中国ADR(ATHM、KC、MOMO、WB) 2020年3Q決算

オートホーム、キングソフトクラウド、モモ、ウェイボーの3Q決算。

記事中のPER、PSRはすべてYahooFinanceのアナリスト予想の数字をもとに計算した。

 

・ATHM オートホーム

中国最大の自動車情報サイトを運営する会社。

3Qは前年比で売上高+7%、営業利益+16%だった。

セグメント別の売上高前年比は、メディアサービス0%、リード・ジェネレーション・サービス+1%、オンライン・マーケットプレイス&その他+31%。

 

各セグメントの事業内容は(合っているか分からないが)こんな感じのようだ。

・Media Services・・・自動車情報サイトのデータを利用した広告サービス・ソリューションを企業向けに提供。顧客は100社前後でトップ5が25%程度を占める。

・Leads generation services・・・ディーラーへのサブスクリプションサービスや広告サービスなど。

・Online marketplace and others・・・新車取引プラットフォーム(在庫を持たないフィーモデル)。中古車取引プラットフォーム(C2B2Cモデル)。自動車ローンや保険。データプロダクト(内容がいまいち分からなかったが最も伸びている)。

年次のセグメント売上高と営業利益をグラフにするとこんな感じになる。

f:id:sapa21:20210112093151p:plain

※2017年にオンラインマーケットプレイス・その他が大きく減っているのは直接販売から撤退したため。

 

株価は3年ほど横ばいのレンジで推移していたが、ここ数か月は堅調に上げている。

今期PERは21倍という適度な水準。

中国の自動車市場の回復によって恩恵を受けそうと注目したのだが、事業内容がいまいち分かりにくかった。

 

・KC キングソフトクラウド

中国でクラウドサービスを提供する会社。キングソフトからスピンオフ上場した。

マーケットシェアはアリババ、テンセント、ファーウェイ、バイドゥらに後れを取るものの独立系では最大とのこと。

3Qの売上高は前年比で+73%だった。営業利益は赤字が続く。

キングソフトクラウドのプラス材料は、強みを持つ動画セクターの成長率が高いこと、独立系のためマルチクラウドで恩恵があるかもしれないといったところ。

一方でマイナス材料は上位顧客への依存率が高いこと。最大の顧客とみなされているバイトダンスが自社クラウドを開始するというニュースがあった。

決算後の株価は好調。今期PSRは6.1倍。急成長のクラウド銘柄としては割安に思えるが、業界中堅で顧客リスクもあるのを不安視されているのかもしれない。

 

・MOMO モモ

ライブストリーミングとマッチングアプリの大手。

3Qは前年比で売上高-15%の減収、営業利益-47%の減益と厳しい決算だった。特に2Q比でも減収減益なのがきついと思う。

会社別に見るとモモが売上高-27%の減収、営業利益-46%の減益と業績悪化が加速している。

一方でタンタンは売上高+135%と大幅増収になった。ライブストリーミングの開始が貢献した。営業赤字は-229M人民元が-121M人民元に縮小している。

f:id:sapa21:20201228093618p:plain

 

有料ユーザー数(トータル)は前年比-2%の減少、うちタンタンは前年比-9%の減少。有料ユーザー数は前年比ではマイナスだが2Q比では増加している。とはいえ全体として横ばいといった感じ。

f:id:sapa21:20201228091436p:plain

 

4Qのガイダンスは売上高の中央値で前年比-21%の減収になる。

株価はここ1年で1/3近くまで暴落した。今期PERは7.1倍と非常に低いものの業績の悪化が続きそうなのが怖い。タンタンの急成長が頼みの綱だが、全体に占める比率はまだ2割程度にすぎない。

 

・WB ウェイボー

中国版ツイッター。全世界のSNSのユーザー数ランキングで10位に入る規模を持つ。

3Qは前年比で売上高0%、営業利益-7%だった。

売上高は新型コロナウィルスの影響から回復したものの、時系列で見ると2019年ごろから頭打ちになっている。

f:id:sapa21:20210112092005p:plain

 

営業利益もじり貧。営業利益率は30%超と高収益。

f:id:sapa21:20210112092109p:plain

 

月間アクティブユーザー数は2020年1Qをピークに減少に転じた。新型コロナ特需が剝げることで2Qが落ちるのは仕方ないが、3Qも連続して落ちたのは厳しい。この会社は業績が停滞する中でもユーザー数を伸ばしていたのが慰めだったのだが、ユーザー数も減少に転じるとなると期待できる点がなくなってしまう。

f:id:sapa21:20210112092251p:plain

 

株価は業績に合わせて低迷している。今期PERは19倍弱と割高感はない。中国屈指のSNSとしては評価が低いように思えるが、いまのところ低評価を覆せる要素がなさそう。