2020年の感想と2021年のスタンス

今年は相場観がまったくダメで個別株は良かったという一年だった。結果としてリターンはほどほどで終わった。

相場観に関してはまず新型コロナウィルスの影響を軽く見たのがまずかった。コロナがニュースになり始めた当初は2011年の新型インフルエンザ程度の影響ではないかと考えてしまった。さらに底打ちからの上昇では二番底を警戒して強気になることができなかった。

ただ、株価の変動があまりにも急激でポジションを動かす余裕がなかったことや、昨年に子供が生まれてからポートフォリオのバランスを意識していたことで相場観が外れた影響はそれほど大きくなかった。

個別株は、主力として持っていた国内小型株、EV関連株、中国ネット株のどれも良かったが、とりわけEV関連株はバブル的に高騰した。ただ、こちらもキャッシュポジションと分散投資のために一部銘柄の急騰によって全体の成績が大幅に上がるということもなかった。バランスに気を配ったポートフォリオの狙い通りの結果で仕方ないのだが、個別株の調子が良くても影響が限定的というのは残念でもある。

 

来年の相場についてはさっぱり見当もつかない。

足元の株価と実体経済の乖離は大きいと思うしバリュエーションも高いと思う。

株価は長期の将来を反映するので短期的な落ち込みの影響は限定的、ワクチンによってしばらくすれば経済は正常化する、金利が低いからバリュエーションが高くなるのは自然といった話を見ると確かに理屈としてはそうなのだろうと思うが、一部グロース株のバリュエーションの高騰やバリュー株の放置され具合を見ると市場がそんなに理性的なのだろうかと感じてしまう。むしろ現金給付を含めた財政政策を伴った金融緩和によってバブル的な株高になっているという話の方が個人的な納得感は高い。

いずれにせよ今は実体経済とかバリュエーションなどはあまり意味のないものになっているのかなと感じる。現在の持ち株は保有を続けつつ、長期のトレンドラインを割ったらポジションを削減していくスタンスで2021年に臨もうと思う。

 

4666 パーク24

コインパーキング「タイムズ」を含む駐車場の管理運営を行っている会社。国内首位。レンタカーやカーシェアも行っている。

海外は韓国・台湾のほか、買収によりイギリスやオーストラリアなどに進出した。

 

売上高は順調に伸びていたが、新型コロナウイルスの影響により2020年10月期は-15%の減収となった。2021年は5%の回復予想。

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主要3セグメントの売上高。

2020年は前年比で国内駐車場-9%、海外駐車場-32%、モビリティ-14%。海外の落ち込みが最も大きい。

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EBITDA、営業利益、経常利益の推移(EBITDAは2013年以降)。

全体として増益傾向を続けていたが2020年は大幅な赤字に転落した。ただし、減価償却費が大きいためEBITDAベースでは黒字。営業キャッシュフローやフリーキャッシュフロー(営業CF-投資CF)も黒字となっている。

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主要3セグメントの営業利益。

国内駐車場とモビリティは大幅な減益だが黒字を維持している。海外駐車場が赤字の原因。

2021年は国内駐車場がかなり回復し、モビリティが最高益を更新する計画になっている。モビリティの営業利益は100億円と全体に占める割合も高くなってきた。

一方で海外駐車場は依然として赤字が続く見込み。海外はイギリスの比率が高いので来期も厳しいかもしれない。

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モビリティの売上高の内訳。

レンタカーも伸びているが、カーシェアの成長が著しい。2020年はレンタカーが落ち込む中でカーシェアは底堅く推移し、両者の売上高が同水準となった。

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営業利益を見るとレンタカーはほとんど増えていない一方でカーシェアが順調に成長している。カーシェアの営業利益率は20%近い高水準(2020年は18%)。

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会社は今期にレンタカーの車両を大幅に削減した(前期末30,620台→17,808台)。今後はカーシェアに注力していくようだ。

カーシェアリング市場動向によるとタイムズカーシェアのステーション数と車両台数は2位を大きく引き離している。競争優位はありそう。

カーシェアの市場規模だが、この調査によると2019年が482億円の見込みで、2030年には4,555億円にまで拡大すると予想している。この資料によるとレンタカーの市場規模は9,540億円(うち個人向け3,816億円)で、個人向けのカーシェア市場規模はレンタカーの1/12程度だそうだ。これだけ見るとカーシェアにはまだまだ拡大余地が大きそうに思える。

