バフェット本を2冊読んだ感想

「ウォーレン・バフェットはこうして最初の1億ドルを稼いだ」と「バフェットの重要投資案件20」を読みました。

ウォーレン・バフェットはこうして最初の1億ドルを稼いだ――若き日のバフェットに学ぶ最強の投資哲学

ウォーレン・バフェットはこうして最初の1億ドルを稼いだ――若き日のバフェットに学ぶ最強の投資哲学

  • 作者: グレン・アーノルド,岩本正明
  • 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
  • 発売日: 2018/03/15
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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バフェットの重要投資案件20 1957-2014 (ウィザードブックシリーズ)

バフェットの重要投資案件20 1957-2014 (ウィザードブックシリーズ)

 

 2冊はどちらもバフェットが投資した会社のケーススタディです。

「ウォーレン・バフェットはこうして最初の1億ドルを稼いだ」はバフェットのキャリア初期の案件(1979年まで)を、「バフェットの重要投資案件20」は最近の投資先であるIBMまでを取り上げています。

両者の構成は似ていますが、前者がところどころでバフェットの資産の推移やその当時の状況なども書いているのに対して、後者はケーススタディそのものをより詳しく解説している印象でした。財務諸表やPERなどの数字が掲載されているケースも多かったです。

 

バフェットの資産の増え方

「ウォーレン・バフェットはこうして最初の1億ドルを稼いだ」からバフェットの資産についての記述がある部分を抜き出してみます。

数十年も前の話になるので消費者物価指数で調整した実質の金額と、それを1ドル110円で円換算した金額も載せておきます。

年齢 資産額(千ドル) 実質額(千ドル) 円換算(100万円)
1949年 19-20 10 101 11
1951年 21-22 16 149 16
1952年 22-23 20 185 20
1956年 26-27 150 1,352 149
1962年 32-33 450 3,646 401
1964年 34-35 1,800 14,216 1,564
1969年 39-40 26,000 173,748 19,112
1978年 48-49 100,000 375,738 41,331

※1951年はガイコに対する投資10,282ドルが純資産の65%という記述から逆算しました。

※1956年は資料によって14万~17万4千ドルと差があるそうです。ここでは切りのいい15万ドルにしています。 

※1969年は運用資産1億4千ドルでパートナーシップ解散時にバフェットが1/4を所有との記述から2,600万ドルにしています(バフェットは1962年にパートナーシップを統合したときに個人資産のほぼすべてをパートナーシップに投資したそうです)。このサイトでも39歳時に25百万ドルになっています。

※1978年に会社をバークシャーに統合したときに1億ドル以上の資産とのことです。

 

パートナーシップ以前

1949年~56年です。バフェットが「賢明なる投資家」を読み、コロンビアビジネススクールで学び、グレアムの会社で働いた後に自分のパートナーシップを立ち上げるまでの期間になります。

インフレを調整した実質の円換算では、20歳の時点で1,100万円の資金を持っており、パートナーシップを始める26歳の時点には約1億5千万まで増えています。本格的にキャリアをスタートさせる前に多くの個人投資家の目標である1億円を越えているのを見ると地力の違いを感じます。

この時期の投資案件としてはガイコ、クリーブランド・ワーステッド・ミルズ、ロックウッド・アンド・カンパニーが取り上げられているものの解説は少ないです。

 

パートナーシップ時代

1957年~68年です。

「ウォーレン・バフェットはこうして最初の1億ドルを稼いだ」にパートナーシップの成績が掲載されており、手数料控除前で年率31.7%、控除後で25.3%のリターンとなっています。同期間のダウ平均の年率9.1%を大幅に上回っています。

また、この期間でダウは3回マイナスの年がありましたが、パートナーシップがマイナスになった年は一度もなく、最低でも10.4%(手数料控除前)のリターンを出しています。

バフェットの資産は1956年の15万ドル前後から1969年には2,600万ドル前後まで増加しています。インフレを調整した実質値の日本円換算で191億円です。

仮にパートナーシップ開始時の15万ドルを年率31.7%で運用した場合は1968年末に406万ドルです。バフェットはパートナーシップから受け取った手数料を再投資することで資産の増加を加速させたということでしょう。

 

バークシャー統合まで

1969年にパートナーシップを解散して1978年に複数の資産をバークシャー・ハサウェイに統合するまでの期間です。このとき資産は1億ドル(実質の日本円換算で413億円)以上になっていたとのことです。

