3663 アートスパークホールディングス

2012年にセルシスとエイチアイが経営統合して誕生した会社。

イラストマンガ制作ソフトのクリップスタジオを主力とするクリエイターサポート事業とUI開発ソリューションなどのUI/UX事業を展開している。

 

売上高の推移を見るとクリエイターサポート事業が大きく伸びているのが分かる(2017年に大きく伸びているのはコンテンツソリューション事業をクリエイターサポート事業に統合したため)。

UI/UX事業は縮小傾向だったが、2019年にヨーロッパのカンデラ社を買収したことで売上高が大きく増加している。

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セグメント利益も見てもクリエイターサポート事業が順調に伸びている。

UI/UX事業は大きな利益を出したのが2016年のみ。2019年はのれん償却費が3.5億円あるがそれを差し引いても赤字となる。

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セグメントの業績を見てわかるようにこの会社の強みはクリップスタジオに尽きる。

クリップスタジオはエントリーユーザーからプロのクリエイターまで幅広く利用されており、プロのなかではディフェクトスタンダードとのこと。グローバル展開もしており日本語以外のバージョンが販売本数の50%を占める。サブスクリプションやipad・iphone版のサービスも提供している。

クリエイターサポート事業は2018年に売上高+24%・セグメント利益+57%、2019年に売上高+25%・セグメント利益+47%と好業績を出している。

 

一方でUI/UX事業は決算説明会資料を読んでいても内容が分かりにくい。

業績も減収減益でいまいちだったが、2019年1月にヨーロッパで車載向けに事業を展開しているカンデラ社を買収した。カンデラ社の2018年の業績は売上11.5億円・純利益1.6億円で3年連続で利益を出している。ただし、2018年3月期の業績は横ばい。アートスパークはこの会社を21.5億円で買収した。

買収に伴って2019年は3.5億円ののれん償却費が計上されている。

 

四半期の売上高をグラフにするとこんな感じになる。クリエイターサポートも滑らかな成長ではないが、UI/UX事業は凸凹が大きい。

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セグメント利益も両事業とも凸凹が大きく安定していない。クリエイターサポート事業はほとんど黒字だが、UI/UX事業は頻繁に赤字になっている(2019年はのれん償却費を差し引いても赤字)。

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バランスシートにはネットの現金が20億円近くある。時価総額38億円の半分程度。

今期は売上高+8%、経常利益+18%の予想。

株価471円に対するPERを単純に計算すると15倍になるが税金の負担が軽い。税金30%で計算するとPERは20倍程度となる。のれん等償却費を除いた営業利益を使って税率30%で計算するとPERは7.4倍で割安感がある。

 

3020 アプライド

パソコン小売店のアプライドを展開する会社。子会社で雑貨店も運営する。

前期末の店舗数は、アプライド26店舗、雑貨店のハウズ6店舗。

 

売上高はほぼ横ばいで推移している。

経常利益は2016年3月期に大幅に増加して、その後も緩やかな増加傾向にある。

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セグメント別の売上高の推移。

主力のパソコン・ゲーム事業は横ばいが続く。今期は3Qまでで-3%の減収。

化粧品・雑貨事業は2016年3月期に大幅に増加しており、今期も前年比+70%の増収となっている。

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セグメント別の利益の推移。

2016年3月期以降のパソコン・ゲーム事業が好調で、今期中間も前年比+33%の増益となっている。

化粧品・雑貨事業は長らく赤字が続いていたが今期は黒字化した。

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セグメント別の利益率を見ると、パソコン・ゲーム事業が右上がりに利益率を向上させている。直近の中間決算では6.8%だった。

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この会社の最近の好業績はパソコン・ゲーム事業によるものだが、IR資料が乏しいので原因はいまいちわからなかった。

日経新聞では法人向けの販売が好調という記事が多い。

化粧品・雑貨事業は赤字が続いていたが、直近で黒字化しているのはプラス材料だと思う。売上高はパソコン・ゲーム事業の4割に近づいている。

 

3Q決算は売上高+8%、経常利益+43%と好調だった。経常利益の進捗率は94%に達する。

中間の経常利益は期首予想を+37%上振れている。 

 

バランスシートには現金7億円に対して有利子負債が30億円あるが、ネットの流動資産は36億円ある。

 

