江西ガン鋒リ業(ガンフォンリチウム)

上海A株(2460)と香港H株(1772)に重複上場している中国のリチウム大手です。上流のリチウム抽出から下流のバッテリー生産やリサイクルまでを手掛けています。

 

事業

川上から川下までの垂直統合の会社ですが、売上の比率を見るとリチウム化合物・金属がほとんどでバッテリーやリサイクルはわずかです。

f:id:sapa21:20190110203247p:plain

リチウム化合物・金属の生産ですが、原材料は自社権益とサードパーティーから購入しています。少額出資のピルバラミネラルズや出資のないアルチュラマイニングともオフテイク契約を結んでいることから、必ずしも自社権益からの調達にこだわっていないようです。川上の権益にも投資するリチウム化合物の生産会社という感じです。

2017年はマウントマリオンが稼働したことで自社権益からの購入が35.3kt LCEに急増しています。サードパーティーからの購入は13.4kt LCEです。

f:id:sapa21:20181013195133p:plain

 

リチウム資源開発

ガンフォンが保有・投資するリチウム資産は6つです。

このうち重要度が高いのは、生産中のマウントマリオンやとピルガングーラ、開発中のカウチャリ-オラロスでしょう。

f:id:sapa21:20181013194518p:plain

・マウントマリオン

オーストラリアにある鉱山です。ミネラルリソーシズやネオメタルズとのJVでガンフォンは43.5%の権益を持ちます(先日13.8%を持つネオメタルズがガンフォンとミネラルリソーシズに持分を売却することを発表しました)。

スポジュメン精鉱の年間生産量は400kt(4%Li2Oと6%Li2Oが半々)で炭酸リチウム換算で50ktです。ネオメタルズの資料によると2018年4Qに施設のアップグレードが完了し、すべての生産物が6%Li2Oになるそうです。

ガンフォンは生産量の100%を購入していますが、2020年以降は他の株主が51%まで購入する権利を持ちます。

 

・ピルガングーラ

ピルバラミネラルズが生産を開始したオーストラリアの鉱山です。ガンフォンはピルバラの株式の4.3%を持ちます。また、今年の1月3日に50百万ドルの追加出資を発表しています。

スポジュメン精鉱の年間生産量はステージ1が300-350kt(≒43kt LCE)、ステージ2が500-550kt(≒110kt LCE)の計画です。

ガンフォンはステージ1の生産量の160kt、ステージ2の生産量の75Kt+75Kt(オプション)を購入するオフテイク契約を交わしています。

なお、IPO資料にスポジュメン精鉱のコストカーブが掲載されていますが、ピルガングーラは下から3番目、マウントマリオンも平均以下の生産コストです。

f:id:sapa21:20190115094501p:plain

・カウチャリ-オラロス

アルゼンチンにある塩湖です。もともとはリチウムアメリカズとSQMのJVでしたが、SQMが持分をガンフォンに売却しました。ガンフォンは37.5%の権益を保有するほか、リチウムアメリカズの16.92%を持つ筆頭株主です。

カウチャリ-オラロスは精測・概測資源量11.7mtでトップクラスの規模です。生産開始は2020年でステージ1の年間生産量は25kt LCEの予定です。

 

・その他の資産・投資

Ningdu Heyuan は小規模、Mariana の資源量も小さめ、Avalonia は開発の初期段階です。

 

・ピルガングーラ(アルチュラマイニング)

直接出資はしていませんが、オーストラリアのピルガングーラを開発するアルチュラマイニングともオフテイク契約を交わしています。

供給開始は2018年で、2019年~2021年に年間最低70ktのスポジュメン精鉱を購入する契約です。最大10年までの期間延長と数量増加のオプション付きです。

 

