガイダンスも大幅に引き上げられた。

上方修正後のガイダンスは、売上高5.2~5.6Bドル(前年比+60~70%)、調整EBITDA1.7~2Bドル(前年比+100~140%)、調整希薄化EPS9.25~12.25ドル。

 

続いてセグメント別の業績を見ていく。

リチウムセグメントは前年比で売上高+97%、調整EBITDA+190%と大幅な増収増益だった。売上高の増加の内訳は、販売価格が+66%、販売量が+31%の寄与。

1Q時点では大きな拡張がなかったため(La Negraは2Qから売上を計上する)販売量の増加はやや意外だった。トーリングによる販売や、ウォジナ鉱山の再稼働に伴いスポジュメン精鉱の一回限りの販売があったそうだ。

 

2022年の調整EBITDAは、前年比+200~225%の増益というガイダンス。前回の+75%から大きく上方修正された。

 

リチウム販売量は、前回の見通しどおり前年比+20~30%の増加を見込む。

La NegraIII&IVが2Qから、KemertonⅠが下半期から売上を計上する予定。

ウォジナ鉱山の再稼働は順調に進んでおり、トレイン1が5月から、トレイン2が予定を前倒して7月からスポジュメン精鉱の出荷を開始する。キャパシティはそれぞれ年産250Ktで合計500Kt。70Ktの水酸化リチウムを生産することができる量となる。

ウォジナの再稼働が順調に進めば、トーリング販売などいくつかのアップサイドも考えられるそうだ。

 

リチウムの販売価格は前年比で約2倍とのガイダンス。前回の+40~45%から大幅に上方修正された。

ガイダンスは2Qに上昇した販売価格が通年で続くという想定にもとづく。現在の市場価格が続けば上方修正されるが、大きな値下がりがあれば下方修正されるとのこと。足元では中国のロックダウンの影響で価格がやや下がっているが、ガイダンスに影響を与えるにはもっと大幅な下落が必要になるそうだ。

なお、アルベマールはこれまで主力としていた長期・固定価格の契約を減らし、変動価格の契約を増やすことを表明している。

2022年はバッテリーグレード(売上高の70~80%程度を占める)の販売のうち20%がスポット価格、50%がインデックスに連動する天井と底のある変動価格、30%が固定価格の契約となるそうだ。

固定価格の契約も変動価格への移行を進めており、これが成功すればガイダンスをさらに上方修正できるとのこと。

 

La NegraⅢ&ⅣとKemertonⅠ&Ⅱの進捗は以下の通り。両者の完成によりキャパシティは年産175Ktに増加する。

・La NegraⅢとⅣ は計画通り2Qから売上高を計上する。

・KemertonⅠは試運転フェーズ。5月末には最初の製品を出荷する見込み。KemertonⅡはの完成は今年末になる。

 

Wave2に続きWave3の拡張も進行している。Wave3では当初は年産150Ktのキャパシティ追加を予定していたが、今回これが年産200Ktに上方修正された。

・Qinzhou のプラントの買収は今年下半期に完了する予定。年産25Ktのキャパシティ。

・Meishan の年産50Ktの水酸化リチウムプラントの建設が始まる。Zhangjiagang はエンジニアリングの段階。

・ネバダ州のシルバーピークの拡張は順調に進んでいる。炭酸リチウムの生産量を倍増させる計画。

・グリーンブッシュスの拡張も同時に進めている。この記事によると現在のキャパシティは年産1.27Mtのスポジュメン精鉱だが、既存プラントの増強と新規のプラントの建設により800Ktのキャパシティが加わる。新規プラントの稼働は2025年を目指しているそうだ。

 

Wave3の次のWave4ではさらに年産75~125Ktの生産能力が追加される計画となっている。

キングスマウンテンではプレフィージビリティスタディを開始。マグノリアの臭素工場では、かん水を活用してリチウムを抽出するDLE技術の評価を行っているそうだ。

 

臭素セグメントの業績は、前年比で売上高+28%(うち価格+25%、数量+3%の寄与)、調整EBITDA+37%の増益だった。リチウムほどではないが好調な業績を出している。

供給よりも速いペースで需要が増加しており、今後数年間は供給不足が続くと考えているそうだ。

2022年のEBITDAの見通しは前年比+15~20%の増益。前回のガイダンスの+5~15%から上方修正された。

 

触媒セグメントは、前年比で売上高-1%の減収、調整EBITDA-33%の減益だった。

販売価格は上昇したものの、原材料費の高騰と販売量の減少で減収となった。

2022 年の調整EBITDAは前年比で横ばいから-65%の減益となる見込み。前回の+5~15%から大幅に下方修正された。

 

好調な決算を受けて株価は急騰したが、株式市場の急落に巻き込まれて値を戻している。

現在は221ドルで時価総額26Bドル。時価総額は同業であるガンフォンの22Bドル、SQMの21Bドルを上回っている。

会社予想のEPSを使うと今期のPERは18~24倍。こちらはガンフォンやSQMより高い。販売量はそれほど大差ないので、価格戦略の違いが差になっているのかと思う。変動価格の契約を増やしているとはいえ、アルベマールはもともと長期・固定価格契約が主体の会社だった。ただ、価格に関しては中長期では契約の更新によって他社と差が無くなっていくと思う。

リチウム各社のPERは業績の改善によって程度な水準になってきた。今後の大幅なキャパシティの拡張を考えると割安にも思えるが、あくまでもリチウム価格の高値が維持されるのが前提となる。

今年は新規プロジェクトによる供給量の増加は限定的だが、来期以降は多くのプロジェクトが稼働する。需要の増加とどちらが早いかという話になりそう。