現在の時価総額は33億円とかなり小さい。予想PERは3.6倍と非常に低い。

業績は良いし、雑貨事業が利益に貢献するようだと面白いと思う。

好調の理由がいまいち分からなかったこと、増税前の駆け込み需要やwindows7終了の特需の反動、評判の悪いサポートサービスなどがリスクに感じた。

 

9707 ユニマット リタイアメント・コミュニティ

介護施設を運営している会社。

2019年9月時点では291拠点・616事業所、うち関東エリアが189拠点を占めている。

提供しているサービスは以下のとおり。主力のデイサービス、ショートステイ、グループホームは大手のようだ。

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なお、この会社は飲食事業も手掛けている。2019年の売上高は全体の13%ほどを占めるが、利益での貢献はほとんどない。

 

過去の売上高と経常利益の推移か下のグラフ。

売上高は低迷している時期もあるが、長期で見ると右上がりに伸びている。成長率は高くないが、良い年で10%弱の伸び率となっている。

経常利益はブレがあり2008年と2009年には赤字になっている。ただ、こちらも長期で見れば成長している。

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セグメント別の売上高の推移。

過去6年で見るとショートステイの伸び率が最も高く2013年比で+75%増加している。続いてデイサービスの+26%、有料老人ホームの+18%となる。

過去3年ではショートステイと有料老人ホームの増加が大きく共に+17%。デイサービスの伸び率は+5%に留まる。

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セグメント別の営業利益。

安定して利益を出しているのはデイサービスとグループホーム。

ショートステイは2017年に黒字化して(2015年以前は不明)利益率を向上させている。有料老人ホーム&サ高住も2019年に黒字化した。とはいえ利益率は4.9%とまだ低い。

近年伸びている2つのセグメントが稼げるようになったのは心強い。

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2019年2Qの稼働率。いずれも向上しており、これが最近の好業績につながっているのかと思う。

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直近3Qまでの業績は前年比で売上高+4.3%、経常利益-8.9%だった。

通期予想は売上高+4.6%、経常利益+7%。

中間は期首予想を-12%下振れており、3Qまでの業績は良くない。

 

バランスシートを見ると、現預金106億円に対して短期有利子負債38億円・長期有利子負債244億円となっている。

2019年の営業利益は35億円・営業CFは44億円。有利子負債は無茶苦茶多いわけではないが、必ずしも業績が安定していないことを考えるとやや多めに感じる。

 

現在の株価は848円で今期PER3.3倍、配当利回り2.6%となっている。

進捗が悪いことや有利子負債があることを差し引いてもかなり低いPERだと思う。

 

7816 スノーピーク

新潟県発祥のアウトドアブランド。テント・タープを主力としたオートキャンプ用品を製造・販売している。高品質、ロングライフ、永久保証制度のハイエンド商品。

新規事業ではアパレルが順調に育っており2019年の売上高の12%を占める。海外比率は15%程度。アメリカ、韓国、台湾などに展開している。

 

売上高は14年連続増収とのこと。

営業利益は2017年に落ち込んだが2018年には復活した。

近年はエントリー製品の販売が好調で、売上高は4.8億円→10.9億円→12.8億円と大きく伸びている。2019年には全体の9%程度を占める。決算説明会資料によるとエントリー製品の粗利益は高いそうだ。

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2017年12月期の決算で中期経営計画を出しており、2018年12月期は大幅に上振れて上方修正したが、2019年12月期の営業利益はやや下振れて着地した。

問題は2020年12月期の営業利益で、当初18億円の計画だったものが10億円に下方修正され利益達成が一期後ろ倒しとなった。会社によると投資フェーズという位置づけだが、決算を見ていると2017年の実績や2019年の予想でも投資フェーズが使われており本当に実現するのか不安を感じる。

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投資の内容は明記されていないが、海外展開や新規事業の売上比率を増やすという説明はある。ただ、これまでの実績を見ると新規のアパレル事業を除いて結果はあまり芳しくない。

海外事業は一進一退。2020年はアメリカの売上高を7.3億円から12.5億円に増加させる計画を出している。

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新規事業ではアパレルの売上高が順調に増えている。他は売上高がかなり少ない。ビジネスソリューションズは今期から登場した。

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矢野研究所のレポートによると、2018年の国内アウトドア市場は前年比+7.5%で右上がりに伸びている。

