MOMO 陌陌 2019年3Q決算

中国のライブストリーミングプラットフォームの大手。2018年2月に中国首位のマッチングアプリのタンタンを買収した。

今年の2Qにはモモアプリの新規投稿の停止、タンタンのダウンロード停止という逆風が起きたものの、モモアプリは6月下旬、タンタンは7月中旬に規制が解除されている。

 

3Q決算は順調。

売上高は前年比+22%だが、一時的な売上高を除くと前年比+28%の成長率となる。

売上高 44.5億RMB(前年比+22%)

営業利益 9.9億RMB(前年比+54%)

純利益 8.9億RMB(前年比+54%)

EPS 2.02RMB(前年1.34RMB)

 

四半期の売上高と営業利益をグラフにしてみる(2017年3Q以前は単位がドルなので米ドル人民元レート7.03で人民元に換算した)。

売上高は右肩上がりに伸びている。一方で営業利益は2018年ごろからやや停滞している。赤字のタンタンを買収したことやモモアプリやタンタンの規制があったことが影響している。

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会社別の業績を見ると、売上高ではモモが大部分を占めている。タンタンはモモの10分の1以下。QOOLは主にテレビコンテンツ配信からの広告ということだが割合は小さい。

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営業利益ではタンタンの損失も無視できない。19年3Qは損失がかなり縮小したもののモモの利益12.2億RMBに対してタンタンの損失は2.2億RMBある。

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セグメント別の売上高を見ると、主力のライブビデオサービスは前年比+18%と堅調だった。ショートビデオサービスが台頭しているが、モモのライブビデオサービスに対する影響はないとの話。

バリューアドサービス(バーチャルギフトや有料会員など)はタンタンを除いても前年比+84%と大きく伸びた。バーチャルギフトの伸びはチャットルームの貢献が大きかったそうだ。

タンタンは前四半期比で+9%の伸び率だが、Grossing(収益?)は+40%以上の増加となった。売上高に関してはタンタン規制の影響が遅れて出ている。

 

モモアプリのMAUは1.14億人で前年比3%のアップ。

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ダブルカウントを除いた有料ユーザー数は13.4百万人で前四半期の11.8百万人から回復した。タンタンの有料ユーザー数も4.5百万人で前四半期の3.2百万人から急回復している。ただし、どちらもまだピークを下回っている。

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4Qのガイダンスは売上高45.2億~46.2億RMBで前年比18~20%の成長率。タンタンは50%以上の成長率になるとのこと。

株価は決算後に急落したが現在はやや戻している。YahooFinanceのアナリスト予想を使うと今期PERは13.5倍、来期PERは11.2倍となる。

成長率を考えると割安だと思う。

 

SQM ソシエダード・キミカ・イ・ミネラ・デ・チリ 2019年3Q決算

チリの化学会社。特殊肥料やリチウムなどを生産している。

リチウムではアルベマールと並ぶ最大手の一角。チリのアタカマ湖からリチウム化合物を生産している。

 

3Qは前年比で2桁の減収減益となった。

売上高 473.1Mドル(前年比-13%)

調整EBITDA 155.6Mドル(前年比-18%)

税前利益 86.8Mドル(前年比-24%)

純利益 60.5Mドル(前年比-28%)

EPS 0.23ドル(前年0.32ドル)

 

四半期ごとの売上高と純利益の推移。売上高と純利益の前年比は5四半期連続でマイナスとなった。

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セグメント別の業績を見るとピークで利益の6割以上を占めていたリチウムの利益が大きく減少している。直近3Qでは粗利益の38%とのこと。

セグメント売上高

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セグメント利益(19年3Qのセグメント利益はまだ開示されていない)

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リチウムの販売量は11.3Ktで前年比+22%。3Qまでの9か月間では前年比+12%となった。

セグメント売上高と販売量から価格を逆算すると(時々開示される平均販売価格とズレは少ないので大きな外れはないと思う)、トン当たり16,000ドル以上に急騰した販売価格は直近では10,000ドルまで下がっている。

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会社によると4Qの販売価格は3Qよりも下がるそうだ。また、来年の平均販売価格も今年より低くなる見込み。

販売量は今年の47Ktから来年は65Ktに増加する予想。中国での販売も増えるとのこと。

生産キャパシティは2021年に120Ktする計画に変更はなし。2023年に160Ktまで拡大する準備も始めているとのこと。

 

現在の株価は23.26ドル。

YahooFinanceのアナリスト予想を使うと今期PERは21倍、来期PERは18倍となる。

アルベマールやライベントと比べると評価が高い。

 

