ウォール街のモメンタムウォーカー

 株式市場の3大アノマリーのひとつ「モメンタム」について書かれた本です。

ウォール街のモメンタムウォーカー (ウィザードブックシリーズ)

ウォール街のモメンタムウォーカー (ウィザードブックシリーズ)

 

本書で取り上げている話題はモメンタム中心ですが幅広いです。

効率的市場仮説の説明、モメンタム戦略の歴史や機能する理由、債券・海外株式・コモディティなど各資産クラスの特徴、スマートベータとは何か、絶対モメンタムと相対モメンタム、著者の提唱するデュアルモメンタム戦略、ヘッジファンドやCTA(商品投資顧問業者)のパフォーマンス、小型株効果やバリュー効果にも触れています。

基本的にはアカデミックな研究をもとに書かれていますが、実践家の話も取り上げておりバランスが良い内容だと思いました。

たとえばモメンタムの歴史についての部分では、まず実戦家としてリバモア、ワイコフ、ドレイファス、オニール、ドンチャン、タートルズといった面々の紹介があり、続いてアカデミックの世界の話として誰が初めてモメンタムの研究を行ったのか、それに対する批判、その後に誰がどんな研究が発表したのか、といったことが解説されています。

著者によるとモメンタムに関する学術論文は300を超えるとのことです。英語の苦手な個人投資家にはとても調べきれない量なのでこのようなまとめ本があるのは助かります。

 

著者の提唱するデュアルモメンタムですが、相対モメンタムと絶対モメンタムを組み合わせた戦略です。

相対モメンタムとはある資産の値動きが他の資産の値動きと比較して強いか弱いか見る方法で、絶対モメンタムとはある資産の価格が自身の過去の価格と比べて強いか弱いかを見る方法です。

S&P500やACWI(世界株価インデックス)で両者を比較すると、相対モメンタムのほうがリターンは高いものの、絶対モメンタムのほうがボラティリティとドローダウンは低くシャープレシオも高くなるそうです。デュアルモメンタムは両者の補完的な性格を活かすことで高リターン&低リスクの成績を達成するとのことです(パフォーマンスは下のグラフ)。シンプルであいまいな点がないよくできた戦略だと思いました。 

 

f:id:sapa21:20180321163500p:plain