ALB アルベマール 2021年2Q決算

リチウム、臭素、触媒を生産する会社。

リチウムでは最大手の一角。チリのアタカマ湖とオーストラリアのグリーンブッシュ鉱山(持分49%)を持つ。両者は資源量と品位の点でかん水と鉱石でベストの資産とされる。その他にもオーストラリアのウォジナ鉱山を持つ(持分60%、休鉱中)。

臭素は難燃剤が主な用途。他にもエレクトロニクス、自動車、建設、アプライアンスなど幅広い産業に使用される。GDP比例のビジネス。

触媒はガソリンなどの精製やディーゼルや石油原料の汚染物質を取り除くのに使われる。新型コロナによる移動制限が逆風になっている。

 

2Qの売上高と調整EBITDAは前年比でわずかなプラスだった。ファイン・ケミストリー・サービスを売却したため営業利益は大幅なプラスとなっている。

ファイン・ケミストリー・サービスを除くと売上高は+5%、調整EBITDAは+13%とのこと。

売上高 773Mドル(前年比+1%)

営業利益 542Mドル(前年比+383%)

調整EBITDA 194Mドル(前年比+5%)

調整EPS 0.89ドル

 

決算と同時に2021年の通期ガイダンスを上方修正した。

売上高は3.2-3.3Bドル→3.3-3.4Bドル、調整EBITDAは775-815Mドル→810-860Mドル。調整希薄化EPSは3.6-4ドルとなる。

 

四半期の売上高と調整EBITDAの推移。新型コロナで落ち込んだ後の回復は鈍い。

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続いてセグメントごとの業績を見てみる。

リチウムセグメントは前年比で売上高+13%増収、調整EBITDA+16%の増益だった。数量が+17%、価格が-4%の貢献。

2021年の調整EBITDAは+10~15%の増益となる予想。前回の1桁台後半という見通しより改善している。

今年の販売量は10%台半ばの増加、平均販売価格は下半期にかけて上昇するものの通期では前年比横にとどまる。

リチウムの市場価格は昨年後半を底に大きく上昇しているが、アルベマールは長期契約が多いため影響も限定的となっている。なお、現在の契約価格は過去の契約価格と比べると同程度かやや上とのこと。

販売契約については、これまでの長期・固定価格に加えてよりマーケット価格に連動した契約を導入していくそうだ。どれくらいの数量かはまだ不明だが、いまのところたぶん1/3程度になるのではという話。

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La NegraⅢ&Ⅳ は建設が完了して試運転段階に入った。商業生産は来年の前半からで2024年までに炭酸リチウムを年間40Kt生産する。2022年末のランレートは30Kt。

Kemerton はステージ1が予定通り今年末に完了する。ステージ2は3か月の遅れが出ている。こちらも2024年にフル生産となる。

休校中の Wodgina については生産再開のアナウンスがない。現時点でスポジュメンを販売する計画はないそうだ。

その他、アルベマールには臭素を生産しているマグノリアで直接リチウムを抽出するプロジェクトもある。かん水から天日干しを経ずに直接リチウムを取り出すのはDLEとして最近注目を集めている。ただ、DLEと一口に言っても対象とする資源によって技術や課題が異なるそうだ。アルベマールの場合は臭素工場で副生される残渣のかん水からリチウムを抽出する。すでに臭素の設備が稼働していることが有利な点だが、水と電気をより大量に使うためコストと持続性の問題があるとのこと。このプロジェクトは技術的な問題を解決したとしても生産が期待できるのはWave4になるそうだ。

 

臭素セグメントは前年比で売上高+20%増収、調整EBITDA+27%の増益だった。

今年は調整EBITDAが1桁台半ばの成長という見通しで、前回の1桁台後半からやや悪化した。大雪の影響により塩素不足から生産が抑制される。

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触媒セグメントは前年比で売上高-25%の減収、調整EBITDA-7%の減益。

今年の調整EBITDAは-30~40%の減益になる見通し。

このセグメントはパンデミックで大きな悪影響を受けている。以前の販売数量に戻るのは2022年後半~2023年になるとのこと。

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アルベマールの足元の業績はいまいちだが、会社は2022年に向けて3つの事業すべての売上高とEBITDAが増加すると予想している。

特にリチウムは来年以降に数量と価格の両面から大きく業績が伸びることが期待できそう。

 

株価は7月から1段高になっており上場来高値を更新した。2020年3月の底値から見ると4倍の値上がりになる。

一方でPERは今期予想60倍前後と非常に高い。2019年のピークEPSを使っても37倍になる。

過去の業績を見ると、需要が戻れば臭素と触媒は500Mドル程度の純利益を出せそう。リチウムは2018年の428Mドルがピーク。2020年の全社費用は333Mドル。合計すると595Mドルになるが、時価総額26.5Bドルと比較するとやはり割高感がある。

この高バリュエーションを正当化できるかはリチウムセグメントの利益がどれくらい伸びるかによりそう。

リチウムのネームプレートキャパシティは2018年に65Kt、2019年と2020年に85Ktだった。これが2022年に175Ktに拡大する(ただしKemerton50Ktの持ち分は60%。またフル生産は2024年)。

仮にリチウムセグメントの純利益を2倍にして計算するとPERは26倍になる。無茶苦茶な数字ではないが2024年の増益まで織り込んで26倍というのはやはり高いと思う。

あとはリチウムの販売価格が2018年よりも高くなるか、休鉱中のウォジナを活かし短期間で販売数量をアップさせるくらいが上振れ要因かと思う。