やや古いが2015年12月期の決算説明資料によるとスノーピークのキャンプ用品の市場シェアは15.8%だったそうだ。

会社の国内売上高は2015年から2倍近くになっているので、国内市場が伸びていてもシェアはかなり大きくなっていそう。今後は国内売上高のみの高成長は期待しにくいかもしれない。

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バランスシートは健全。キャッシュリッチとは言えないが有利子負債は現金の範囲内にある。

 

株価636円で今期PERは16倍となる。

今後は利益率の改善が鍵になりそう。中期計画のように来期の営業利益が+80%増加すればPERは9倍と安くなる。

実現するかは分からないが、扱っている商品からすると現在の経常利益率6.1%は改善可能なように思える。

 

MOMO 陌陌 2019年4Q決算

中国のライブストリーミング大手。マッチングアプリとして紹介されていることも多い。

2018年に同じくマッチングアプリ最大手のひとつタンタンを買収した。

 

4Qは前年比で売上高+22%、営業利益+58%、調整営業利益+42%と好調だった。

2019年の上半期にモモとタンタンのアプリは規制を受けたものの下半期で巻き返している。

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売上高の内訳。タンタンの売上高はまだモモの1/10に満たないが、売上高は前年比で+66%伸びている。

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営業利益の内訳。モモは前年比+33%と好調だった。タンタンの赤字は縮小している。

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モモアプリのMAUは前年比+1%とここ1年横ばいとなっている。

リテンションレートは継続的な改善を見せ規制前の水準に戻った、ユーザーの1日の使用時間はここ2年間で最高を記録したとのこと。

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モモの有料ユーザー数は前四半期比で40万人増加して930万人に達した。

一方でタンタンの有料ユーザー数は450万人で前四半期から横ばいとなっている。

この原因として、iOSの新しいサブスクリプションポリシーの変更が1回かぎりの影響と、ユーザーエクスペリエンスの問題を挙げている。

前者は1Qには影響がなくなる。後者は11月半ばに問題を特定して対処したことで、1月の半ばにリテンションレートが規制前の状態に戻り、2月半ばまでに急激なユーザーの増加したとのこと。ただ、2月半ばからは下方プレッシャーがかかっており、経営陣はウイルスの影響ではないかと考えているそうだ。ユーザーが家に留まることはマッチングアプリには逆風となる。

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1Qのガイダンスは売上高が-4.6~-7.3%と減収を予想している。

理由としては、高課金ユーザーへのコロナウイルスの影響、ユーザーのかなりの部分が故郷に戻っていることでDAUやMAUの回復を鈍くしている、外出規制がオープンソーシャルプロダクトへマイナスの影響を与えている、1月末にコアモモプラットフォームにいくつかの機能の調整を行った、といったことを挙げている。

 

2019年の希薄化EPSは1.93ドルで実績PERは11倍弱となる。

2Qにモモ・タンタン両アプリが規制を受けたことや、上半期にタンタンが大きな赤字を出していることを考えると実際のPERはもっと低くなると思う(モモ単体であれば営業利益が4割以上増える)。

 

6245 ヒラノテクシード

塗工機・化工機器といったコーティングマシンを作っている。テクノスマートの同業。

こちらの取材メモに2018年3月期の用途別売上高が掲載されている。比率が高いのは、電池31%、成膜装置19.6%、真空機器7.7%という順になっている。電池向け用途は2015年の1,633百万円から2018年の11,704百万円まで急増している。

 

年ベースの売上高は以下のとおり。機械業らしく凸凹がある。

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経常利益も同じ。ただ、赤字にはなっていない。

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年ベースの受注高と受注残高の推移。2018年に大きく伸びて最高を更新した。

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四半期ベースでは受注のピークは2018年3Q、受注残高のピークは2019年3Qとなっている。それ以後は右下がりに減っている。ただ、受注残高は同業のテクノスマートに比べるとまだ高水準を維持している。

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バランスシートを見ると現金+有価証券+投資有価証券-有利子負債は180億円ほどあり現在の時価総額157億円を超える。

 

