ライベント(LTHM)

元FMCのリチウム部門です。2018年10月にスピンオフで上場しました。

リチウム化合物の生産はリチウム・コーポレーション・オブ・アメリカ時代から60年以上も、オンブレ・ムエルト湖からのリチウム生産はFMC時代から20年以上も続けているという老舗です。

現在の生産量はSQMやアルベマールに遅れを取っていますが、かつては2社と並ぶビッグ3の一角とされていました。

なお、SQMやアルベマールはリチウム以外のセグメントが半分前後を占めるため、アメリカ上場で実績のある(すでに生産している)純粋リチウム会社はライベントだけです。

 

業績

FMC時代のリチウムセグメントの業績は下のとおりです。リチウム価格が大きく上昇したこともあり、大幅な増収と利益率の向上を見せています。f:id:sapa21:20190104125826p:plain

ライベントの18年3Q決算(9か月累計)は売上高+38%の増収・純利益+89%の増益でした。営業利益率は前年同期の30%から36%にまで上がっています。

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2018年の調整EPSのガイダンスは0.89~0.91ドルです。現在の株価は14ドルなので今期PERは16倍前後になります。

 

リチウム市場の現状と先行き

IPO資料に解説があるのでグラフを引用します。

2017年のリチウム市場に占めるバッテリー向け用途は48%とのことです。また、製品別では炭酸リチウムが50%を占めています。

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リチウムの需要ですが、2017年の212kMT(炭酸リチウム換算)から2027年には878kMTまで急増するとの予想です。

このうちライベントがベースリチウムと呼ぶ炭酸リチウムや塩化リチウムよりも、水酸化リチウムなどのパフォーマンスリチウムの方が成長が大きい見込みです。

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パフォーマンスリチウムの中で需要の急増が見込まれるのがバッテリーグレードの水酸化リチウムです。2027年にかけて年率35%の伸び率で45%のマーケットシェアを占めるという予想です。

水酸化リチウムが伸びるのはニッケル比率の高い正極材(エネルギー密度が高いため航続距離を長くできる)に使われるためです。

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一方で現在シェア半分を占める炭酸リチウムの伸びは年率13%にとどまる見通しです。ただし、炭酸リチウムは依然として2027年時点で4割以上を占めています。

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ライベントの生産製品

ライベントはアルゼンチンのオンブレ・ムエルト湖から炭酸リチウムや塩化リチウムを生産しています。2017年の生産量は炭酸リチウム15kMTと塩化リチウム3kMTです。

この炭酸リチウムや塩化リチウムの大部分はライベントがパフォーマンスリチウムと呼ぶ高付加価値のリチウム化合物を生産するのに使われます。

下のグラフは2017年の製品別の売上高ですが、水酸化リチウムが全体の45%を占めているのに対して、ベースリチウムの水酸化リチウムと塩化リチウムは12%に過ぎません。

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ライベントは今後も高付加価値のパフォーマンスリチウムの生産を増加させていく戦略です。

2017年の水酸化リチウムのキャパシティは18.5kMTですが、2019年に30kMT、2025年に55kMTに拡大する計画を発表しています。

また、水酸化リチウムの材料になる炭酸リチウムの生産量も2025年に60kMTまで拡張する計画です。

 

会社の生産拠点は地図のとおりです。

炭酸リチウムと塩化リチウムはアルゼンチン、水酸化リチウムはアメリカと中国、ブチルリチウムはアメリカ・中国・イギリス・インド、金属リチウムはアメリカで生産しています。

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生産コスト

IPO資料によるとライベントの炭酸リチウムの生産コストは世界最低となっています。

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同資料によると、水酸化リチウムの生産コストも最低とのことです。

 

ただし、水酸化リチウムは鉱石から直接生産できる(炭酸リチウムを経ない)ため、かん水系のコストアドバンテージは少ないとされます。

下のグラフはRoskillの資料に掲載されているかん水と鉱石のコストの比較です。炭酸リチウム(左)はチリのロイヤルティ引き上げ後もかん水の方が低コストですが、水酸化リチウム(右)は両者の差がほとんどありません。

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過剰供給懸念に対して

EVの普及に伴ってリチウム需要は大幅に増える予想ですが、それを上回るキャパシティの増加が各社からアナウンスされています。この過剰供給懸念についてライベントは以下のようなコメントをしています。

・過去を振り返るとアナウンスされたキャパシティや生産量と実際に実現した生産量にはギャップがある。2011年~2016年の期間ではキャパシティの増加は350kMTという予想だったが、実際に実現した生産量の増加は110kMTだった。

・リチウム化合物は顧客の要望によって作られ、顧客の求める品質を満たす必要がある。ノウハウが必要。また、品質検査は普通は操業開始後にだいたい12か月かかる。

・新規プロジェクトの中には現在稼働しているどの施設よりも大きい目標キャパシティを挙げているところがある。

・Roskill によると歴史的にキャパシティの稼働率が75%を超えることは珍しいとのこと。

 

バランスシート

スピンオフしたてのこともあってきれいなバランスシートです。キャッシュ14.7百万ドルに対して有利子負債はゼロです。

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今後の投資計画ですが、会社は次の5年で拡張とメンテナンスに10億ドルを投資するそうです。このうち炭酸リチウムのキャパシティ拡大(2025年に60kMT)に525~600百万ドル、水酸化リチウムのキャパシティ拡大(2025年に55kMT)に80~170百万ドルです。

なお、2019年の資本的支出は250百万ドルとのことです。

 

感想

ピュアプレイヤー、品質の高い(バッテリーグレード)リチウム化合物を生産、実績十分、生産コストが低く収益性が高い、拡張計画もある、バリュエーションはほどほどということで、リチウムへの投資を考えるのであれば良い会社ではないでしょうか。短期間で大化けする銘柄ではありませんが信頼性は高いと思います。株価がどうなるかはリチウム市場次第でしょうが。