リチウム株への投資 ③リチウムの需給 その1

リチウム価格の下落が止まらない。2018年の初めにピークをつけてから炭酸リチウムと水酸化リチウムの価格は一貫して下落を続けている。

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Fastmarkets

 

背景には鉱石プロジェクトの生産量の増加がある。2018年には新たに4社が生産を開始したのだが、この4社のスポジュメン精鉱の生産キャパシティは合計で約800Ktにもなる。炭酸リチウムに換算すると約100Ktもの量だ。

ちなみにアルベマーレによると2018年のリチウム需要は炭酸リチウム換算で270Ktだった。フル生産が実現すれば明らかに供給過剰となる。

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LITHIUM SUPPLY REVISITED

 

ただし、スポジュメンの供給過剰がそのままリチウムの供給過剰を意味するわけではない。スポジュメン鉱石は材料でありそこからリチウム化合物を生産する必要があるからだ。

現在はこれらのスポジュメンは中国に送られてそこでリチウム化合物の生産に使われている。上の記事に書かれているが生産量の約6割はアルベマール、ティエンチ、ガンフォンの3社によって引き受けられることになる。この3社はリチウム大手であり情報も開示しているので分かりやすい。

問題は残りの4割。これらは中国のコンバーターが引き受けることになるが、実際にどれくらいの量や質のリチウム化合物を生産できるのか不透明で分かりにくい。

Lithium’s price paradox というレポートによると2016年以降に中国では大手3社を除くとたった3つのプロジェクトしか生産にこぎつけていないそうだ。その他の多くのプロジェクトは遅延や停止によって実現していないとのこと。

同様の話はオロコブレのプレゼンテーションに掲載されているグラフを見ても分かる。2018年に実現した生産量は計画を大幅に下回っている。

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Lithium's price paradox によると各国で進行中のプロジェクトのを額面通り数え上げていくと2020年までに500Ktものキャパシティが追加されるそうだ。だが現実に実現するのはこの数字の40%以下になるだろうと指摘している。

 

リチウムの需給は以上のような事情もありなかなか分かりにくいところがある。

ただ、価格の下落が続いていること、昨年キャパシティを拡張したSQMが今年の販売量を絞って在庫を積み増していること、アルベマールが拡張計画を大幅に縮小したことなどを見ると、現時点でリチウムは供給過剰になっていると見ていいのではないかと思う。

 

リチウム株への投資 ②リチウムは需要のストーリー

アルベマールの資料によると2018年のリチウム需要は270kt(LCE)となっている。この需要が2025年に1,000ktにまで増えると予想している。

※LCEは Lithium Carbonate Equivalent。リチウム化合物には炭酸リチウム、水酸化リチウムなどいろいろあるが、最も需要の大きい炭酸リチウムに換算した値が標準的に使われている。

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しかしこの予想の前提となっているEVの市場シェアは2025年時点で15%に過ぎない。仮にシェアが30%、50%と増えればそれに沿ってさらに需要も増えていくだろう。EVが一般に普及した場合にはリチウム需要は現在の10倍以上になってもおかしくない。この需要増加がリチウム銘柄への投資の前提となる。

 

ただし単に需要が増加するだけではインパクトがやや薄い。リチウム自体は自然界に豊富に存在するため時間をかければ需要に見合う量を供給できるためだ。

たとえば(稼働中の)世界最大のリチウム資源はアタカマ湖だが、アルベマールとSQMの現在のアタカマからの生産キャパシティは年間100Ktを超えており2021年には両社の更なる拡張によって年間200Ktにも達する(あくまでも計画だが)。

アタカマ湖以外にも生産中・開発中のリチウム資源はたくさんあり、増産のタイミングによっては現在起きているような供給過剰の状態になってしまう。

したがって単に需要の増加だけでなくどれくらいの速さで需要が拡大するかというスピードも重要になると思う。

リチウムは資源開発から実際に化合物を生産するまでには数年以上の時間がかかる。よってリチウムの需要が予想を超えて急速に増加した場合は供給が間に合わなくなる。これがリチウム価格を上昇させ、生産量の拡大と合わせて大幅な投資リターンを生むのではないかと期待している。

 

それでは供給が追い付かなくなるような需要増加はいつ来るのか。

個人的にはEVがガソリン車のコストを下回ったとき、ガソリン車を買うよりEVを買う方が得だと誰もが思ったときに来るのではないかと思っている。

EVとガソリン車のコストを比較した記事はたびたび見かける。たとえばブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンスは電池価格の下落により2022年にEVがガソリン車のコストを逆転すると予想している。この予想時期は年々早まっているそうだ。

ただ実際問題としてそんなに差が縮まっているのかという気はする。

現時点でEV市場をけん引しているのはテスラのモデル3だが平均購入価格は5万ドルとかなり高い。しかもこの価格で売ってもテスラは赤字を出している。テスラは今年に入って35,000ドルというスタンダードレンジの発売も開始したが、現状ではその価格で売って利益が出せる車ではなさそうだ。

