為替レートの決定要因 生産性格差

一般的に先進国ほど物価が高く新興国ほど物価が安いという傾向があります。これは旅行をするとよく実感できる話です。

この現象を説明するのにバラッサ・サミュエルソン効果という理論があるそうです。

 

バラッサ・サミュエルソン効果の前提はこんな感じです。

・貿易財では一物一価が成り立つが、非貿易財では成り立たない。

・国際的な競争にさらされている貿易財の生産性に対して、競争にさらされていない非貿易財の生産性は低い。

・一国の中の自由な労働移動によって、貿易財と非貿易財の労働者の賃金は同一になる。

・物の値段は賃金を反映する。

 

貿易財とは電子機器のように国境を越えて取引される財のことです。これらの財は貿易によって一物一価が成り立つため国によって価格がそれほど変わりません。このため貿易財を生産する労働者の賃金は生産性によって決まることになります。たとえばA国の労働者が1人あたり年間2台の車を生産できる一方でB国の労働者は1台しか生産できない場合はA国の労働者の賃金が高くなります(車の値段は同じなので)。

一方で非貿易財は貿易ができないことによって一物一価が成り立ちません。そして国際的な競争にさらされていないので生産性も貿易財よりも低くなります。

しかし、一国の中では労働者は自由に仕事を選べるため、生産性の低い非貿易財の労働者の賃金も貿易財の労働者の賃金と似た水準となります。よって貿易財の生産性の高い国の非貿易財の労働者の賃金は、貿易財の生産性の低い国よりも高くなります。

そして物の値段が賃金を反映することで、先進国のように全体的な賃金が高い国ほど非貿易財の値段も高くなります。

購買力平価は一物一価が成り立つ為替レートです。先進国の方が新興国よりも非貿易財の物価が高いということは、購買力平価から見て先進国通貨は割高もしくは新興国通貨が割安になるということです。

 

では実際に生産性と為替レート(購買力平価と実際の為替レートの乖離)のデータを見てみます。三菱UFJの経済レビューの中に下のグラフがありました。

これを見ると、右上の先進国のグループはややばらつきがあるもののおおむね0.8~1.2の範囲にあります。一方で1人あたりGDPの低い新興国のグループは購買力平価を大きく下回る為替レートになっています。

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バラッサ・サミュエルソン効果によれば、この新興国の為替レートの購買力平価からの下方乖離は1人あたりGDPが成長していくことで解消されていくはずです。