今後の建設業の業績はどうなるか

割安株のスクリーニングをすると建設業の小型株が多くヒットします。PERは5~6倍と安く、配当利回りも高く、四半期決算の進捗率も良いです。

これらの銘柄はここ数年で業績を劇的に改善させているのですが、問題はこの好業績が今後も続くのかという点です。

今回、ゼネコンの好業績を特集した週刊誌を読んだのでメモをしておきます。

週刊ダイヤモンド 2016年 12/3 号 [雑誌] (ゼネコン 絶好調の先にある深淵) 

週刊東洋経済 2016年7/30号 [雑誌](ゼネコン バブル超え) 

 

まず好決算についてはこんな要因が挙げられています。

・工事量が増えたため、ダンピングをして赤字工事を受注することがなくなってきた。

・工事量の増加は、安倍政権になって公共工事投資が底打ちしたこと、東日本大震災の復興需要、都心部の大規模再開発、2020年の東京五輪などが要因。

・不採算工事の手離れ。

・資材価格や人件費の上昇が予想よりも後ずれしている。

・スーパーゼネコンは利益を重視して量を取りに行かなくなった。

 

実際の統計も見てみます。

まずは国土交通省の建設投資見通しです。これは「全建設活動について出来高ベースの投資額を推計したもの」とのことです。

グラフを見てわかるように、全体の建設投資額はバブル以降右下がりでしたが2010年に底打ちしています。

その後はアベノミクスの2013年あたりに政府投資と民間投資が大きく増え、ここ最近は政府投資が横ばいながら民間非住宅建設が堅調に推移しています。

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次に法人企業統計から建設業(売上10億円以上)の売上と営業利益率の推移をグラフにしてみました。

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売上は2010年度を底に回復してきています。

営業利益率はアベノミクス前後から急速に改善して2015年度には6.6%と過去最高の水準を記録しました。

売上高の増加と利益率の上昇によって2009年度に6千億円だった営業利益は2015年度に1兆8千億円と3倍に膨らんでいます。

 

利益を押し上げている要因は採算の良い工事を選んでいることとコストが抑えられていることでしたが、コストに関して今後の建設業界の行方に建材価格と人件費のグラフがありました。

これによると2013年をピークに建材価格が下がっていることで全体の建設コストが抑えられているようです。

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他にも建設資材の価格を検索したところ、経済調査会の建設資材価格指数が月次かつ過去データも掲載しており見やすかったです(信頼性はよくわかりませんが)。

これによると建築・土木総合の建設資材価格指数は2014年度の109をピークに2015年度106.4、2016年度104.8と2年連続で下落しています。ただし、直近は4カ月連続で上昇しており2017年3月は106.5まで上がっています。

 

さて一番重要な今後の業績見通しですが、週刊誌の社長のインタビューを読むかぎり、2018年~2020年がピークになりそうとの意見が多かったです。

ただ、それ以後もリニア、国土強靭化、設備投資の五輪後への先送り、インフラの老朽化、などの需要があり大きく腰折れすることはなさそうとの見通しが話されています。

 

今後の主な工事案件は週間東洋経済にまとめられていました。

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週刊ダイヤモンドによるとオフィス供給は19年がピークになるそうです。

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その他の話として、ここ数年の建設投資は東京一極集中という点も挙げられていました。

民間需要のけん引役は都心の再開発で、さらに公共投資も被災地を除くと伸びが著しいのは関東地区とのことです。

 

一通り読んだ感想ですが、少なくとももう2~3年は好調な業績が続くのかなという感じがしました。

ただ、好調といっても売上げが大きく伸びることはないでしょうし、現在の利益率が過去最高の水準にあることを考えると大幅な増益というのも難しいのかなと思いました。

 

投資判断ですが、成長を期待して買うのは厳しいけれども、業績が急速に悪化するわけでもなさそうなので、急落があれば下値を拾っていけばよいのではという感じです。

それと今年もそうでしたが、建設業の会社は保守的な予想を出して上方修正というパターンが多いので、決算後の失望売りを拾うのもありかと思いました