ただ、国際的に見るとカーシェアの先進国のスイスでも会員数は人口の2%程度とのこと。日本の会員数は200万人を超えており、会員数/人口で見た普及率は他国に比べると高い水準のようだ。

 

バランスシートは、現金555億円、短期有利子負債(リース含む)457億円、長期有利子負債(リース含む)1,593億円となっている。有利子負債は大きいもののキャッシュフローが黒字なのですぐに問題は起きにくいと思う。

12月に会社はのれんの減損で大幅に低下した自己資本比率を改善するために500億円の劣後ローンを発行した。これによって自己資本比率は18%まで上がるそうだ。

 

株価はピークから約半分の水準まで落ちている。時価総額は2,666億円。

好調時には140億円近くの純利益を出していたので、これを基準にするとPERは20倍を切る。業績回復を前提にすれば魅力的な水準に落ちてきた。

主力事業の国内駐車場はコロナが落ち着けば回復すると思うし、モビリティ事業ではカーシェアの成長に期待できる。

一方で海外駐車場は厳しい。今期の予想も赤字だし、イギリスの再ロックダウンも逆風になりそう。バランスシート上には依然としてのれんが168億円のっているのも不安な点に思える。

 

PLS.AX ピルバラミネラルズ

リチウム化合物の原料となるスポジュメン鉱石を採掘している会社。オーストラリア上場。

 

会社の保有する資産はオーストラリアの Pilgangoora。生産中の鉱山ではトップクラスの資源量をほこる。資源量・グレードともに高い Greenbushes(ティエンチ/アルベマール)は別格だが、Mt Marion(ガンフォン/ミネラルリソーシズ)、Pilgangoora(アルチュラ)、Mt Cattlin(ギャラクシー)よりもはるかに大きい。現状の生産キャパシティの下で鉱山寿命は40年以上になる。

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2015~2017年頃に起きたリチウムブームの結果、オーストラリアではギャラクシー、ピルバラ、アルチュラ、アリタらがスポジュメンの生産を開始した。しかし、2年以上も続くリチウム市場の低迷によってアルチュラとアリタは破綻に追い込まれている。

新興他社と比較するとピルバラはパートナーが豪華なのが特徴的。オフテイク契約の相手にはガンフォン、CATL、ポスコといった一流の会社が並んでおり、これらの会社はピルバラの株主にもなっている(ガンフォン6.86%、CATL8.24%、ポスコ3.69%)。ポスコとはJVで水酸化リチウムプラントを建設する計画がある。

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Pilgangoora でのスポジュメン精鉱の生産は2018年3Qに始まった。しかし、リチウム市場の悪化を受けて生産は停滞している。

ステージ1のネームプレートキャパシティは年間330Ktのスポジュメン精鉱だが、直近4四半期の合計は132Ktしかない。生産が倍増した3Qを年換算しても250Ktにとどまる。

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供給過剰によりスポジュメン精鉱は価格下落が続いている。

市場の逆風を受けて2020年6月期の決算は100Mドルの赤字となった。営業キャッシュフローも19Mドルの赤字。

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バランスシートのキャッシュは新株発行により86Mドルに増加した。

短期借入金は53Mドル、長期借入金は123Mドルとなっている。

 

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12月1日に会社は破綻したアルチュラマイニングを175Mドルで買収することを明らかにした。アルチュラの資源量は中規模クラスだが、ピルバラの資産に隣接しているため相乗効果が見込めると判断したようだ。買収資金は新株発行によって手当てする計画(240Mオーストラリアドルの増資)。

 

ピルバラの今後はスポジュメン価格の改善が前提になると思う。現在の価格ではキャッシュフローが赤字で存続が不可能。

価格は足元で改善する気配がある。しかし中長期的に見ると競合が多いため価格の予測は難しそう。Pilgangoora はトップクラスの鉱山だが、同レベルだけでもリオティントの Jadar(FSステージ)、アルベマールの Wodina(休鉱)、SQM の Mt Holland(来年1月に投資判断)、LTR の Kathleen(DFSステージ)といった鉱山がある。