中国の高速道路銘柄 保有資産の有効期限

中国の高速道路銘柄が持つ保有資産の有効期限について調べてみた。

取り上げる銘柄は四川高速道路、浙江高速道路、安徽高速道路、越秀交通、成都高速道路の5つ。江蘇高速道路と深セン高速公路は有効期限の記述を見つけることができなかった。

 

・0107 四川高速道路

売上高で見ると Chengyu Expressway、Chengya Expressway、Chengren Expressway、Chengle Expresswayが大きい。

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有効期限はどれも短めな印象。

Chengyu Expressway 2027年

Chengya Expressway 2029年

Chengbei Exit Expressway 2024年

Chengle Expressway 2029年

Chengren Expressway 公式運用の申請中。

Suixi Expressway and Suiguang Expressway 試験運用期間。

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3830 ギガプライズ 2020年3月期2Q決算

集合住宅向けのネット接続サービスとイオンハウジングのフランチャイジー。

 

中間決算は大幅な増収増益だった。売上高は前年比で5割も伸びている。

売上高 656.5億円(前年比+52%)

経常利益 62.6億円(前年比+253%)

純利益 36.5億円(前年0.7億円)

 

2Q単体で見ても好決算。

売上高 346.8億円(前年比+48%)

経常利益 46.9億円(前年比+174%)

純利益 29.4億円(前年比+314%)

 

セグメント別の四半期の売上高。不動産事業の割合は低い。

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セグメント利益では不動産事業の損失もそれなりに大きい。上半期はHomeITの利益15.1億円に対して不動産事業の赤字が2.2億円。

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9月に全戸一括型マンションISP調査が出ている。

2019年3月末の全戸一括型マンションISPの提供戸数は272.9万戸で前年比21%と大きく伸びたとのこと。2018年3月は前年比12.1%だった。

マンションISPのシェアだが、日本の民間共同住宅は資料によって1,300万戸だったり1,500万戸だったり1,900万戸だったりするので正確なところはよく分からなかった(分譲マンションに関しては国土交通省によれば平成30年に654万戸とのこと)。現状では15~20%程度ということになりそうだが、そんなに普及しているのだろうか?

マーケットシェアはつなぐネットコミュニケーションズがトップで23.7%。ギガプライズはシェア8位だがOEM提供分を含めると首位に次ぐ規模とのこと。

 

株価は決算前後でボラティリティが高くなっている。

現在の株価3,700円に対する予想PERは32倍になる。不動産部門の赤字を考えればこれよりは低くなりそうだが、それなりに高い評価がついている。高成長がどれくらい続くのかが問題になりそう。

 

JD 京東商城 2019年3Q決算

中国を代表するEコマースの大手。直販&マーケットプレイスというアマゾンスタイルの販売方式。

市場シェアはアリババに次いで2位だったが、ソーシャルECの拼多多が逆転したとの報道もある。

 

3Q決算は好調だった。売上高は1年ぶりに+30%近くの成長率となり、営業利益も3四半期連続で黒字となった。

売上高 1,348億RMB(前年比+29%)

営業利益 50億RMB(前年-6.5億RMB)

純利益 6.1億RMB(前年30億RMB)

EPS 0.41RMB

 

四半期ごとの売上高の推移。

3Qの前年比成長率は+29%と再加速している。地方市場での売上が好調で、新規顧客の70%以上をそれらの地域から獲得したとのこと。

売上高の内訳は商品が+27%、サービスが+47%の伸び率。サービスの売上高は全体の12%を占める。3PLと広告が牽引したそうだ。JDロジスティクスの外部顧客の売上高は全体の40%で2年前の20%以下から大きく伸びた。

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営業利益の推移。2019年は3四半期連続で黒字を計上している。

Non-GAAP営業利益率は2.2%で、JDリテイルは3.3%とのこと。JDリテイルの純利益率の目標は1ケタ台の後半。

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アクティブアカウントは3.34億人。2018年~2019年にかけて低迷していた時期もあったが、3Qは前年比+10%という高い伸び率となった。

モバイルMAUの前年比は+36%、モバイルDAUは+35%とここ5年で最高とのこと。

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4Qのガイダンスは売上高の前年比が+21~25%。

通期のnon-GAAP純利益は前回の80~96億RMBから98億RMB~105億RMBに引き上げられた。ただ、3Qまでに既に99億RMB稼いでいる。 

 

現在の時価総額は488億ドル。

過去4四半期の売上高は757億ドルなのでPSRは0.65倍となる。

売上高が20%以上も伸びていること、JDリテイルの目標利益率が1桁台後半ということ、JDロジスティクスの価値といったことを考えると少なくとも割高ではないと思う。

ただ、アリババや拼多多と競争しながらも成長を続けていけるのかはよく分からない。

 

