イラストマンガ制作ソフトのクリップスタジオと主に車載向けのUI開発ソリューションを提供している会社。
3Q累計は前年比で売上高+15%の増収、経常利益+132%の増益だった。
3Q単体だと売上高+10%の増収、経常利益+824%の増益となる。
業績好調で通期の予想を大幅に上方修正した。
セグメント別の業績の推移を見ると、クリエイターサポート事業の絶好調が続く。前年比で売上高+39%の増収、セグメント利益+117%の増益となった。
一方でUI/UX事業は自動車業界の落ち込みが向かい風となっている。売上高は前年比で-39%の減収。セグメントの赤字は3Q累計で6億円を超え、のれん償却費を差し引いても赤字。
なお、3Qにカンデラ社ののれんを減損したことでバランスシート上ののれんはゼロとなった。
セグメントの業績を見てわかるようにこの会社の強さはクリップスタジオに尽きる。
クリップスタジオはエントリーユーザーからプロのクリエイターまで幅広く利用されており、プロのなかではディフェクトスタンダードとのこと。
累計出荷本数は10月に900万本を突破した。会社の資料によると伸び率も加速している。
日本のソフトウェアにしては珍しく海外利用者が60%を占めているのも大きな特徴。2025年にはこの比率を80%まで高めると言っている。
中期経営計画では2021年以降のクリエイターサポート事業の売上の内訳が開示されている。
これまで電子書籍ソリューションやクリップスタジオのサブスクリプションの比率が不明だったので(実績値ではないが)内訳を示してくれたのはありがたい。
ただ、最も期待のかかるクリップスタジオのサブスクリプション比率はまだ低いようだ。
中期経営計画では2025年に営業利益8倍という夢のある数字も出している。
ただ、クリエイターサポート事業の来期の営業利益は今年に比べて余り伸びていないように見える(今期は3Qまでで営業利益12億円出ている)。巣ごもり特需があったのかもしれない。この計画を前提とするなら来期のグループの業績はのれん償却費の減少による増益になりそう。
バランスシートは健全。現金の23億円は総負債の15億円を上回っている。
アートスパークの株価は8月以降に大きく値上がりした。現在の時価総額は180億円。
今期のクリエイターサポート事業は13億円ほどのセグメント利益が出そうなので、UI/UX事業の赤字を無視したPERは20倍程度になりそう。
クリエイターサポート事業の好業績やSaas関連銘柄として考えると割安に思えるが、株価高騰前と比べると将来成長への期待が大きくなり安全域は少なくなったと思う。