リチウム株への投資 ②リチウムは需要のストーリー

アルベマールの資料によると2018年のリチウム需要は270kt(LCE)となっている。この需要が2025年に1,000ktにまで増えると予想している。

※LCEは Lithium Carbonate Equivalent。リチウム化合物には炭酸リチウム、水酸化リチウムなどいろいろあるが、最も需要の大きい炭酸リチウムに換算した値が標準的に使われている。

f:id:sapa21:20190811132325p:plain

しかしこの予想の前提となっているEVの市場シェアは2025年時点で15%に過ぎない。仮にシェアが30%、50%と増えればそれに沿ってさらに需要も増えていくだろう。EVが一般に普及した場合にはリチウム需要は現在の10倍以上になってもおかしくない。この需要増加がリチウム銘柄への投資の前提となる。

 

ただし単に需要が増加するだけではインパクトがやや薄い。リチウム自体は自然界に豊富に存在するため時間をかければ需要に見合う量を供給できるためだ。

たとえば(稼働中の)世界最大のリチウム資源はアタカマ湖だが、アルベマールとSQMの現在のアタカマからの生産キャパシティは年間100Ktを超えており2021年には両社の更なる拡張によって年間200Ktにも達する(あくまでも計画だが)。

アタカマ湖以外にも生産中・開発中のリチウム資源はたくさんあり、増産のタイミングによっては現在起きているような供給過剰の状態になってしまう。

したがって単に需要の増加だけでなくどれくらいの速さで需要が拡大するかというスピードも重要になると思う。

リチウムは資源開発から実際に化合物を生産するまでには数年以上の時間がかかる。よってリチウムの需要が予想を超えて急速に増加した場合は供給が間に合わなくなる。これがリチウム価格を上昇させ、生産量の拡大と合わせて大幅な投資リターンを生むのではないかと期待している。

 

それでは供給が追い付かなくなるような需要増加はいつ来るのか。

個人的にはEVがガソリン車のコストを下回ったとき、ガソリン車を買うよりEVを買う方が得だと誰もが思ったときに来るのではないかと思っている。

EVとガソリン車のコストを比較した記事はたびたび見かける。たとえばブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンスは電池価格の下落により2022年にEVがガソリン車のコストを逆転すると予想している。この予想時期は年々早まっているそうだ。

ただ実際問題としてそんなに差が縮まっているのかという気はする。

現時点でEV市場をけん引しているのはテスラのモデル3だが平均購入価格は5万ドルとかなり高い。しかもこの価格で売ってもテスラは赤字を出している。テスラは今年に入って35,000ドルというスタンダードレンジの発売も開始したが、現状ではその価格で売って利益が出せる車ではなさそうだ。

モデル3は自動運転などの付加価値が大きいので比較としては適当でないかもしれないが、いずれにせよガソリン車と比較してお買い得感を感じるようなEVが出ないと一般に普及するのは難しいのではないだろうか。

そんなわけで個人的にはここしばらくは供給の増加をはるかに上回るようなリチウムの爆発的な需要は起こらないのではないかと思っている。