アメリカの4大航空会社

バフェットが積極的に買っている理由が気になったので少し調べてみました。

 

大手4社による寡占化

かつては過当競争に苦しんでいたアメリカの航空会社ですが、度重なる統廃合によって大手は4社に集約されています。これによって各社は適切な利益を出せるようになりました。

 

データはこちらの記事が詳しいです。

Investing in North American Airlines – Why did Berkshire Hathaway buy airlines anyway?

・大手4社でアメリカ国内線の旅客数・機体数の80%のシェアを持つ。

・座席利用率は大きく改善した。

・2010年以降は各社ともにマージンを確保している(ただし、この時期には原油価格の下落もあった)。

 

下のグラフは Macrotrends というサイトで取得できた大手4社の営業利益率の推移です。近年はどの会社も赤字になることはほとんどなく10%を超える営業利益率も珍しくないといった状況です。

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割安なPERと積極的な株主還元

アメリカ株が全体的に割高な中で航空会社のPERは非常に低いです。今期PERは最も高く評価されているサウスウエスト航空でも11倍弱で、デルタ航空やユナイテッド・コンチネンタルは7~8倍台、アメリカン航空に至っては5倍台という低評価です。

また、各社は配当利回りこそ低いものの積極的な自社株買いによって株主に利益を還元しています。

下の表は Morningstar から取得したPER、配当利回り、自社株買い利回りの数字です(いずれも Forward)。配当と自社株買いを合計した総合利回り、総合利回りの過去3年の年間平均も載せています。

会社 株価 PER 配当 自社株買い 総合 過去3年
アメリカン航空 34.1 5.5 1.2% 5.5% 6.6% 13.4%
デルタ航空 57.7 8.6 2.4% 4.0% 6.5% 7.4%
サウスウエスト航空 53.3 11.1 1.2% 6.8% 8.0% 6.2%
ユナイテッド・コンチネンタル 84.9 7.2 0.0% 5.5% 5.5% 9.0%

過去3年の総合利回りを見ると、大量の自社株買いをおこなったアメリカン航空とユナイテッド・コンチネンタルの数字がすごいことになっています。

今期の予想利回りは過去3年よりも低下する見通しですが、株主の方を向いた経営を行っているのは評価ポイントだと思います。

 

なお、アメリカン航空のPERが他社に比べて低いのは有利子負債が大きいためです。

同じく Morningstar のサイトから取ったネットの有利子負債(有利子負債-現金同等物)、営業利益、営業キャッシュフロー、フリーキャッシュフローが下表です。

会社 時価総額 有利子負債 営業利益 営業CF フリーCF
アメリカン 15.3 18.5 3.5 3.5 -0.2
デルタ 39.2 8.0 5.3 7.0 1.9
サウスウエスト 29.4 -0.3 3.2 4.9 3.0
ユナイテッド・コンチネンタル 22.6 9.5 3.8 6.2 2.0

(単位:10億ドル)

アメリカン航空のネットの有利子負債はデルタ航空やユナイテッド・コンチネンタルの2倍前後もありますし、フリーキャッシュフローもマイナスです。

ただし、アメリカン航空は過去数年に渡り大きな設備投資を行ったことで他社よりも機体が若いです。また、今後は設備投資額の減少によるフリーキャッシュフローの増加も見込まれています。

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原油価格

航空会社のコストに占める燃料費はかなり大きいです。このサイトを見ると世界の航空会社のコストに占める燃料費は20~30%くらいあります。大手4社の営業利益率を原油価格と比べてもそれなりに連動があるように見えます。

現在の原油価格は2014年~2015年にかけて大きく下げた後でやや戻しているという状況ですが、原油価格が以前のような水準に上がった場合は利益率が大きく下がるかもしれません。

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世界経済のネタ帳

 

デルタの1Qは好調な様子

4月2日にデルタ航空が好調な1Q見通しを出して株価が急騰しました。

デルタ航空が上昇 1-3月期の暫定決算を公表し予想以上に上方修正=米国株個別

 

感想

必要不可欠なサービス、大手による寡占化、経営指標の好転、割安なバリュエーション、株主重視の資本政策あたりはバフェットの好みそうな要素だと思いました。

一方で、景気や原油価格の変動に脆そうな印象は残ります。ここ数年は景気が良いのに原油価格はそれほど上がらないという理想的な状況でしたが、これが崩れたときに業績がどうなるのかという不安はあると思います。