リチウム株への投資 ④リチウムの需給 その2

今回は今後何年かのリチウムの需給について考えてみる。

下の表は各社のHPや決算資料から拾った2019年~2022年のリチウム化合物の生産キャパシティの数字。前回の記事でも書いたようにリチウムの生産計画は当てにならないのであくまでも参考程度となる。大手以外の中国の生産設備も考慮していない(中国の生産設備の計画は Lithium's price paradox に一覧表がある)。

またキャパシティと生産量は必ずしも一致しない。たとえばオロコブレのキャパシティは17.5Ktだが実際の生産量はここ何年も10Kt台前半にとどまっている。

あと生産設備の拡張が完了してもすぐに生産が増えるわけでもない。アルベマールの La Negra は2021年の1Qに拡張が完了する予定だが、品質確認のプロセス(4~6か月)を経た後に徐々に生産量が増えていく。会社によると2021年には大きな販売増加は期待できないとのこと。

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2018年には以下の生産設備が追加された。

・SQM 22Kt 拡張完了。戦略的な在庫積み増し。

・ガンフォン Xinyu 20Kt 稼働率9割超。

・ガンフォン Nindu 17.5Kt 稼働率9割超。

・ティエンチ Kwinana(ステージ1) 24Kt 2018年末に工事完了。6か月の試運転期間。

 

 2019年は2施設の拡張が計画がされている。

・アルベマール Xinyu 20Kt 年末までにフル稼働というアナウンス。

・ティエンチ Kwinana(ステージ2) 24Kt  年末に工事が完了する予定。

 

2020年はガンフォン、ティエンチ、ライベントに加えて新たにリチウムアメリカズが生産を開始する計画。

・ガンフォン Xinyu 25Kt

・ティエンチ Anju 20Kt

・リチウムアメリカズ/ガンフォン 25Kt

・ライベント 9Kt

 

2021年はアルベマールとSQMの大幅な拡張がある。

・アルベマール LaNegra 40Kt

・アルベマール Kemerton 50Kt

・SQM 50Kt

 

2020年は順調にいけばティエンチのKwinanaステージ1(24Kt)とアルベマールのXinyu(20Kt)の稼働率が高まる。また在庫を積み増しているSQMの供給量も増えてきそう。2019年末に工事完了予定のティエンチのKwinanaステージ2(24Kt)の貢献があるかは不明。

需要の増加量は市場の成長率が前年比20%であれば70Kt程度となる。

これらの数字からすると大手以外に大幅な供給増加がなければ需給は現状程度もしくはやや引き締まるのではないかと思う。

 

2021年は順調にいけばティエンチのKwinanaステージ2(24Kt)の稼働率が高まる。これにプラスしてティエンチのAnju(20Kt)、ガンフォンのXinyu(25Kt)、リチウムアメリカズ(25Kt)、ライベント(9Kt)が2年目を迎える。ただし、リチウムアメリカズやライベントは前年下半期に生産開始の予定なのでどこまで稼働するかは怪しい。特にリチウムアメリカズは新規の生産となるのであまり期待できないと思う。

2021年中にはアルベマールとSQMの両社を合わせて140Ktものキャパシティ拡張の計画があるが、1年目ということもあり数量的な増加はあまりないと思う。

この年も需給が崩れるほどの大幅な供給増加はないのではと思う。

 

2022年になるとアルベマールとSQMの拡張が終わるため単純に数字を足し上げれば供給過剰になってしまう。ただし、これらは少し先の話で不確実性が高い。

 

需要面についてはヨーロッパの動向が注目される。

2020年以降はヨーロッパで各社からEVのモデルが発売される。現在のEV市場ではテスラのモデル3を除くと中国勢の独壇場となっているが、来年以降は先進国で本格的に普及が始まるかが試されることになる。

 

・ヨーロッパで販売されるEVのモデル数

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Electric vehicle sales to surge across Europe, with 2020 seen as new tipping point