鉱石系のリチウム銘柄

鉱石系のリチウム銘柄についてのメモです。数が多いのでまずは鉱石系の特徴と生産を開始している会社について書きます。

 

鉱石系の特徴

一般的には、鉱石からのリチウム生産は初期投資が小さく、生産までの時間が短い一方で生産コストが高いとされます。

ただ、水酸化リチウムに関しては必ずしも鉱石系の生産コストが高くなるわけではないという話もあります(リチウム素材としては炭酸リチウムや水酸化リチウムが一般的です)。これはかん水から水酸化リチウムを生産するには炭酸リチウムを経る必要があるのに対して、鉱石からは直接水酸化リチウムが生産できるという理由のようです。

下は鉱石系のネマスカリチウムのプレゼン資料に掲載されていたグラフですが、会社は水酸化リチウムを最低コストで生産できると主張しています。※現時点で実際に生産ができているわけではありません。

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次に生産までの難易度ですが、ここ数年で稼働したプロジェクトに限ると、かん水系のオロコブレが生産を拡大させるのに苦しんでいるのに対して鉱石系のギャラクシーリソースズやネオメタルズは順調に設備を稼働させています。

ギャラクシーリソースズは資源量で最小クラスのプロジェクトであるにもかかわらず、炭酸リチウム換算で20Kt以上の生産量を実現させる勢いです(オロコブレのキャパシティが17.5Ktです)。これだけ見ると鉱石系の方が魅力的に見えます。

ただし、ギャラクシーリソースズもネオメタルズもオーストラリアで鉱石を生産・濃縮したのち中国に運んで最終製品に加工するモデルです。よって炭酸リチウムまで生産するオロコブレと単純に比較することはできません。鉱石系がどれだけリチウム材料を供給できるかは中国のプラントのキャパシティも同時に考える必要がありそうです。

この中国の生産能力についてはあまり情報を見かけないのですが、オロコブレのプレゼンテーション資料にグラフを使った解説がありました。それを見る限りでは鉱石からの生産拡大もなかなか難易度が高いように見えます(オロコブレはかん水の会社なのでどこまで信じていいのかわかりませんが)。

下のグラフはアナウンスされたキャパシティ拡大案と実現できたキャパシティには大きな差があるという話です。

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また、プラントの建設・拡大には4~5年の時間かかるとのことです。

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鉱石系のプロジェクト

鉱石系のプロジェクトの資源量や目標生産量などを一覧にしました。各数字は会社のHPやプレゼンテーション資料から拾っています。最低でも資源量が発表されているプロジェクトを選びました。

表のうち、ギャラクシー・リソースズ、ネオ・メタルズ、タワナ・リソースズの3社が生産を開始しています。 

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Galaxy Rescources

Mt Cattline、Sal de Vida、James Bayという3つの資産を持ちます。このうち Mt Cattline がすでに生産開始しています。

資源量は、Mt Cattline が11.6Mt@1.2%(Li2O)、James Bay が40.3Mt@1.4%です。他のプロジェクトと比べても Mt Cattline はかなり小規模です。

 

足元の Mt Cattline の生産状況は以下の通りです。

・18年1Qのスポジュメン鉱石の生産量は43,852トン。HPによるとMt Cattlin の生産キャパシティは年間180,000トン。

・18年1Qの生産コストは415ドル/トン。

・17年4Qの鉱石販売価格は868ドル/トン。

・17年4Qの鉱石グレードは5.75%。

・2017年の償却費は27.7百万AUドル、ネットの金融費用は5.8百万AUドル。

 

これらの数字を使って、仮に年間生産量180Kt、販売価格868ドル、生産コスト(ロイヤリティとマーケティング費用前)415ドル、ロイヤルティ7.7百万、償却費と金融費用35百万、その他の管理費など10百万ドル、税率30%で計算すると利益は約38百万AUドルとなります。

現在のギャラクシーの時価総額は1.29十億AUドルなので38百万AUドルという利益を使うとPERは34倍です。

単純な数字はかなり割高に見えますが Mt Cattlin で稼いだ資金で Sal de Vida や James Bay を開発するのを期待されているのでしょう。Sal de Vida は大きなプロジェクトですし、James Bay もまだ初期段階ですがそれなりの規模です。

 

なお、つい先日ですが会社は Sal de Vida の北部分(資源量2.54MtLCE)を280百万USドルでポスコに売却することを発表しています。売却後も十分な資源量は残るので上手い資金調達だったのではと思います。

 

Neo Metals 

オーストラリアで鉱石を生産中の Mt Marion の13.8%の権益を持ちます。パートナーはガンフォン・リチウムとミネラル・リソースズです。

Mt Marion の資源量は77.8Mt@1.37%とかなりの規模です。2018年の生産量は450Kt (~55Kt LCE)の計画で、上半期のネオメタルズの持分利益は7.35百万AUドルの予想です。

1Qの稼働状況は、生産量104Kt(53Kt@6%、48Kt@4%)、販売価格は900ドル/トン(6%鉱石)とのことです。また、生産物のすべてを6%鉱石とする施設のアップグレードが4Qに完成予定です。

ネオメタルズは Mt Marion 以外にいくつかの土地の開発権を持つほか、水酸化リチウムプラントの建設、リチウムリサイクルビジネスへの進出を発表しています。

会社の時価総額は186百万AUドルです。Mt Marion の持ち分だけでそれくらいの価値はありそうなので、他のプロジェクトがうまく進めば上昇余地が出てくると思います。

 

Tawana Resources

オーストラリアの Bald Hill プロジェクトの50%を持ちます。パートナーはシンガポール上場の Alliance Mineral Assets ですが、両社は合併することを発表しています。2018年3月に生産を開始しました。

Bald Hill の資源量は18.9Mt@1.18%とかなり小規模ですが、探索によって大幅な資源量の増加が見込めるとのことです。このレポートによると資源量はエリアの25%程度に基づいており、会社はターゲットを30-50Mt@0.9-1.4%としているそうです。

FSによると年間生産量は155Kt、生産コストは508AUドル/トン、CAPEXは42.2百万AUドル、鉱山寿命は3.6年となっていますが、レポートでも触れられているように対象エリアが狭いので鉱山寿命などの数字は当てになりません。

オフテイク契約は香港上場の Burwill Commodity と結んでおり、2019年と20年は生産の100%を880ドル/トン(6%Li2O)で購入、2020~2022年は市況により価格を決定するとのことです。

なお、タワナは Bald Hill に隣接する Cowan Project の100%も持ちますが、こちらはスピンオフするそうです。

時価総額は227百万AUドルです。企業価値は今後の資源量のアップデートしだいで、もしアルトラマイニング並みの資源量になれば割安感が出てくると思います。