2021年9月末で介護付有料老人ホーム61施設、住宅型有料老人ホーム5施設を運営している会社。
介護付有料老人ホームとは、介護スタッフが常駐し、身の回りの世話や介助サービスが受けられる介護施設。開設には都道府県の認可を受ける必要がある。
介護事業が他業種からの参入障壁となる一方で、住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅よりも収益が見込みやすいそうだ。
決算説明会資料に他の介護業者とのポジショニング比較図があった。
チャームケアは介護付有料老人ホームのうち中~高価格帯をターゲットにしている。
会社の運営している施設は下の通り。
2021年6月末の居室数は、チャーム1,854室、スイート1,705室、プレミア461室、プレミアグラン68室となっている。
2020年6月期~2022年6月期の施設数・居室数の内訳。
近年は首都圏と高価格帯のホームを強化している。来年にはスイートがチャームの居室数を上回る見込み。
有料老人ホームの上位事業者も掲載されていた。チャームケアは8位。上位10社を合わせても市場シェアは1割以下と低い。
ちなみにこの記事によると2019年の有料老人ホームは15,134施設。そのうち介護付は4割程度とあるので、介護付有料老人ホームは6,000施設ほどという計算になる。
次に年間ベースの業績を見てみる。
売上高は右肩上がりに順調に伸びている。前年比の成長率は2桁を下回ったことがなく、過去数年でも平均すると年率20%くらい伸びている。
経常利益は2013~2015年に一時落ち込んだが、2016年からは右肩上がりの成長に戻った。直近の経常利益率は10%近くまで上がっている。
ホーム数と居室数の推移。
居室数の伸び率は2021年に前年比+7%まで低下したが、今期は+21%と大幅に増える見込み。来期も+16%、再来期も+17%と高い伸びが続く。
今期1Q決算は、会計基準変更の影響を除いた後で売上高+8.3%の増収、営業利益+8.2%の増益、経常利益-7.5%の減益だった。経常利益の減益は前年に新規開設補助金があったため。
通期の見通しに比べると数字は良くないが、会社によると売上高は予想通り、営業利益と経常利益は予想より上振れしたとのこと。
ただ、これまで高水準だった入居率が前年から落ちているのはやや不安点に思える。
今期の予想は、会計基準の変更の影響を除いた数字で売上高+32.7%の増収、経常利益+49.2%の増益。
中期経営計画では来期も売上高+33.3%、経常利益+120.7%という高成長を見込んでいる。
チャームケアの現在の時価総額は492億円。特別利益があるので税金30%で計算すると、今期PER24倍、来期PER11倍となる。高成長に比べると来期PERは非常に低い。
バリュエーションが低いのは新規に始めたヘルスケアデベロップメント事業の利益が大きくなるためだろう。
ヘルスケアデベロップメント事業は、チャームケアが物件を開発し、他社に売却し他社が運営するという事業。(自社開発→売却→自社運営の場合は売却益を特別利益に計上するそうだ)。
チャームケアの新規施設は運営面の制約から年間10ホーム前後が限界だが、紹介案件が多数あること、建設ノウハウもあることからこの事業を始めるとのこと。会社が開発リスクを負うことでオーナー自身が開発するよりも建設コストが安くなるという。
中期経営計画のセグメントの内訳を見ると、新型コロナと会計基準の変更の影響で2020年~2022年の介護事業は経常利益があまり伸びていない。
その代わりに成長を支えるのがヘルスケアデベロップメント事業で、今期の利益成長のほとんどがこの事業の貢献による。
ただ、ヘルスケアデベロップメントは不動産事業なだけに安定して利益を出せるのか疑問だと思う。来期PERが低いのはこの事業の利益があまり評価されていないためだろう。
介護事業だけで見ると、(経常利益率を10%、税金30%で計算すると)今期PERは28倍、来期PERは24倍くらいになる。規模が大きくなったことで成長率は落ちそうだが、過去の実績を考えれば妥当な評価なのかなと思う。