今期のPERは5.7倍、配当利回りは3.5%となっている。ただ、今後は業績の悪化が予想される。

ヒラノテクシードの2006年~2020年(予想)の純利益の平均は18億円程度だった。これを使うとPERは8~9倍程度となる。

テクノスマートと同じく資産的な割安さを支えに景気回復時の値上がりを狙う、リチウムイオン電池がオプションという銘柄だと思う。

 

YY JOYY 2019年4Q決算

中国のライブストリーミングの老舗。昨年YYからJOYYに名前を変更した。傘下にHUYAとBIGOを持つ。

運営しているサービスとMAUは以下のとおり。

・YY Live 4,120万人(前年比+3.8%)

・HUYA 6,160万(前年比+21.5%)

・HAGO 3,300万(前年比+57.9%)

・BIGO Live 2,310万(前年比+18.6%)

・Likee 1.1億人(前年3,740万人)

・IMO 2.1億

 

4Qは前年比で売上高+64%、営業利益-49%だった。

売上高の大幅な増加は昨年1Qから連結したBIGOが貢献している。

営業利益は前年比では半減だが、四半期では1Qに底をつけて2四半期連続で改善している。

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セグメント別ではYYが売上高+7%、営業利益+7%。

HUYAが売上高+64%、営業利益5倍(前年は黒字転換したばかりで少ない)。

BIGOは前四半期比で売上高が+17%伸びた。

 

セグメント別の売上高の推移。HUYAの伸び率が高く、BIGOの伸び率はさらに高い。

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セグメント別の営業利益の推移。YYの成長は頭打ちだが、利益は横ばいを保っている。HUYAは安定して黒字を稼ぐようになっている。BIGOの赤字は縮小。

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YYの成長は頭打ちだが安定して利益を稼いでいる。会社は2020年も1桁台前半の売上高の成長を見込んでいる。

 

HUYAの業績は好調で5四半期連続の黒字となった。ただ、有料ユーザー数は前年比+6%の伸びにとどまり、前四半期比では減少した。経営陣によると季節性により休みのシーズンにユーザーが増えるとのことだが、同業のDouYuは4Qも前四半期で有料ユーザー数が伸びている。

  

会社が注力しているBIGOは中国外でライブストリーミングのBIGO LiveやショートムービーのLikeeを運営している。

BIGO LiveのMAUは前年比+18%とほどほどの成長率だった。最近は先進国に注力しており、これが業績の伸びにつながっているようだ。先進国の売上高に占める比率は2Qが22%、3Qが26%、4Qが31%とのこと。

YYの各サービスのなかでも最も期待されるのがショートムービーのLikeeで、モバイルMAUは前年比+208.3%(前四半期比+15%)伸びて1億人を超えている。会社はLikeeが世界でNo2のショートビデオプラットフォームと言っている。また、ここのサイトでは2019年の全世界のダウンロードランキングで6位に入っている。Likeeはもともとインドに強かったが、現在はロシアやインドネシアにも力を注いでいるとのこと。

なお、LikeeはBIGOの売上高の10%程度を占めているそうだ。

2020年のBIGOの売上高は前年比で+60%以上伸びるが損失1.5億ドルの予想している。依然として損失が続くが、今年の終わりには月ベースでブレークイーブンに達するとのこと。

 

2020年1Qのガイダンスは売上高+41.2~43.3%の増収。

 

YYの現在の時価総額は34億ドルだが、現金+有価証券が42億ドルあり、有利子負債は8億ドルなのでネットのキャッシュと同レベルしかない。

短期有利子負債の代わりに流動負債を使ってもネットのキャッシュは24億ドルとなる。

(HUYAとBIGOを除いた)YY単体は2019年に営業利益3.8億ドル稼いでおり、ネットのキャッシュとYYの利益だけで見ても非常に割安な部類に入ると思う。

不安点としては、YYの業績が悪化するのではないか、HUYAが子会社を外れるのではないか(テンセントが買い増しする権利を持つ)、Likeeが伸びているといってもTikTokには負けているといったところかと思う。

 

6246 テクノスマート

フィルム塗工乾燥機などを作っている機械メーカー。

塗工機械は材料に薬品や塗料などを均一に塗布するための装置で、スマホやタブレットのほかリチウムイオン電池の製造にも使われているそうだ。

輸出の比率が高い会社で2019年3月期は輸出比率が80%に及ぶ。この比率は2016年~2017年頃から一気に高まった。地域別の売上高は中国が6割以上を占めている。

