感染症の流行と株価

2003年のSARS、2009年の新型インフルエンザ、2014年のエボラ流行時の株価の動きを振り返ってみる。

 

■SARSと株価

SARSは2003年に主に中国・香港で流行した。

WHOによると2003年7月に制圧宣言が出されるまでの感染者は8,096名・死者は774名となっている。アメリカでの感染者は27名・死者0名、日本での感染者は0名。

感染者数と死者から単純に計算すると致死率は9.6%だが、数字は国や年齢によって大きな差があり、またSARSの発症率が不明なことから正確な致死率を計算するのは難しいとのことだ。

 

wikipedia によるとSARS流行の経緯は以下のようになる。

・2002年11月に中華人民共和国広東省で最初の症例が報告される。

・2003年2月にアメリカのビジネスマンが中国からシンガポールへ向かう飛行機の中で発症。着陸したハノイの病院で死亡。さらに治療にあたった医師や看護師にも感染。世界に大きく報道される。

・3月12日、WHOが世界規模の警報を出す。

・7月5日、WHOがSARSの封じ込め成功を発表。

 

SARSの感染者数・死者数(JOMF)と香港ハンセン指数・アメリカS&P500・日経平均株価(いずれも2002年11月1日を起点)の推移をグラフにしてみる。グレーのシャドーはWHOがアラートを出してから封じ込め成功が発表されるまでの期間。

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2003年はITバブル崩壊の下落相場が終了した年となる。3月に底打ちしたアメリカS&P500はSARSに関係なくほぼ一直線に上げているように見える。

一方でハンセン指数の下落は5月まで続きアメリカに後れを取っている。SARSの流行と繋げたくなるが、日経平均株価も低迷していることからSARSの影響がどれくらいあったのかは分かりにくい。

 

■2009年新型インフルエンザと株価

WHOがパンデミックを宣言した2009年春から2010年3月にかけて流行した新型インフルエンザ。流行初期の段階でメキシコの死亡率が高いことから注目されたが、後に普通のインフルエンザ並みの死亡率でしかなかったことが判明する。

wikipedia によると、全世界の死亡者数は9,933人、米国2,370人、日本78人となっている。

 

WHOのアラートは以下のとおり。

・2009年4月27日、WHOが警戒水準をフェーズ3からフェーズ4に引き上げる。

・4月29日、WHOがフェーズ5への引き上げを決定。

・6月12日、WHOが世界的流行病(パンデミック)であることを宣言。警戒水準をフェーズ6に引き上げる。

・2010年8月10日、WHOがフェーズ6からポスト・パンデミックへの引き下げを決定。世界的な大流行の終結を宣言。

なお、グーグルトレンドで「新型インフルエンザ」と「flu」を調べるとこんな感じとなった。

・新型インフルエンザ。5月13日~17日がピーク。

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・flu(地域でアメリカ合衆国のみを対象)。4月26日~5月2日がピーク。

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新型インフルエンザの感染者数・死者数(wikipedia)とS&P500と日経平均株価(どちらも2009年3月1日を起点)の推移をグラフにした。グレーのシャドーはフェーズ6に引き上げられた6月12日以降の期間。

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検索がピークをつけたのは4月末から5月だが日米株価に大きな動きは見られない。強いて言えば日経平均はやや弱い気はする。

パンデミック宣言後には日米の株価が停滞しているが、この頃には致死率が低いことが明らかになってきていた。

 

■2014年のエボラ流行とアメリカの株価

ギニアなどの西アフリカで感染が広がった致死率の高い感染症。

wikipedia によると、2015年10月18日までに感染疑い例も含め28,512名が感染し、11,313名が死亡している。

アメリカでの感染者は4人で1人が死亡、日本での感染はなかった。

 

いくつかのサイトから経緯を拾うとこんな感じのようだ。

・2014年3月21日、ギニアがWHOに対しエボラ出血熱のアウトブレイク発生を報告。

・6月23日、国境なき医師団が「制御できない状況だ」との声明を発表。

・8月8日、WHOが「国際的に懸念される公衆の保健上の緊急事態」を宣言。

・9月30日、米国で感染症患者が確認される。

・10月12日、WHOがセネガルてのエボラ出血熱感染の終息を発表。

・10月20日、ナイジェリアでのエボラ出血熱感染の終息を発表。

・2015年1月28日、WHOはエボラ出血熱が流行を終息させる段階に入ったと報告した。

なお、グーグルトレンドで「ebola」を調べた結果が下のグラフとなる。8月3日~9日が一度目のピーク、10月12日~18日が2度目のピークとなっている。

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エボラの感染者数・死者数(アメリカ疾病予防管理センター)とS&P500をグラフにした。グレーのシャドーはWHOが「国際的に懸念される公衆の保健上の緊急事態」を宣言してから「流行を収束させる段階に入った」と報告するまでの期間。

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全体的に見ると株価は右上がりだがエボラが流行していた時期のボラティリティが大きい。また2度の検索のピークと株価の落ち込みはかなり一致しているように見える。

 

■感想

感染症は流行している期間が長いため、実際のところ株価にどれくらいの影響を与えているのか分かりにくい。

個人的な印象としては、全体の方向性を変えるほどの力はなくとも多少の影響はあるのかなという感じを受けた。アメリカや日本が流行の舞台になった場合は投資家心理にかなり悪影響が出るのではないかと思う。

ただ、少し長い目で見れば封じ込めが失敗しないかぎり株価は戻していくと思う。