内需系の割安株であるノジマについて見てみました。6倍前後のPERです。
会社概要
中堅の家電販売量販店です。15年に携帯電話販売のITXを傘下にしました。
店舗数と店舗数の推移は決算説明会資料に掲載されています。
主力のデジタル家電専門店142店舗で安定して数を増やしています。キャリアショップは買収によって一気に店舗数が増えました。
2016年のセグメントは、デジタル家電専門店運営事業が売上1,836億円・利益83億円、キャリアショップ運営事業が売上2,705億円・利益65億円となっています。
業績
2007年~2014年の期間に売上を2倍にしています。家電販売店の店舗増によるものだと思います。
2016年にはITXを買収したことで売上・利益が2倍になりました。
今期は+1%増収、+11%経常増益の予想です。
売上高 | 前年比 | 経常利益 | 前年比 | 純利益 | 経常利益率 | |
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12年3月 | 211,051 | -1% | 3,262 | -55% | 2,119 | 1.5% |
13年3月 | 199,976 | -5% | 3,482 | 7% | 1,848 | 1.7% |
14年3月 | 218,402 | 9% | 7,632 | 119% | 4,394 | 3.5% |
15年3月 | 244,067 | 12% | 6,739 | -12% | 3,583 | 2.8% |
16年3月 | 454,842 | 86% | 14,892 | 121% | 13,226 | 3.3% |
17年3月(予) | 458,500 | 1% | 16,500 | 11% | 10,200 | 3.6% |
中間決算は-4%の減収、-4%の経常減益でした。会社予想と比べると、売上は-6%、経常利益は-13%下振れています。
のれん償却前のセグメント利益は、デジタル家電専門店運営事業が+22%、キャリアショップ運営事業が+20%でした。
決算説明会資料によるとITXの営業利益は期首計画に対して半分以下の実績となっており、この事業の不振が大きそうです。
バランスシート
ITX買収で有利子負債が一気に増えました。ネットの有利子負債は645億円あります。
一方でキャッシュフローですが、経常利益(148億円)に減価償却費(70億円)とのれん償却費(14億円)を足すと200億円を超えると思います。
ネットの有利子負債はキャッシュフロー(税前)の3~4年分、グロスの有利子負債/純利益でも7倍くらいなので、安定的に利益を出せるのであれば極端に財務が悪いわけではなさそうです。
現預金 8,676百万円
短期借入金 2,400百万円
1年以内の長期借入金 7,896百万円
長期借入金 62,979百万円
ニフティ買収
日経新聞で「ニフティのネット接続事業、ノジマが買収 」という記事が出ています。
家電量販店のノジマは富士通子会社、ニフティのインターネット接続など個人向け事業を買収する方向で調整に入った。買収額は250億円程度とみられる。接続事業の顧客を囲い込み、ネット接続家電の販売や、利用に応じて課金する各種サービスの提供を増やす狙いがある。
ノジマは富士通と詳細を詰め、2016年度中にも最終合意する見通し。量販店に加え、傘下に持つ携帯電話販売の店舗網を活用すれば、ネット接続の顧客を広げられると判断したもようだ。
家電販売とネット接続事業の相乗効果も見込み、買収で確保した顧客に家電製品のセキュリティーサービスや使い方サポートの提供を狙う。家電とネット接続のセット販売にも取り組む。
ニフティの事業買収にはKDDIやソニーネットワークコミュニケーションズ(旧ソネット)も名乗りを上げていた。入札手続きを進めた富士通は価格などで好条件を示したノジマを選んだ。主にパソコンを想定してきたネット接続事業は再編が進んでおり、KDDIは16年12月、会員数が240万人のビッグローブ買収を発表している。
ニフティは光回線などのネット接続会員が16年3月時点で134万人。16年3月期の売上高668億円のうちネット接続事業が470億円、メールやブログなどウェブサービス事業が135億円。この2事業が売却対象となるもようだ。
富士通はニフティを昨年7月に100%子会社にした。個人向け事業を売却する一方、企業向けクラウドサービスはグループ内に残す方針を示していた。
ニフティの経常利益は、13年52億円、14年45億円、15年33億円、16年9.9億円、と右下がりです。買収対象外のクラウド事業のセグメント利益(全社の調整額を引く前)は、15年が6億円、16年が9億円でした。
ノジマの経常利益予想が165億円なので利益が回復すればかなりインパクトが大きいのですが、右下がりの利益を見ると復活できるかはよくわかりません。
財務状態に余裕がある会社ではないので、回復するかわからない会社に250億円支払うのはややリスクが高い気がします。
バリュエーション
・株価1,312円、時価総額(自己株式除く)64,105百万円
・予想PER6.3倍。経常利益ベース(税率35%で計算)の予想PER6倍。
・予想EV/EBIT 8倍。
・今期配当は24円の予想。利回り1.8%。
その他
・100株保有で10,000円分(利用限度額1,000円の10%優待割引)の優待割引券が年2回もらえます。
・2014年に発行済み株式数は+24.9%増加しています。
・また、2016年と2017年も1~2%の希薄化があります。たぶんこの会社が毎年ストックオプションを発行しているのが理由だとと思います。全部合計すると発行済み株式の10%近くのストックオプションがあります。ただし、直近のストックオプションは行使期間が来ていないですし、払込価格も高いです。
・筆頭株主は代表執行役で7.9%、2位も同性の方が7.7%保有しています。3位のティーエヌホールディグスはピーシーデポ社長の資産管理会社で、ピーシーデポ社長はノジマ社長の実弟とのことです。
感想
PERは非常に低く、不動産などの業種的に安い銘柄を除くと最低レベルの数字だと思います。
また、のれん償却費が大きいため、国際会計基準を適用するとこの数字はさらに下がります。2016年はキャリアショップ運営事業でのれんを60億円近く計上しています。
不安点は中間決算が会社予想を下回っているところだと思います。買収したITXが不調なのが気になります。
財務面は思ったほど悪くないかなと感じましたが、良いわけではないし、過去に増資を試みて中止している経緯もあるのでリスク要因かと思います。
あと、競争の激しそうな業界なので買収を除くと高い成長を望むのは難しいのかなと感じました。
デジタル家電専門店運営事業の利益率も前期実績4.5%、今期中間5%と過去の実績や同業他社と比べて高い水準なので、これ以上の改善は難しそうに見えます。
いろいろと期待できそうな材料と不安になる材料が混在している銘柄です。ただ、PERに割安感があるので、キャリアショップ運営事業が回復してくれるのであればかなり魅力的かなと思いました。