為替レートの決定要因 購買力平価

為替レートを説明する有力な理論に購買力平価説があります。

 

購買力平価

購買力平価は、どこの国でも同じ物は同じ価格になるという「一物一価の法則」に基づく為替レートです。

例えば、りんごが日本で100円、アメリカで1ドルで売られていたとすると、りんごを基にした購買力平価は1ドル=100円になります。iPhoneが日本で10万円、アメリカで1,200ドルで売られていたとすると、iPhoneを基にした購買力平価は1ドル=120円です。

購買力平価はモノの数だけ存在しますが、二国間の購買力平価は広範囲なモノ・サービスのバスケットによって求められます。

もし購買力平価に乖離があった場合、つまり同じ物が別の国で違う値段で取引されているのであれば、価格の安い国で購入し価格の高い国で売ることによって利益を得ることができます。

 

購買力平価によれば為替レートの変化はインフレ差によって決まることになります。

先のリンゴの例では、インフレによって日本のリンゴが1,000円になれば、りんごの購買力平価に基づく為替レートは1ドル=1,000円になります。

つまり低インフレの国ほど通貨高に、高インフレの国ほど通貨安になるということです。

 

購買力平価の問題としては以下の点が挙げられています。

・輸出入が難しく裁定が成り立たない財やサービスの存在。

・輸送費、関税などの障壁。

これらの問題はあるものの、長期で見れば購買力平価は成り立つと考えられています。

たとえば Global Investment Returns Yearbook 2012 に1900年~2011年の期間における19か国のドルに対する名目・実質為替レートのグラフが掲載されています。

名目為替レートは国によって大きく動いていますが、そのほとんどはインフレによるもので、実質為替レートの変化率はプラスにせよマイナスにせよ年率1%以下にしかなっていません。

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また、このレポートには1970年~2011年までの83か国のUSドルに対する名目為替レートの変化率とインフレ率の散布図も載っています。こちらを見ても為替レートとインフレの相関が非常に強いことが分かります。

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絶対的購買力平価と相対的購買力平価

購買力平価には絶対的購買力平価と相対的購買力平価があります。

絶対的購買力平価はある地点で一物一価から換算される為替レートです。各国のビッグマックの値段を比べたビッグマック指数も絶対的購買力平価の一つです。より広範囲なバスケットを使った絶対的購買力平価はOECDなどが算出しています。

 

一方で相対的購買力平価は、為替レートが適正と考えられる時点を設定し、そこからの物価変化率を調整して算出します。

相対的購買力平価の問題点としては、基準点が正しいという根拠がないこと、物価を調整する指数(消費者物価指数 or 企業物価指数 or 輸出物価指数など)によって結果が変わってくる、というのがあります。

 

個人的な感想としては、絶対的購買力平価の方がシンプルで分かりやすいと思います。相対的購買力平価のように根拠があいまいな基準点を設定する必要がないですし、実際の物価感覚からも妥当性がある気がします。

 

ドル円の絶対的購買力平価

OECD が発表している絶対的購買力平価と実際の為替レートをグラフにしてみます。2015年のドル円の購買力平価は106円となっており、現在はやや円安という状況です。

過去の推移を見ると、固定相場制の時期を除いて全体的には購買力平価の方向に沿って動いていますが、80年代後半から2000年くらいにかけて大きなかい離が10年以上も続いています。

購買力平価は長期的には成り立つものの、短中期的な相場予想にはあまり役立たないということでしょう。

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ドル円以外の各国の購買力平価と為替レートの推移は下の記事に載せています。