現在のリチウム需要は炭酸リチウム換算で年間300Kt程度、これが2025年に800~1,000Ktになると予想されている。一方で Pilgangoora のステージ2が炭酸リチウム換算で100Kt(ステージ1は40Kt程度)という規模なので、同クラスの鉱山が多数開発された場合は需要が伸びても供給過剰になる可能性もある。

なお Mt Marion を参考にすると、鉱山開発は建設開始から出荷開始が1年程度、出荷開始からフル生産が1年未満となっている(川下のスポジュメン精鉱→リチウム化合物は別)。鉱石はかん水に比べると生産までの時間が短い。

 

ピルバラの現在の時価総額は2.19Bオーストラリアドル(≒1.66Bドル)。

先日 IGO が Greenbushes の25%と Kwinana 水酸化リチウムプラントの49%を1.4Bドルで購入すると発表した。水酸化リチウムプラントも入っているので Greenbushes のみの正確な評価は不明だが、この価格を基準にするとピルバラは十分に評価されているのではないかと思う。  

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IGOのプレゼンテーション資料

 

ORE.AX オロコブレ

アルゼンチンのオラロス湖から炭酸リチウムを生産している会社。オーストラリア上場。

 

オラロス湖の開発は2008年に始まった。2012年に豊田通商とのジョイントベンチャーを締結し、2015年に初の売上を計上している。

オロコブレのプロジェクトの持ち分は66.5%。豊田通商はプロジェクトの25%を持つほかオロコブレに15%の直接出資も行っている。

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2016年2Q(4-6月)から2020年3Q(6-9月)の炭酸リチウムの生産量と平均販売価格の推移。

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オロコブレのネームプレートキャパシティは年間17.5ktだが、稼働から数年たっても10~13kt程度の生産量に留まる。

平均販売価格は2018年3Qをピークに大幅に急落している。直近では3,102ドル/トンとキャッシュコストの3,974ドルさえ下回る。オロコブレの平均販売価格はSQMに比べても大幅に低い。全体の2~3割しかバッテリーグレードの炭酸リチウムを生産できていないのが原因と思われる。

 

現在、会社はステージ2の拡張と楢葉の水酸化リチウムプラント建設を進めている。

これらが完成した場合、ネームプレートキャパシティは42.5Ktまで増加し、内訳はバッテリーグレードの炭酸リチウム17.5kt、バッテリーグレードの水酸化リチウム10kt、テクニカルグレードの炭酸リチウム15.5ktとなる(あくまでも名目上。実際にはステージ1でもバッテリーグレードの炭酸リチウムを十分に作れていない)。

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ステージ2の生産はFY2023年(22年7月~23年6月期)に始まる予定。CAPEXは330Mドル。

楢葉のプラントでは年間10ktのバッテリーグレードの水酸化リチウムプラントを生産する。2021年後半から試運転が開始される予定。原材料である炭酸リチウムから水酸化リチウムを製造するコストは1,500ドル/トン程度。オロコブレの持ち分は75%でCAPEXは86.4Mドル。

 

なお、オロコブレはトヨタとパナソニックの合弁であるプライムプラネットエナジー&ソリューションにバッテリーグレードのリチウム化合物を提供する契約を結んでいる。炭酸リチウム換算で2021年の3Ktから2025年に30Ktまで拡大するそうだ。

 

業績を見るとリチウム価格の下落を受けて2020年(2020年6月期)は赤字となった。EBITDAベースでも赤字と厳しい。

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2020年6月時点のバランスシートは、キャッシュが172Mドル、短期借入金62Mドル、長期借入金158Mドルとなっている。

会社は8月に増資を行ったことで足元で100Mドルの余剰キャッシュを確保した。しばらくの間は財務的にも問題なさそうに思える。

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オロコブレの株価は他のリチウム株に遅れて11月に急騰した。YahooFinanceによると現在の時価総額は1.46Bオーストラリアドル(≒1.1Bドル)となっている。