 

機械という業種のため業績のバラツキは大きい。年ベースの売上高は凸凹が目立つ。

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経常利益の推移も凸凹だが赤字にはなっていない。

過去の経常利益率は5.1%から15.3%のレンジだった。2020年の予想は17.5%。

なお、今期3Qまでの経常利益の進捗率は111%となっており、今期は好調な業績を出している。

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年ベースの受注高と受注残高。2019年3月末ではどちらもここ10年くらいで最高の数字となっている。

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四半期の推移。2019年3Qあたりをピークに受注高は減少に転じている。受注残高も大きく減っており過去の平均的な水準に戻った感じ。

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バランスシートには現金が多い。現金+投資有価証券-有利子負債は90億円以上ある。売掛金も買掛金に比べて多く、流動資産-総負債は110億円以上となる。現在の時価総額が86億円を上回っている。

 

今期PERは4.8倍と低いが、業種が業種なだけに今後の業績悪化が予想される。上場した2006年以来の純利益の平均は8.4億円なので、それで考えるとPERは10倍程度になる。

配当利回りは5.4%と高いが自社株買いは行っていない。

この銘柄は保有現金を下支えと考えて、景気が回復したときの株価の値上がりを狙うという感じになりそう。リチウムイオン関連で化ける期待がオプション。

 

3180 ビューティガレージ

美容師、エステ、ネイル等のサロン向けに商品の販売、店舗設計などの支援サービスを行っている会社。

セグメント別では物販が売上高・利益ともに7~8割を占めている。

 

過去の売上高と経常利益はきれいに伸びている。

ここ10年の経常利益率は4.3%~6.3%のレンジ。平均は5.3%。今期予想は4.7%。

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セグメント別の売上高も右肩上がりの成長。

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セグメント利益を見ると2019年4月期の物販事業は減益となっている。成長カテゴリーである化粧品・材料の市場シェア獲得に注力した結果とのこと。

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四半期ごとのセグメント別の売上高。

物販事業は比較的安定して伸びている。直近4四半期は前年比で+8%、+14%、+25%、+11%の増収率。

店舗設計事業はばらつきが大きい。

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セグメント利益は物販事業も店舗設計事業もブレが大きくあまり安定した伸び率ではない。

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物販事業の売上高の内訳は化粧品・材料の比率が高まっている。化粧品・材料はナショナルブランドの比率が高いため、全体で見てもプライベートブランドの比率が減少している。

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物販事業のEC比率は緩やかながら堅実に上がっている。

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アクティブユーザー数(過去1年に1回以上購入)とロイヤルユーザー数(過去1年に6回以上購入)の推移。アクティブユーザー数は頭打ちになっている。ロイヤルユーザー数は直近2Qでも前年比+20%の増加。

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2013年とやや古いがホリスティック企業レポートによると市場規模は以下のとおり。

サロン業界の開業費用の市場規模は約 1,900 億円、業務用化粧品市場規模は約 1,230 億円と推定されている。同業界の店舗数は、全国に約50 万件、うち同社への登録数は 15 万件で 30%、同アクティブユーザー数は 5 万件と 10%程度に過ぎない。また、国内 EC 市場全体(企業間取引:B to B)では EC 化率 25%に対し、同社ではビューティサロン業界における同率は、数パーセントにとどまっていると認識しており、潜在的な成長余地は大きいと言える

前年の化粧品・材料の売上高が46億円、アクティブユーザー数が9.7万となっているので、市場シェアは化粧品3.7%、店舗数に対するアクティブユーザーは約20%という計算になる。化粧品・材料の売上高からするとまだ伸びそうに思えるが、アクティブユーザー数が頭打ちなのがやや心配なところ。

 

直近3Qは、前年比で売上高+17.9%、経常利益+42.2%と好調だった。今期の予想は売上高・経常利益ともに+16%の予想となっている。

なお、中間の経常利益は期首予想を32%上回っている。

 

バランスシートを見るとネットの現金(現金+有価証券-借入金)が12億円程度ある。また、現金を除く流動資産も流動負債に比べて大きい。

 

コロナショックに加えてアマゾンの参入が報道されたからか株価は大きく売られている。株価964円、時価総額61億円。

今期予想のPERは13.5倍とこの種の会社としては低めのバリュエーションになっている。

 