リチウム化合物の生産・販売

IPO資料によると、2017年のリチウム化合物の生産はキャパシティベースで世界3位です。

f:id:sapa21:20190114182228p:plain

炭酸リチウムはシェア10%で4位です。

f:id:sapa21:20190115091116p:plain

水酸化リチウムはシェア11%で3位です。

f:id:sapa21:20190128115416p:plain

金属リチウムはシェア47%で1位です。

f:id:sapa21:20190115091453p:plain

2017年の年間生産キャパシティは炭酸リチウム18.5kt、水酸化リチウム8kt、金属リチウム1.5ktでした。

2018年には炭酸リチウム17.5ktと水酸化リチウム20ktの拡張が完了し、これにより2018年末の年間生産キャパシティは75kt LCEになるそうです。

f:id:sapa21:20190128120624p:plain

 

リチウム化合物・金属の販売数量と販売価格はこちらです。

f:id:sapa21:20181013193736p:plain

主力製品の炭酸リチウムの販売価格は2015年の1トン43,000RMB(6,450ドル)から2017年には122,000RMB(18,300ドル)まで上昇しています。2018年1Qの販売価格は136,276RMB(20,441ドル)でした。ただ、足元の中国のスポット価格は11,000ドル前後まで落ちているので、1Qの販売価格は相当な高値です。

販売数量は2016年が4,897トン、2017年が13,637トン、18年1Qが2,296トン(前年同期1,264トン)です。

 

リチウム市場

リチウムの供給量は、2017年から2022年にかけて年率22%で増加して645kt LCEになるという予想です。かん水に比べて鉱石からの供給が大きく拡大する見通しです。

f:id:sapa21:20190115091723p:plain

炭酸リチウムのキャパシティは2017年から2022年にかけて年率20%の成長率で574ktになるという予想です。

f:id:sapa21:20190128122944p:plain

水酸化リチウムのキャパシティは2017年から2022年にかけて年率26%の成長率で227ktになるという予想です。

f:id:sapa21:20190128122838p:plain

供給国のシェアを見ると2017年はオーストラリア37%、チリ34%、アルゼンチン13%という順ですが、2022年にはオーストラリアが46%を占め、中国が18%で続くという予想です。

オーストラリアのシェアが拡大するのは、水酸化リチウムの生産で競争力のある鉱石資源が豊富で、かつ先進国であるため開発の安全性が高いという理由でしょう。

中国はチベットと青海地方に豊富なかん水資源を擁するものの、チリやアルゼンチンに比べると質が低く、加えてインフラと労働力の弱さから2022年でも最も高コストにとどまるとの話です。

f:id:sapa21:20190115093304p:plain

業界の参入障壁については以下のような点を挙げています。

・技術とノウハウと経験

・顧客との関係や製品の品質保証

・競争力のあるコストでの材料の入手

・素材の抽出から化合物の生産までの統合

・経験のある人材の獲得

・投資資金

・開発期間の長さ

f:id:sapa21:20190114182818p:plain

上流のリチウム資源開発は投資額の大きさと、開発開始から生産までに数年もの時間が必要になることが大きな障壁です。

リチウム化合物については、オープン市場で売買される商品ではなく、顧客の要望に合わせて品質を満たす製品を生産するため技術や信頼関係が必要になります。また、新たな施設稼働には18か月の建設期間と6か月の試験運用と増産期間が必要になるそうです。

 

 業績

過去3年はすごい成長率です。売上は3倍以上、純利益は10倍近くまで増えています。

2018年1Qも+67%の大幅増収でした。純利益はその他の収入(主に金融資産やデリバティブの評価益)が減ったことから減益ですが、粗利益は2倍以上の増益で調整EBITDAも+82%の伸びです。

f:id:sapa21:20181013201900p:plain

製品別の売上高を見ると、18年1Qはバッテリー関連73.7%、化学11.4%、製薬9.1%でした。

国内と海外の売上比率は、国内76.6%・海外23.4%となっています。現状では国内比率が高いのですが、2018年にはLG化学やテスラと契約を交わしているため今後は海外比率が高まっていくかもしれません。

