外貨資産は為替ヘッジすべきか?

外貨資産で為替ヘッジをすべきかどうかというバンガードのレポートを読んだ。

To hedge or not to hedge? Evaluating currency exposure in global equity portfolios

このレポートによると、外貨資産への投資で為替をヘッジすべきの判断は、①ポートフォリオのボラティリティ、②ポートフォリオと為替の相関係数、によって決まるそうだ。

 

① ポートフォリオのボラティリティ

ポートフォリオのボラティリティが低いほど為替のボラティリティの影響が強くなるのでヘッジすべきという話。

要は為替のボラティリティは高いので、債券のようにボラティリティの低い資産と組み合わせると、たとえ両者が逆に動いて分散投資の効果が働いてもリスクが増えてしまうことがあるということ。

このためレポートでは債券メインのポートフォリオでは為替をヘッジすべきで、ボラティリティの高い株式の比率が高まるにつれ②のポートフォリオと為替の相関の問題を重視すべきとしている。

 

② ポートフォリオと為替の相関係数

株が暴落したときに通貨も売られる国へ投資した場合は、為替をヘッジすることによりボラティリティを減らすことができる。一方で安全通貨を持つ国へ投資した場合は、株が暴落したときに通貨は上がるためヘッジしないほうがリスクを減らすことができる。

当たり前というば当たり前の話だが、難しいのは株と為替の相関係数が時代によって変わってしまうところ。

たとえばユーロはリーマンショック前までは安全資産でだったが現在はリスク資産の領域に入っている。また、日本円は一貫して安全通貨だがリーマンショック前後からその傾向が極端に強くなっている。

 

Global Investment Returns Yearbook の解説

為替ヘッジについては Global Investment Returns Yearbook 2012 の Currency matters でも解説されている。主な内容はこんな感じ。

・為替はゼロサムなので世界全体(各国すべてのペア)で見るとヘッジ有りと無しのリターンは変わらない。

・ヘッジはリスク(ボラティリティ)を減らす。この効果は株式よりも債券で大きい。

・リスクの減少効果は為替のリスクと株式・債券のリスクを合計した値より低い。

・為替ヘッジのリスク減少効果は近年では減少しており、過去40年間の先進19か国の株式のリスク減少効果の平均値はわずか7%にすぎない。これは国際分散投資のリスク減少効果の半分以下。

・為替ヘッジのリスク減少効果は投資期間が長くなるほど小さくなる。長期ではリスクを増やすことにもなる。

 

感想

現時点で日本円は最強の安全通貨であるため、株の暴落時に円高になることが予想される。

よってボラティリティというリスクだけを考えるのであれば外貨資産への投資は(少なくともある程度は)ヘッジした方が良さそうに思える。

 

ただし、バンガードのレポートはヘッジありとヘッジなしのポートフォリオのリターンは長期では似たようなものになるという仮定のもと、ボラティリティというリスクのみに焦点を合わせている。

実際には高金利通貨のリターンは高くなるというアノマリーがあるため、低金利通貨の円買い為替ヘッジはトータルでマイナスリターンになる可能性もある。

 

また、仮に長期では金利差を含めて同様のリターンになるというのが正しいとしても、実際にFXでヘッジをしようとすると足元でスワップポイントを払い続けなければいけないので心理的に抵抗がある気もする。