ロバートシラー教授によるCAPEレシオについてのレポート。2017年10月発行。
将来の株価リターン(1か月~10年)に対するCAPEレシオの説明力、他の方法で作成したCAPEレシオ、CAPEレシオのいろいろな使い方といった点について書いてある。
・将来の株価リターン(1か月~10年)に対するCAPEレシオの説明力
以下の指標とCAPEレシオを比較をしている。
E/P(PER)
NIPA/P(National Income and Product Account で報告されるアメリカ企業の利益を使ったPER。シーゲルが提唱した。)
D/P(配当利回り)
B/P(PBR)
CF/P(PCFR)
S/P(PSR)
CAPEレシオは他の指標よりも一貫しており優れているとの結論。
ただし、CAPEレシオがダントツに優れているわけではなさそう。9年10年という期間を見るとCAPEレシオとNIPA/PやE/PのR2は変わらないしT値はCAPEレシオの方が下回っている。
またR2だけに注目するとCF/PがCAPEレシオをコンスタントに上回っている。しかしサンプルサイズが少ない(CF/Pは1978年3Qから)ことからT値は低い。
他の指標と比べるとCAPEレシオは1年~10年という期間で安定してR2とT値が高いということ。
・他の方法を使ったCAPRレシオ
EPS、営業利益、NIPAの企業利益を使ったCAPEレシオを検討している。
説明力はNIPAが最も高く、現在のCAPEレシオの過去平均からの乖離率はNIPAが最も低い。
ただし、NIPAや営業利益のデータはEPSよりも短いためEPSのデータを継ぎ貼っている。この方法は疑問なので実際のデータがある1940年以降でEPSとNIPAを比較すると両者の差はほとんどなくなるとのこと。説明力はEPSの方がわずかに高くなる。
・CAPEレシオのいろいろな使い方
債券利回りとの比較、国別のローテーションに触れているが検証はない。
セクター戦略(2002年~)や個別株戦略(2007年~)については検証結果が掲載されているが、戦略にはモメンタムも入っているしPERなど他のバリュエーション指標との比較はない。
CAPEレシオが他の指標に比べて優れているという内容だが、現在の割高かつ株価が上がり続けている状態についての解説はあまりない。著者はCAPEレシオはマーケットタイミングツールではないという。でもそれならCAPEレシオの存在価値はあまりないのではと思う。
ただ、トータルリターンCAPEレシオというのは良かった。
これは自社株買いが株主還元の主流になっていることを踏まえて計算方法を調整したCAPEレシオ。自社株買いはEPSの成長率を高めるため10年間のEPSを使って計算すると配当で還元した場合と比べてCAPEレシオの数字が高くなってしまう。
従来のCAPEレシオの過去平均値が16.74だったのに対してトータルリターンCAPEの平均値は20.14となるそうだ。