ところで1970年代はアメリカ株が本格的な調整に入った時期に当たります。S&P500はリセッションによる下落を挟みつつ70年代後半まで横ばいで推移していますが、インフレが激しかったため実質株価で見ると大幅な下落です。

バフェットは69年にパートナーシップを解散してバークシャーその他の企業運営に移行しますが、これはタイミング的に抜群だったと思います。保険などのフロートも活用しつつ優良企業を買収し、買収した企業のキャッシュとキャッシュフローで更なる買収を行うというスタイルは、株価が低迷する時代にぴったり合っていたのではないでしょうか。

 

優良株への投資事例

2冊の本にはバフェットの代名詞である優良株投資の成功事例がいくつも書かれています。

ただし、投資先企業の(バフェット投資前後の)業績がすべて書かれているわけではないので、バフェットのすごさがいまひとつ伝わってこなかったケースも多かったです。

 

 アメリカン・エキスプレス

サラダオイルの不正事件のさなかに購入しています。購入前の過去10年の売上高・純利益の成長率は10%弱で、PERは16倍(フロートの利益を加えると11.5倍)、EV/EBITは11倍程度だったそうです。投資後の2~3年で株価は大幅に上がりバフェットは大半の株を売っています。

数字だけ見ると投資時のPERに割安感はありませんし、投資後の業績が書かれていないためバフェットがどれだけすごいのか分かりにくかったです。

 

シーズ・キャンディ(非上場)

PER11.9倍、EV/EBIT6.3倍での買収です。投資後の10年間は売上15%・純利益19%で伸びています(72年と82年の業績比較から換算)。

非上場のため投資前の業績が書かれていないのが残念ですが、利益率を向上させた話や価格決定力を使った話が出てくるので投資後に成長を加速させたのかなと思います。

 

ワシントン・ポスト

投資前の10年間の成長率は売上・純利益ともに年10%程度です。バフェットはPER10.9倍・EV/EBIT5.3倍くらいで投資したそうです。

このケースは投資後の業績も書かれており、1974年から1985年にかけて正味利益は7倍に増えて(年率換算すると20%超になります)、また発行済み株式数の40%の自社株買いを行ったことで1株利益は10倍になったそうです。

この会社へは少数株主としての投資でしたが、経営者のキャサリン・グラハムと友情を築くことで自身も取締役に就任して経営に影響力を持っています。経営効率の改善や株主還元を強く求めたそうです。

 

ネブラスカ・ファニチャー・マート(非上場)

PER8.5倍、EV/EBIT4.3倍、PBR0.8倍で買っています。業績の伸びは書かれていませんが、新規店舗をしていないので成長率は低かったのではないでしょうか。

着実に利益を出す会社を買って、そこからのキャッシュフローで新たな買収を行うというタイプの投資だと思います。

 

バッファロー・イブニング・ニュース(非上場)

EV/EBIT19倍という非常に高い価格で買収をおこなったそうです。さらにこの後のライバル紙との総力戦により損失が大きく膨らんだとのことですが、いったんライバル紙を廃刊に追い込んで独占的な地位を築いた後は大幅に業績を改善させています。投資後の2~3年で利益は10倍以上に増えたそうです。

このケースは完全に定性的な投資のようです。著者は、バフェットは新聞事業の仕組みをよく知っていたことで投資を成功させたと評価しています。

 

コカ・コーラ

投資前の10年間の成長率は売上・利益ともに10%弱です。バフェットはPER16.5倍(非連結の会社の価値を差し引くと13.5倍)、EV/EBIT10.1倍くらいで投資しています。

投資後の業績数字が書かれていないのでこの本を読むだけではバフェットのすごさがわかりにくいのですが、こちらのサイトによるとその後10年にわたって14~18%の純利益成長率を記録しています。利益成長が加速するタイミングをうまくとらえています。

 

ウェルズ・ファーゴ

1990年に銀行危機の最中にPER5倍程度で投資したとのことです。市場が落ち込んだ時に優良企業を買うという言葉通りの投資です。

 

バフェットの投資法について

 

初期の資産株への投資

サンボーン・マップス、デンプスター・ミル、バークシャー・ハサウェイなど、キャリア初期にはグレアムの流れを汲んだ資産株への投資を行っています。

ただし、バフェットの場合は単に株を買って待つのではなく、自ら積極的に経営に関与しています。たとえばサンボーン・マップスは保有有価証券の含み益に着目したケースですが、株を買い増し支配権を握った後に保有資産を株主に分配しました。確かに資産株への投資では、いつ上がるかわからない株を黙って持ち続けるよりも、経営権を握って資産を分配してしまうのが手っ取り早いです。普通はなかなか実践できませんが。

