DIS ウォルト・ディズニー・カンパニー

ディズニーの時価総額は2,657憶ドル、ネットフリックスは2,667億ドル。

ディズニープラスの会員数は1.18億人で、ネットフリックスの2.13億人と比べて少ない。しかし、コンテンツの強さから考えるとネットフリックス並みに成長してもおかしくないと思う。するとディズニーの時価総額は低すぎるのではないか。そんなふうに感じたでディズニーについて少し調べてみた。

 

まずはディズニーの業績。

新型コロナのため直近の業績は低迷しているが、2021年(9月決算)は何とか黒字を確保した。

コロナ前を見ると2019年まで売上高は順調に伸びている。一方で利益は2015年あたりから横ばいで推移している。

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PLを見てみる。

セグメントは Disney Media and Entertainment Distribution と Disney Parks, Experiences and Products の2つ。

新型コロナの影響でパーク事業は厳しい。黒字は確保したものの、2019年のセグメント利益67億ドルから大幅に落ち込んでいる。

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Disney Media and Entertainment Distribution はさらに3つのセグメントに分けられている。

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Liner Networks はケーブルテレビ部門。売上高と利益は最も大きい。コロナ禍にあっても大幅な赤字にならなかったのはこの部門の貢献による。

ディズニーの傘下にはABC、FOX、ESPN、ナショナルジオグラフィックなどがある。ABCは三大ネットワークのひとつ、FOXはそれに加えて四大ネットワークと言われることもあるそうだ。

ESPNは全米最大のスポーツチャンネル。最も人気のあるチャンネルの一つで加入者数も多く料金も高い。下の記事ではESPNの収入をサブスク86億+広告23億ドル+ストリーミング5億ドルの114億ドルとしている。ストリーミングを除いた売上高はメディア部門の売上高248億ドルの4割程度になる計算。

How Disney's ESPN Makes Money From Sports Broadcasting | The Motley Fool

 

Direct-to-consumer は先行投資で赤字。

ディズニーは、ディズニープラス、ESPN+、Huluといったストリーミングサービスを運営している。会員数は以下のとおり。ディズニープラスとESPN+は前年比+60%以上伸びている。

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Content Sales/Licensing and Other は大幅な減収で利益も半減となった。パーク事業と同じくコロナ禍で映画部門は厳しい。

 

各事業の長期推移を見てみる。セグメントの変更があったためパーク事業を除いて2020年までの数字になる。

パーク事業は2019年まできれいに伸びている。2019年のセグメント営業利益は67億ドル。メディアネットワークスの75億ドルに迫る規模。

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スタジオエンターテインメントは凸凹があるものの2014年くらいから業績を伸ばしている。セグメント営業利益は25億~30億ドル規模。

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D2Cは2017年にセグメントに登場した。売上高は伸びているが先行投資で赤字。

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メディア事業の業績は比較的安定している。ただ、2015年~2019年のセグメント営業利益は横ばい~微減と苦戦している。2020年に伸びているのは20世紀スタジオ(FOXチャンネルを持つ)の買収効果。

ケーブルテレビはコードカッティングによる逆風が吹いている。ディズニーはESPN+もあるがARPUは4.74ドルとケーブルテレビに比べて大幅に低い。一方でスポーツコンテンツの獲得コストは高騰している。

ディズニーの株価がいまひとつパッとしないのは、最大のセグメントであるメディア事業の見通しが悪いことが原因のようだ。

解決策としてはESPNのスピンオフが噂されている。スピンオフによりディズニーはストリーミング企業としての評価が高まるし(ESPN+はあるがスポーツをストリーミング配信するのは複雑な話とのこと)、ESPNは潜在力のあるスポーツベッティングに本腰を入れることが可能になるそうだ。

Report: Disney is Considering Spinning-Off ESPN | Cord Cutters News

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4部門の2010年~2020年のセグメント営業利益の推移。

メディア部門がやや停滞している一方で、パークとスタジオが大きく伸びていることが分かる。

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ディズニーの業績ピークは2018年で調整EPSは7.08ドルだった。これを基準にすると現在の株価146ドルのPERは20倍弱になる。これにディズニープラスやHuluの評価が乗ると考えれば割安感はあるのではないかと思う。

ただ、パークやスタジオが復活したとしても、依然として緩やかな衰退が続くケーブルテレビの比率が高いのは続く。ケーブルテレビの比率が高い以上はストリーミングの会社として評価しにくいだろうし、そうなると株価もなかなか上がりにくいのかなと思う。