WB ウェイボー 2019年3Q決算

ウィーチャットと並ぶ中国のSNS大手。ウィーチャットがクローズドなSNSなのに対してウェイボーはオープンなSNS。中国版ツイッターと呼ばれている。ただ、実際はもう少し範囲が広いそうだ。

3Qの時点のユーザー数はMAU4.97億人、DAU2.16億人。SNSのアクティブユーザー数で10位に入る規模。増加率は前年比2桁をキープしている。時系列でみると増加率は下がってはいるが規模を考えれば十分に伸びている。

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3Qの売上高は前年比+2%(為替調整後+6%)まで減速してしまった。

売上高 467.8Mドル(前年比+2%)

営業利益 172.5Mドル(前年比+7%)

純利益 146.1億RMB(前年比-12%)

希薄化EPS 0.64ドル(前年0.73ドル)

 

四半期の売上高と営業利益の推移。

売上高は2018年2Qまで前年比+70%前後という非常に高い成長率だったが、ここ1年で急降下している。

営業利益は2015年頃に黒字が常態化して、それ以後は急速に利益率を改善させてきた。3Qの営業利益率は37%とピーク付近を維持している。

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ウェイボー、テンセント(広告)、バイドゥ(バイドゥコア)の売上高。中国経済の減速やショートビデオの台頭を受けて各社とも成長率が鈍化している。ただ、ウェイボーはもともとの成長率が高かったため下落が目立つ。

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4Qのガイダンスは売上高が前年比0~3%になるとのこと。

3QのEPSはコンセンサスを上回ったものの、成長鈍化を嫌気してか株価は暴落している。

過去4四半期のEPSを使うとPERは17.4倍。YahooFinanceのアナリスト予想を使うと今期PERは16倍、来期PERは14倍となる。

1年前は高成長割安株で魅力的に見えたが、成長率が0%まで低下した現在では割安とは言えなくなってしまった。

今後はウェイボーの競争力を維持できるか、広告市場がいつ回復するかというところが問題になりそう。

 

YY 歓聚時代 2019年3Q決算

中国の老舗ライブストリーミングプラットフォーム。

ゲームストリーミングのHUYAを子会社に持つほか、今年の3月に中国外でライブストリーミングやショートビデオを運営するBIGOを完全子会社化した。

 

3Qは大幅増収も大幅減益。BIGOの子会社化が影響している。

売上高 68億RMB(前年比+68%)

営業利益 1.6億RMB(前年比-74%)

Non-GAAP営業利益 6.1億RMB(前年比-21%)

純利益 0.9億RMB(前年比-86%)

希薄化EPS 1.11RMB

Non-GAAP希薄化EPS 6.42RMB

 

四半期の売上高の推移。右肩上がりに増えている。19年2Qに大きく伸びているのはBIGOを子会社化した影響。

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営業利益は凸凹がある。最近の急減はBIGOへの投資が原因。

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セグメント売上高。

YYの成長は鈍っている。3Qの前年比は+9%の増収。

HUYAは右肩上がりに伸びており、3Qの前年比は+78%の増収となった。

BIGOは2Q比で+25%の増収と成長率は非常に高い。大部分の売上高はBIGO Liveからで、IMOとLikeeの比率はまだ小さいとのこと。BIGO Liveの先進国からの売上高の比率は26%で2Qの21%から増加した。

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セグメントの営業利益。

YYの成長はストップしている。前年比でプラスになったりマイナスになったりという状況。大きく落ちていないのは救いだが。

HUYAは4四半期連続で黒字を計上した。HUYAの成長は心強いのだが、この会社に関してはテンセントが議決権ベースで50.1%まで株式を買い増す権利(2020年3月8日~2021年3月8日の期間)を持つため、これが行使されると子会社から外れてしまう。

BIGOは先行投資で赤字が大きい。この会社がどれくらい利益を生むことができるのかがYYの将来にとって最も重要になりそう。

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各サービスのモバイルMAUと前年比。

YY 39.9百万人 前年比+3%

Huya 63.8百万人 前年比+29.1%

BIGO Live(中国外でのライブストリーミング) 21.9百万人 前年比+9.7%

HAGO(カジュアルゲームプラットフォーム) 32.3百万人 前年比+92.4%

Likee(中国外でのショートビデオ) 100.2百万人 前年比+413.4%

IMO(ビデオベースのインスタント・メッセンジャー) 212百万人

明らかにLikeeの伸びが強く、会社もこのサービスに最も力を注いでいくとの話。(経営陣によると)Likeeは中国外で2番目に大きいショートビデオプラットフォームとのこと。中国外でのショートビデオの普及率は低くポテンシャルは高い。ただ、tik tokなどの競合も強く先行きがどうなるかは不透明だと思う。