会社の今後は楢葉の水酸化リチウムプラントの成否次第だと思う。これが成功すれば、現在のバッテリーグレード炭酸リチウム年間2~4Kt(残りはテクニカルグレード)の生産量が、バッテリーグレード炭酸リチウム2~4Kt + バッテリーグレード水酸化リチウム10Ktになる。ただ、結果が出るのは2022年以降になる。

 

中国ADR(NIO、XPEV、NIU) 2020年3Q決算

電気自動車のニオ、小鵬、電動バイクの小牛の3Q決算。

記事中のPERやPSRはすべてYahooFinanceのアナリスト予想の数字をもとに計算した。

 

・NIO ニオ

中国の新興EVメーカー。

2018年にプレミアムSUVのES8、2019年にES8より小型で廉価なES6、今年に入ってモデルYの競合となるEC6を発売した。

ニオのEVはバッテリー交換が可能という特徴がある。車体のみを購入しバッテリーをリースで利用するBaasも行っているそうだ。

四半期の納車台数は下のグラフのとおり。3Qは12,206台と2四半期連続で過去最高を記録した。10月は5,055台、11月は5,291台と好調を維持している。

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業績は赤字が続くが、粗利益は2Qから黒字転換している。3Qの粗利益率は12.9%まで改善した。

生産能力は2021年1月に月産7,500台に拡大させる計画。ニオは江淮汽車の工場内に共同工場を持つ。会社によると年間生産能力15万台まで拡大できるそうだ。

EVブームを背景に株価は高騰している。現在の時価総額は約600億ドルでホンダや日産を超えている。今期のPSRは25倍と自動車会社とは思えない水準。

ただし、ニオの2020年の販売台数は4万台程度の予想なので拡大余地はかなり大きい。また、テスラのような(オートパイロットなどの)ソフト販売収入やニオ独自のBaasが利益を生むのではという期待感もある。

 

・XPEV 小鵬

ニオや理想汽車と並ぶ中国の新興EVメーカー。3社の中では最もテスラに似た路線を取っているという評価。R&Dも大きい。

2018年にSUVのG3、2020年にセダンのP7を発売した。P7はカタログスペックではテスラモデル3を上回る一方で値段は安い。

納車台数の推移は下のグラフのとおり。P7の貢献により3Qは8,578台と大幅に伸びた。10月は3,040台、11月は4,224台と好調が続く。

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3Qの売上高はニオの半分以下。赤字も続くが、粗利益は初の黒字となった。

会社は広東省に年間生産能力10万台の工場を持っている。また同レベルの第二工場も建設するそうだ。

時価総額は318億ドル。今期のPSRは40倍近い値となっている。

 

 ・NIU 小牛

リチウムイオン電池を搭載した電動スクーターを製造販売している。高価格帯の製品が主体だったが、Gシリーズで中価格帯に進出した。

3Qは前年比で売上高+37%の増収、営業利益+51%の増益だった。

販売台数は前年比+68%と大幅に増加したが、Gシリーズの販売増加によりスクーター1台当たりの売上高は-19%と低下した。

四半期の業績推移を見ると、新型コロナウィルスの影響で1Qは赤字になったものの、それを除くとここ2年は営業黒字が定着している。

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中国では電動バイクの新たな規制が始まった。数年をかけて(都市により移行期間が違う)基準を満たした電動バイクに置き換える必要があるとのこと。Seeking Alpha に掲載されていた分析記事によると、基準を満たさない電動バイクの75%が4年で置き換えられると年間2,500万台の需要が生まれるそうだ(規制前の中国の年間需要は3,500万台)。

 

業界の追い風や新型コロナによる特需もあり株価も高騰している。今年の初めから約4倍に値上がりした。

今期のPERは77倍、来期は35倍と高い。

電動バイクはEVほど独自性が出せないのではないかという不安がある。

 

3663 アートスパークホールディングス 2021年3Q決算

イラストマンガ制作ソフトのクリップスタジオと主に車載向けのUI開発ソリューションを提供している会社。

 

3Q累計は前年比で売上高+15%の増収、経常利益+132%の増益だった。

3Q単体だと売上高+10%の増収、経常利益+824%の増益となる。

業績好調で通期の予想を大幅に上方修正した。

 