LG化学には2019年~2022年にかけて92.6ktの炭酸リチウム・水酸化リチウムを、テスラには2018年~2020年に生産の20%の水酸化リチウムを供給するそうです。

Ganfeng Lithium signs new contracts with LG Chem, Tesla | Metal Bulletin.com

 

3Q決算はこちらです。 

9か月の業績は、売上高+26%増収の35.93億RMB、営業利益+12%増益の12.67億RMB、純利益+10%増益の11.06億RMBでした。希薄化EPSは1RMBです。

3Q単体の業績だと、売上高+4%増収、営業利益-32%減益です。

 

バランスシート

18年3Q時点のバランスシートを見ると、ネットの有利子負債は営業利益の1年分以内なので財務面は特に問題ないと思います。

現預金 11.14億RMB

短期投資 0.14億RMB

売却可能な金融資産 5.85億RMB

短期借入 5.74億RMB

長期借入 6.74億RMB

長期社債 7.01億RMB

 

バリュエーション

3Qの希薄化EPSの1RMBを年率換算して香港ドルにすると1.55香港ドルになります。現在の株価は13香港ドルなので予想PERは8.4倍です。

PERがかなり低いのですが、AH格差が大きいことと(A株の株価は22.7RMB)、中国のリチウム価格が足元で大幅に下落しているのが不安視されているのかなと思います。

 

感想

リチウム化合物の生産をメインにしている会社なので、川上の資源開発に比べると投資資金の負担が少なく売上が出るまでの時間が短いです。一方で、原材料をサードパーティーから購入した場合、コスト競争力は垂直統合の会社に劣ります。

ガンフォンにとって良いシナリオは、オーストラリアの鉱石の供給増加により原材料の価格が下がる一方で、精製プラントの不足から炭酸リチウムや水酸化リチウムの価格が高止まりすることでしょう。

また、現状では中国の価格よりも海外の価格が高いため、輸出を増やすことで利益率の改善が見込めるかもしれません。

中期的に見るとアルベマール、ティエンチ、SQMらはオーストラリアで垂直統合による水酸化リチウムの生産を目指しているため、ガンフォンのモデルはコスト競争力で不利になるかもしれません。

現在のバリュエーションは割安感があると思いますが、1Qの販売価格が相当高いだけにリチウム価格の下落による業績悪化が心配です。3Q程度の減益ですめばいいのですが、つい最近オロコブレが炭酸リチウム価格を下方修正していることもありやや不安なところです。

 

19年4月追記

2018年の決算が出ています。

売上高+17%の増収、純利益-41%の減益でした。

業績が悪化したのはリチウム価格の下落が原因でしょう。中国のスポット価格はピークから大幅に下がっています(国際価格はそこまで下げていませんが)。

EPSは1.07人民元で、現在の株価が14香港ドルなので、実績PERは11倍弱になります。

f:id:sapa21:20190414171205p:plain

生産量や生産能力は下表です。

2018年の生産量は炭酸リチウム16.3kt(前年18.2kt)、水酸化リチウム14.7kt(前年6.9kt)、リチウムメタル1.5kt(前年1.3kt)でした。水酸化リチウムが大幅に増加しています。

2018年に Xinyu の水酸化リチウム20ktと Nindu の炭酸リチウム17.5ktが稼働したことで、生産能力は炭酸リチウム40.5kt、水酸化リチウム31ktまで増えています。

2020年に Xinyu の水酸化リチウム25ktが稼働予定とのことです。

f:id:sapa21:20190414172033p:plain

リチウム資源への投資ですが、ネオメタルズの持分半分を買い取ることでマウントマリオンの持分を50%に増やしました。また、カウチャリ-オラロスへ追加出資することで持分を50%に高めることを発表しています。

 

その他のビッグニュースとしては、フォルクスワーゲングループにリチウムを供給する長期契約を結んだことを発表しました。

Volkswagen Group secures lithium supplies

なお、ガンフォンはすでにテスラ、LG化学、BMWともリチウムを供給する契約を結んでいます。