 

YYの現在の株価は62.83ドル、時価総額は50億ドル。

YahooFinanceのアナリストの今期売上予想が35億ドルなのでPSRは1.4倍とネット企業にしては低い。ただ、赤字のBIGOを買収したことでバリュエーションが分かりにくくなっている。

YY本体の営業利益は過去4四半期で3.7億ドルあるため少なくとも割高な会社ではないと思う。あとは海外事業をどう評価するかによりそう。

 

6175 ネットマーケティング 2020年6月期1Q決算

マッチングアプリのOmiaiとアフィリエイトに特化したネット広告代理店の会社。

 

1Q決算は好調だった。経常利益は4.1億円で中間予想の4億円を上回っている。売上高の前年比+23%も中間予想の+15%を上振れている。

売上高 42.5億円(前年比+23%)

経常利益 4.1億円(前年0.25億円)

純利益 2.8億円(前年0.16億円)

 

Omiaiのメディア事業は+23%増収の大幅黒字転換となった。 黒字化は計画通りではあるが利益の大きさはインパクトがある。

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ただ、成長にはやや減速感もある気がする。

有料会員数は前年比+25%と前期の+40%以上から鈍っている。前年1Qが良すぎたのかもしれないが。

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月次の新規会員数は直近で前年比+9%。無料会員も含まれるのでこれだけで判断できないが抜群の伸びではない。

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iOSの月次売上予想を見ても頭打ち感が出ている。

同HPのセールスランキングでマッチングアプリを見ると、OmiaiはPairs、タップル、Tinderよりも下なので競争力に不安も感じる。

 

広告事業は前年比で+23%増収+113%増益という好調な業績。売上高の伸び率はメディア事業と変わらないレベル。

この事業については詳しい説明がないのでなぜこれほど強いのかよく分からない。

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広告事業とメディア事業の四半期の売上高を比べてみる。

広告事業は季節性がある一方でメディア事業は安定して伸びている。売上高の規模は広告事業の方がかなり大きい。

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セグメント利益。こちらも広告事業の方が大きいが、かつては広告事業とメディア事業が半々くらいだった。今後のメディア事業の伸びに期待したいところ。ただ、決算説明資料によると「恋活・婚活市場の需要期に向け、 戦略的な投資を見込む」「2Q、3Qに大きなコストを見込んでいるため、業績予想に変更はありません」とあるので今期はそこまで期待できないかもしれない。

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株価は本日ストップ高となっている。今期PERは29倍。中期経営計画の来期営業利益12億を使うと来期PERは20倍くらいになると思う。

 

9517 イーレックス 2020年3月期2Q決算

新電力の老舗。電力小売りとバイオマス発電を行っている。

中間決算は好調で大幅な増収増益となった。経常利益の進捗率は75%と高い(前年35%、前前年51%)。

売上高 415億円(前年比+35%)

経常利益 54億円(前年比+225%)

純利益 31億円(前年比+234%)

 

2Q単体でも大幅な増収増益。前年2QがJEPX価格の高騰で落ち込んだという要因もあるが、前前年の経常利益12億円と比べても大きく伸びている。

売上高 255億円(前年比+39%)

経常利益 35億円(前年比+569%)

純利益 18億円(前年比+793%)

 

四半期ごとの経常利益の推移を見ると2Qの利益が異常に大きくなっている。

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JEPXのシステムプライス(Day Ahead 24 hours)の月平均値の推移。

イーレックスによると4~9月の平均は8.4円(kWh)で前年の10.1円から大きく低下している。ちなみに前前年を計算すると8.8円となる。

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高圧事業の売上高は+1.2%の増加、販売電力量は+6.6%の増加。1Qの+14.4%、+22.5%から大きく減速している。

低圧事業の売上高は+22%の増加、販売電力量は+19.6%の増加。需要家件数は14万件。需要家件数、販売電力量ともに計画を下回っている。低圧事業の需要家件数は2018年の中頃まで四半期ごとに1万件増えていたが、直近では3四半期連続で4千件の増加に留まっている。

高圧事業も低圧事業も競争激化で厳しいなかで全体の売上高が35%も伸びているのは卸売が大きいのだと思われる。2Qの好業績も電力小売以外の貢献が大きいのではないかと思う。