コロナショックと今後の投資方針

今年は中国の景気回復を背景に好調な株価推移を期待したが、新型コロナウイルスによって完全に目論見が外れてしまった。

株価の暴落スピードはものすごくてボラティリティの大きさにも唖然としてしまう。これほど下げるとさすがに短期的な反発を期待したいが、この問題の先行きが見えないと本格的な回復も難しいのかもしれない。

新型コロナウイルスについては甘く見ていたと思う。最近はいろいろな記事を読んでいるが、株式市場の先行きだけでなく現実生活でも不安を感じてしまう。

Coronavirus: Why You Must Act Now は新型コロナウイルスについての恐ろしさがよく分かる記事だった。感染者数の推定や対策などいろいろ書かれているが、特に重要なのが発症者数と診断者数のギャップの話。

症状が出てから検査によって感染者と診断されるまでにはタイムラグがあるが、この間にも感染者は爆発的に増加するので表面的な数字だけを見ていると対策が手遅れになってしまうとのこと。

下のグラフは湖北省の患者に聞き取りを行った結果で、棒グラフの黄色が検査によってウイルス感染者と診断された人数、灰色は実際にその日に症状が出た人数とのことだ。

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武漢を封鎖した1月23日に湖北省で報告された新規感染者は400人以下だったが、実際には2,500人もの発症者がいたそうだ。ちなみにこのサイトによると1月23日時点の中国の累計死亡者数は23人にすぎない。にもかかわらず武漢はあの惨状となった。

ちなみに同サイトから各国の数字を拾ってみるとこんな感じ。

・イタリア 北部を封鎖した3月8日の新規感染者数1,498人・累計死亡者数366人、全土を封鎖した3月11日の新規感染者数2,312人・累計死亡者数827人。

・スペイン 封鎖措置をとった3月14日の新規感染者数1,159人・累計死亡者数196人。

・フランス 不要不急の公共の場の閉鎖を開始した3月15日の新規感染者数838人・累計死亡者数128人。

・アメリカ 直近3月16日の新規感染者数983人・累計死亡者数86人。

検査数などの違いで単純比較はできないだろうが中国の対応に比べるとどの国も後手に回っているように見える。医療が崩壊したイタリアを基準にするとスペインやフランスも今後かなりひどい状況になりそうだし、死亡者数のグラフを見ていくとアメリカやイギリスもそれに続いているように見える。

記事では1日の対策の遅れが大きな結果の違いにつながるとしている。著者の(武漢に似せた)モデルでは社会的隔離を1日遅らせることで全感染者数が40%も増加するとのことだ。これについては同じような分析も出ている。

感染者数の増加は医療崩壊が起きるかどうかを左右するため死亡者数についての影響はさらに大きくなるとのこと。医療が対応可能だった韓国や湖北省以外の中国での致死率が1%を下回っているのに対して、医療崩壊が起きた国々の致死率は3~5%にも上る。

 

日本は中国や韓国に比べると緩い対策を採っているが、感染者数も死亡者数も少なく死亡者数の増え方も緩やかではある。対策・気候・習慣などの条件が重なってうまく抑え込めているのであればいいのだが、単に検査数が少なくて感染者の増加を見逃しているだけであれば怖い。検査についてはいろいろな議論を見るが、早期対応が決定的に重要という点から感染の実態が分からないというのは危険だと思う。

 

株に関しては景気後退が金融危機を引き起こすまでいくのが最悪のシナリオだと思う。ただ、ヨーロッパやアメリカはリーマンショック後に民間債務の急増はないし、民間債務が急増した中国はウイルス封じ込めに成功した国になっている。日本を筆頭とした先進国の公的債務はやや心配で、実際にイタリアやスペインの長期金利は上がり始めているが、日本やアメリカやドイツといった主要国には波及しないと信じることにする。

足元ではヨーロッパとアメリカが厳しい時期を控えていることからまだ下げが続くかもしれない。実は日本でも感染者が多かったという話が出てくるリスクもある。

ただ、株はすでに3割前後も下げており、さらに中小型株では投げ売り状態となっていることからここから売ることは考えていない。この先も下がるようであれば相当な割安株が出現することになるので、10年に一度のチャンスと肯定的に考えて買える分を買っていきたい。