セグメント別の業績の推移を見ると、クリエイターサポート事業の絶好調が続く。前年比で売上高+39%の増収、セグメント利益+117%の増益となった。

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一方でUI/UX事業は自動車業界の落ち込みが向かい風となっている。売上高は前年比で-39%の減収。セグメントの赤字は3Q累計で6億円を超え、のれん償却費を差し引いても赤字。

なお、3Qにカンデラ社ののれんを減損したことでバランスシート上ののれんはゼロとなった。

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セグメントの業績を見てわかるようにこの会社の強さはクリップスタジオに尽きる。

クリップスタジオはエントリーユーザーからプロのクリエイターまで幅広く利用されており、プロのなかではディフェクトスタンダードとのこと。

累計出荷本数は10月に900万本を突破した。会社の資料によると伸び率も加速している。

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日本のソフトウェアにしては珍しく海外利用者が60%を占めているのも大きな特徴。2025年にはこの比率を80%まで高めると言っている。

 

中期経営計画では2021年以降のクリエイターサポート事業の売上の内訳が開示されている。

これまで電子書籍ソリューションやクリップスタジオのサブスクリプションの比率が不明だったので(実績値ではないが)内訳を示してくれたのはありがたい。

ただ、最も期待のかかるクリップスタジオのサブスクリプション比率はまだ低いようだ。

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中期経営計画では2025年に営業利益8倍という夢のある数字も出している。

ただ、クリエイターサポート事業の来期の営業利益は今年に比べて余り伸びていないように見える(今期は3Qまでで営業利益12億円出ている)。巣ごもり特需があったのかもしれない。この計画を前提とするなら来期のグループの業績はのれん償却費の減少による増益になりそう。

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バランスシートは健全。現金の23億円は総負債の15億円を上回っている。

 

アートスパークの株価は8月以降に大きく値上がりした。現在の時価総額は180億円。

今期のクリエイターサポート事業は13億円ほどのセグメント利益が出そうなので、UI/UX事業の赤字を無視したPERは20倍程度になりそう。

クリエイターサポート事業の好業績やSaas関連銘柄として考えると割安に思えるが、株価高騰前と比べると将来成長への期待が大きくなり安全域は少なくなったと思う。

 

3689 イグニス 2020年4Q決算

マッチングアプリの with を運営している会社。バーチャルライブアプリにも先行投資している。かつて主要事業だったゲームからは撤退した。

 

2020年9月期は前年比で売上高+17%の増収、経常利益は5.5億円の赤字だった。

赤字の原因はエンターテック事業への投資が原因。売上高の大半を占めるマッチング事業は順調に成長している。

マッチング事業の4Qは前年比で売上高+59%の増収、営業利益+78%の増益だった。広告費投入で3Qに落ち込んだ営業利益は4Qに回復した。営業利益率30%超は米マッチグループと比べても遜色がない。広告の成果か売上高も大きく伸びた。

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マッチングアプリ上位5社のセールスランキングの推移。

ここ3年で見ると、Pairs、Tinder、with が伸びており、タップルと Omiai は冴えない。なお、Pairs と Tinder は米マッチグループ、タップルはサイバーエージェントのアプリとなる。

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2020年の月間セールスの前年比。

新型コロナウィルスによる自粛はマッチングアプリには逆風となっている。その中でも with は落ち込みが小さい。with と並んで Tinder の前年比も好調。Pairs はここ半年は伸び悩んでいる印象を受ける。

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会社の発表した今期の売上高予想は70億円。PSRは3.1倍となる。

マッチング事業の実績売上高は43.7億円なので、20%成長で52.5億円、30%成長で56.8億円となる。営業利益率30%、税率30%として計算すると純利益は11~12億円となり、エンターテックの赤字など他の要素を無視するとPERは18~20倍程度となる。

株価は投機的に値上がりした後に大きく値下がりしている。現在の株価は with に期待するなら買える水準だと思う。ただ、with が他のアプリと比べてなぜ好調なのかよく分からなかったのでやや不安感はある。

 

01772.HK ガンフォンリチウム 2020年3Q決算

中国のリチウム大手。川上のリチウム資源開発から川下のバッテリー製造やリサイクルまで手掛けている。中国では天斉リチウムと並ぶ2強。深セン(002460)と香港(01772)に上場している。