ただ、この会社は高圧、低圧、卸売、発電それぞれの売上高と利益を開示していないので正確なところは分からない。

 

新規発電所は豊前と大船渡発電所が来年1月より本格運転開始。両施設の発電出力は7.5万kWと大きい(既存の土佐は2万kW、佐伯は5万kW)。豊前は出資比率65%で全量外部へ販売、大船渡は出資比率35%で全量erexへ販売する。

沖縄は21年7月に運転開始という計画。発電出力4.9万kW。出資比率45%で全量erexへ販売。

過去の資料では発電部門のみで21年3月期に年間30億円以上、沖縄と坂出も稼働する26年3月期に50~70億円の純利益への寄与と書かれていた。

 

今期EPSは76.34円の予想でPERは20倍となる。

進捗が良いことや新規発電所2か所が運転開始するのはプラス材料だが、電力小売の伸びがかなり減速していることは気になる。また、20年4月には一般家庭向け規制料金が撤廃されるというマイナス材料もある。

 

ALB アルベマール 2019年3Q決算

特殊化学品メーカー。リチウム、臭素、触媒などを作っている。

リチウムでは最大手の一角。チリのアタカマ湖とオーストラリアのグリーンブッシュ鉱山(持分49%)からリチウム化合物を生産している。アタカマ湖とグリーンブッシュ鉱山はかん水系と鉱石系でベストの資産。

 

3Qは売上高+13%の増収、純利益+20%の増益、調整EBITDA+8%の増益。希薄化EPS1.46ドル。

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セグメント別の前年比は、リチウムが売上高+22%・利益+13%、臭素が売上高+10%・利益+11%、触媒が売上高+4%・利益+8%となっている。

年ベースの3セグメントの売上高の推移(2019年は3Qまでの数字)が下グラフ。

リチウムがセグメントに出たのが2015年でそれ以降に大きく伸びていることがわかる。臭素と触媒は横ばい。強いて言えば臭素がやや伸びている一方で触媒はやや弱い感じ。

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セグメントEBITDA。この会社はセグメントの組み換えが多いため継続的な数字が分かるEBITDAを見る。

なお、リチウムと触媒のセグメント利益はEBITDAの80%程度、臭素は85%程度となっている。

こちらも売上高と同じくリチウムが大きく伸びている。2018年は全体の53%を占める。

臭素はやや右肩上がり、触媒はやや右肩下がりとなっている。

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 EBITDA利益率。

リチウムは40%を超えている(3Q単体は39%)。臭素や触媒も25~35%という高収益。

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2006年から2018年の年ベースの売上高と営業利益の推移。

2014年頃までは横ばいで思ったほど伸びていないかなという感じだが、リチウムが加わって以降は成長率が高くなっている。

なお2015年は Chemetall Surface Treatment が入っているため売上高が大きいが、この事業は翌年に売却している。

リーマンショックの2008年や2009年も業績は落ちているものの赤字にはなっておらず、景気が悪くてもそれなりに利益を出せるようだ。

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2019年のガイダンスは調整EBITDAが1.02~1.06Bドル、EPSが6.00~6.25ドル。それぞれ1.07~1.14Bドル、6.25~6.65ドルから下方修正された。

現在の株価は67.98ドルなので今期PERは10.9~11.3倍となる。 

2020年のガイダンスはリチウムがマイナス、触媒と臭素はフラット。EBITDAは10%程度の減少になるとのこと。

 

リチウム事業について。

・3Qの売上高は+22%。数量+22%、価格+1%の貢献。

・国際価格は前年比で30%の下落。アルベマールは長期契約を主としているためいまのところ影響を受けていないが、今後は影響が出てきそう。

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・中国の炭酸リチウム価格は7ドル/トン。キャッシュコストまで落ちているためこれ以上下がることはないと見ている。しかし、この中国の価格が国際価格に下落圧力を与えている。

・新たな供給は需要増加に追い付かないと見ているが過剰在庫がある。最低でも6か月分で2~3倍のレベル。これが2020年も価格に影響を与える。

・2020年の数量は5~7.5Ktの増加を見ている。キャパシティの拡大はないが XinyuⅡが通期でフル稼働する。

・125Ktのキャパシティ拡張を延期したことで1.5Bドルが必要なくなる。2021年にはフリーキャッシュフローがプラスになる。

・Wodginaの見直し。出資比率を50%から60%に高める一方で、Kemertonの水酸化リチウムプラントの40%をミネラルリソーシズに譲渡。

・スポジュメン鉱石の供給過剰からWodginaは生産停止。2021年に完成するKemertonの水酸化リチウムプラントに供給する。