バフェットはその後のデンプスター・ミルへの投資(この案件は棚卸資産が多い資産株への投資)で会社の立て直しに苦労した経験から、この種のアクティビスト的な投資を避けるようになったそうです。

 

経営への関与

「バフェットの重要投資案件20」に書かれているケースを見ると、半分以上が子会社化の事例で、さらに優先株・転換社債やアービトラージを除くと純粋に少数株主として影響力を持たずに投資しているのはアメリカン・エキスプレス、コカ・コーラ、ウェルス・ファーゴ、IBMくらいです。バフェットは経営への影響力を保持しているケースが多いと思います。

経営陣に対しては、企業規模を拡大させるよりも経営効率を高めることを求めるようです。シーズ・キャンディはしばらくすると店舗の拡大をストップしていますし、ネブラスカ・ファニチャー・マートは(wikipediaによると2001年まで)新しい店舗を作っていませんし、ワシントン・ポストでは買収や新規事業よりも株主還元を主張したことで拡大志向の古参幹部たちはフラストレーションを感じたという記述があります。

バフェットからすると、投資した会社が成長しなくとも生み出した利益を新たな買収に使うことでバークシャーを成長させれば良いのでしょう。

 

集中投資

ざっと抜き出しても、サンボーン・マップスに資産の35%、デンプスター・ミルに21%、アメリカン・エキスプレスに3分の1、バークシャー・ハサウェイに25%超と多くの銘柄に相当の割合の金額をつぎ込んでいます。

 

レバレッジ

バフェットはレバレッジに慎重な発言をしていますが、銀行借り入れを使って投資しているケースも何個か書かれています。

また、有利子負債ではありませんが保険などのフロート(一時滞留金)を利用して投資していることは有名です。ここで引用されている調査によるとバークシャーは平均すると1:1.6のレバレッジを使ってきたとのことです。

パートナーシップ時代も他人の資産を預かっていますし、キャリア全体を通してレバレッジを存分に活用して資産を増やしています。 

 

優先株や転換社債

「バフェットの重要投資案件20」にはソロモン、USエア、ミッドランド・エナジーのケースが書かれていました。リーマンショック時のGEやゴールドマン・サックスへの投資も記憶に新しいです。

この種の投資が可能なのは低利率のフロートを活用しているためだと思います。レバレッジがあるので無理に高いリターンを目指さなくても、確実性があれば年10%に満たない利回りでも割に合うということでしょう。

 

安全域

デンプスター・ミルズ、バークシャー・ハサウェイ、ソロモン、USエア、IBMなど思うようにうまくいかなかったケースも多く書かれています。

それでも自分で経営を立て直したり、優先株や転換社債を使っていたため配当でカバーできたりと、なんだかんだで利益を確保しているケースがほとんどです。

 

感想

バフェットの投資法は、銘柄選択だけではなく経営への関与や完全買収やレバレッジなどの要素も一体で考えるべきだと思いました。

例えばバフェットは転換社債や優先株も含めて成長率が高くない銘柄に投資することも多いのですが、これも資本コストの低いフロートでレバレッジをかけていることや、完全買収も含めて投資先企業のキャッシュやキャッシュフローをコントロールできるといった点を考慮する必要があると思います。

レバレッジがあるので無理に高リターンを狙う必要がありませんし、成長に関しては買収先のキャッシュとキャッシュフローを使った新たな買収で作り出せるというわけです。 

ただ、これは普通の投資家には使えない戦略です。レバレッジなしで年20%のリターンが欲しいという個人投資家は、たとえ競争優位があっても成長力のない会社に長期投資することは難しいと思います。結局は成長率が高い会社に投資するか割安株の回転売買に落ち着いてしまうのではないでしょうか。

 

また、バフェットは株価の動きを気にしないと言いますが、これもバークシャーの場合株価が下がれば安値で買い増し究極的には丸ごと買収できる資金力があるからだと思います。いったん買収してしまえばその会社のキャッシュやキャッシュフローを自由に使って新たな投資を行うことができます。

一方で個人投資家の場合は、株価が低迷したときは配当を頼りに株価が上がるまで待ち続けることしかできません。

バフェットの言っていることはバフェット自身については真実なのでしょうが、普通の個人投資家にそのまま適用できる話ではないのではと思いました。