 

3Qは前年比で売上高+8%の増収、純利益+421%の増益だった。

四半期の売上高と純利益の推移を見ると、純利益は依然としてピークを大きく下回っているものの、今年の1Qを底に2四半期連続で改善している。

中国国内の炭酸リチウム価格が底打ちしていることから今後の業績も改善が続きそう。

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2020年のEPSは0.3~0.4人民元というガイダンスがあった。前年の0.28人民元から改善するが、ピークの2017年の1.89人民元からは大幅な減少となる。

 

ガンフォンは他社と比べても順調に生産量を拡大させている。

今年末までに Xinyu で年間キャパシティ50Ktのバッテリーグレード水酸化リチウムプラントが稼働する。2021年にはアルゼンチンの Cauchari-Olaroz の建設が完了し2022年に生産を開始する予定。会社は近い将来にキャパシティを110Ktまで増やすとしている。

下のグラフは2015年~2019年の生産能力と実際の生産量のグラフ。

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※炭酸リチウム、水酸化リチウム、リチウムメタルを単純に積み足している。実際には水酸化リチウムは炭酸リチウムベースではやや少なくなるため正確な数字ではない。 

 

他社と異なりガンフォンが順調なのは必ずしも川上の権益にこだわらずにコンバーターとしての生産能力拡大に注力しているためだろう。

現在ガンフォンが保有し稼働している川上権益はマウントマリオン(持ち分50%)のみで、炭酸リチウム換算で25Kt分に過ぎない。開発中の Cauchari-Olaroz を含めても年間生産量110Ktを達成するには他社から大量の原材料を仕入れる必要がある。

足元ではスポジュメン精鉱の供給過剰が追い風になっているが、需給が引き締まった場合はガンフォンにとって逆風になるかもしれない。

 

株価の方は好調でここ1年で6倍に値上がりしている。

業績低迷から今期のPERはまともな数字が計算できないが、2017年ピークのEPSを使うと35倍程度のPERになる。ただ、生産能力は当時よりも大きく向上しているので実績の数字はあまり参考にならない。結局のところバリュエーションはリチウム価格次第となりそう。

 

中国ADR(BILI、HUYA、BZUN、DAO) 2020年3Q決算

ビリビリ、虎牙、バオズン、有道の決算。

記事中のPER、PSRはすべてYahooFinanceのアナリスト予想の数字をもとに計算している。

 

・BILI ビリビリ

3Qの売上高は前年比+73%と高成長が続く。一方で営業赤字は1,083M人民元に拡大した。

セグメント別の売上高の前年比は、モバイルゲーム+37%、バリューアドサービス+116%、広告+126%、Eコマースその他+83%。全体に占めるモバイルゲームの比率は40%まで低下した。

MAUは1.97億人で前年比+54%、前四半期比でも+15%。有料ユーザー数は1,500万人で前年比+90%。

文句なしの好決算で株価も大きく上げている。

今期のPSRは12.4倍、来期は8.5倍。高成長が続くという前提で考えれば割高とまでは言えなさそう。

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・HUYA 虎牙

ライバルの闘魚との合併が発表された。存続会社は虎牙で合併後はテンセントの子会社となる。テンセント傘下のeスポーツプラットフォームも譲渡により統合されるとのこと。

両社の売上高と営業利益を単純に合算したのが下のグラフ。3Qの売上高は前年比+30%、営業利益は黒字転換だが2Qからは4割減益となった。

今期PERは虎牙21.4倍、闘魚31.8倍となる。

統合比率は闘魚1株につきフヤ0.73株が割り当てられる。来年の上半期に統合が完了する予定。現時点では配当を考慮しても闘魚が割安になっている。

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 ・BZUN バオズン

3Qは前年比でGMV+19%、売上高+22%、営業利益+50%だった。営業利益率は5%。営業利益はブレが大きい。

2018年と2019年はGMVが5割前後の伸び率で推移していたが、今年に入って成長率が急減している。昨年ファーウェイがバオズンとの取引を打ち切ったのが影響しているようだ。

PERは今期29倍、来期22.5倍。ファーウェイの影響が消えて成長率が再加速するのであれば適度な数字だと思う。

 

・DAO 有道

ネットイース傘下のオンライン教育の会社。

3Qは前年比で売上高+160%だった。新型コロナウイルス特需の反動があるのではと心配したが2Qも3Qも高成長を維持している。

一方で大規模なマーケティング・ブランディング費用により営業赤字は8.94M人民元に急拡大した。

有道はもともと社会人の有料会員が多かったが、ここにきてK-12(幼稚園から高校卒業まで)の会員数が急拡大している。2019年1Qの有料会員数3.3万人が2020年3Qには499万人となった。

決算は受けて株価は大幅高となったが、PSRは今期7.6倍、来期4.1倍とそれほど高くない。

オンライン教育の分野は競争が激しいため有道が生き残れるかよく分からない。ただ、競争の厳しい中国のインターネット業界において堅実に業績を伸ばしてきたネットイースが親会社なのは期待できそうな点だと思う。

 

中国ADR(BABA、JD、NTES、BIDU) 2020年3Q決算

アリババ、JD、ネットイーズ、バイドゥの決算を見てみる。

なお記事中のPERはすべてYahooFinanceのアナリスト予想EPSを使って計算している。

 

・BABA アリババ

2Qは前年比で売上高+30%、営業利益-33%、調整EBITDA+28%だった。

今期(21年3月)PERは27倍程度。成長率を考えるとそこそこ割安な水準に思える。

ただ、アリババは赤字部門があるうえ、営業外損益で業績が大きくぶれるので実力が分かりにくい。

過去1年のコアコマースの営業利益は148B人民元(≒22Bドル)だった。時価総額は763Bドルなので、コアコマースだけで見ると割安感はあまりない。

クラウドは過去1年の売上高が50B元だった。アマゾンの営業利益率3割に倣うと15B人民元くらいの営業利益となる。売上高の成長率は60%と高く期待が持てるものの、アリババの場合はコアコマースの規模が大きいので影響も限定的かもしれない。

 

・JD 京東

3Qは前年比で売上高+29%、営業利益-12%だった。年間アクティブユーザー数は4.4億人で前年比+32%、前四半期比+6%。

JDリテイルは前年比で売上高+27%、営業利益+49%、営業利益率3.9%と好調が持続している。

今期予想PERは55.8倍と高いが、JDの場合は利益率の改善余地が大きい。会社によるとJDリテイルの営業利益率は中長期的に1ケタ台後半を目指すとのこと。

今期PSRは1.3倍、来期PSRは1倍。一時期の激安感はなくなったが、依然として割安な水準だと思う。

 

・NTES ネットイース

オンラインゲームではテンセントに次ぐ存在。オンライン教育子会社の有道が伸びている。

3Qは前年比で売上高+27%、営業利益-14%。オンラインゲームの売上高は前年比+20%。

ここ数年の業績を見ると、売上高は伸びているが営業利益はやや停滞している。

PERは今期25.9倍、来期22.4倍と妥当な数字だと思う。

ネットイースは競争の激しい中国ネット業界にあって一貫して業績を伸ばしてきたので信頼感がある。

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・BIDU バイドゥ

検索大手。傘下のiQIYIは動画配信サイトで首位を争う大手だが長らく赤字を垂れ流している。現在はAI、音声アシスタント、自動運転、クラウドといった分野に注力している。

3Qは前年比で売上高+1%、営業利益+161%だった。営業利益は過去最高を更新した。

バイドゥコアは前年比で売上高+2%、営業利益+43%。バイドゥアプリのDAUは2億人で前年比+9%。バイドゥコアの消費者向けの非広告収入は1.4B人民元とのこと(バイドゥコアの売上高は21.3B元)。

iQIYIは営業赤字が前年の2.8B人民元から1.2B人民元に半減した。

今期PERは14.6倍と低い。

成長はないものの収益力の高さ、手持ちの現金、iQIYI、自動運転(競合他社の評価は54~300億ドルとのこと)、クラウド(キングソフトクラウドは77億ドル)などを考えると割安感はある。

YYから中国国内のライブプラットフォーム3.6Bドルで購入することを発表した。

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