モデル3は自動運転などの付加価値が大きいので比較としては適当でないかもしれないが、いずれにせよガソリン車と比較してお買い得感を感じるようなEVが出ないと一般に普及するのは難しいのではないだろうか。

そんなわけで個人的にはここしばらくは供給の増加をはるかに上回るようなリチウムの爆発的な需要は起こらないのではないかと思っている。

 

リチウム株への投資 ①なぜリチウムか

リチウム株へ投資を始めてから2年以上が経つが最初の半年を除いてうまくいっていない。

ただ、いろいろ記事を読んだことで多少なりとも知識はついてきた。ここらへんでまとめがてら何本か記事を書いてみる。

 

まずはリチウムに注目した理由。

これは電気自動車の時代が来るのではないかと思ったから。電気自動車は燃費が良くメンテナンス費用も安い。車体価格さえ十分に下がれば一気に普及する時代が来るのではないかと思った。

ただ、実際に関連銘柄を調べてみるとなかなか良い銘柄が見つからなかった。

電気自動車というとテスラやBYDが有名だがテスラは赤字のわりに時価総額が高すぎた。BYDは受託製造部門が大きいうえガソリン車の比率の方が高かった(今年はEVが上回る見込み)。

では心臓部となるリチウムイオン電池はどうかというと、パナソニック、LG化学、サムスンSDIといった大手はいずれもリチウムイオン電池専業の会社ではない。これは電池材料も同じ。電池材料では日本企業が高いシェアを持っているのだが、旭化成、日立化成、宇部興産、三菱ケミカルなどいずれも総合化学の会社になってしまう。リチウムイオン電池の伸びが業績に与えるインパクトが低そうに思えた。

 

そんなわけでさらに川上のリチウムイオン電池の素材金属に行き着く。

リチウムイオン電池の伸びにより需要が増加する金属にはリチウムの他にコバルト、ニッケル、グラファイト、レアアースがある。ただ、投資対象としてはそれぞれ問題がある。

・コバルトは将来的に使用を減らす方向にある。また、大部分が銅やニッケルの副産物として生産されるためコバルト専業の会社がほとんどない。

・ニッケルはコバルトとは逆に使用量の増加が予想されているが、需要全体に占める比率はステンレス生産向けが大きくリチウムイオン電池向けは少ない。また、ニッケルを生産している会社の多くは資源メジャーでニッケル専業の会社は少ない。

・グラファイトは将来的にシリコン系に置き換わるリスクがある。また、市場では天然グラファイトと人工グラファイトが競っているうえ、一つの鉱山から生産される量が莫大なためうまくいった場合でも勝者が限られる。

・レアアースは使用を減らしていく動きがある。また、中国が市場を支配しているため実態がつかみにくい。

リチウムはこれらの素材に比べると安定した需要増加が見込めるのが良いと思った。投資対象もすでに生産をしている大手からこれから生産を開始する新興企業までバラエティに富んでいる。

 

6175 ネットマーケティング 2019年6月期4Q決算

マッチングアプリのOmiaiとネット広告代理店。

 

通期実績は売上高+25%の増収、経常利益-26%の減益だった。

売上高は期首予想をわずかに下振れたが経常利益は13%上振れした。3Q時点での経常利益の進捗率が37%だったので下方修正もあるかと思っていたが4Qにしっかり利益を載せてきた。

セグメント別では広告事業が売上高+22%の増収、セグメント利益+39%の増益と好調だった。広告事業はアフィリエイトに特化した代理店とのこと。

メディア事業は売上高+35%の増収、セグメント利益-71%の減益。減益は先行投資によるもの。

Omiaiの有料会員数は76,801人で前年比44%増加した。全四半期比でも11%の増加となる。2Qに前期比1%の増加まで落ちていたが再加速している。

 

今期の会社予想は売上高+16%の増収、経常利益+93%の増益。

同時に新しい中期経営計画も発表している。QooN撤退の影響から売上高が下方修正されたが、営業利益は(実績)421百万円→(今期)812百万円→(来期)1,200百万円で以前の計画と変更はない。

PERは今期が14倍、来期は10倍を割るレベルになる。成長率からすると安いと思う。

 

ALB アルベマール 2019年2Q決算

リチウム最大手の一角。チリのアタカマ湖とオーストラリアのグリーンブッシュ鉱山(持分49%)からリチウム化合物を生産している会社。アタカマ湖とグリーンブッシュ鉱山はかん水系と鉱石系でベストの資産。

昨年7月にはミネラルリソーシズからオーストラリアの Wodgina 鉱山の50%の権益を買収した。この鉱山も最大クラスの資源量を誇る。

 

2Qの売上高は4%の増収、営業利益は-52%の減益、調整EBITDAは1%の増益だった。

営業利益の大幅減益は前年にビジネスの売却があったため。それを除くと営業利益の大きな落ち込みはない。

希薄化EPSは1.45ドル、調整EPSは1.55ドル。今期のEPSガイダンスは6.25~6.65ドル。

決算翌日に株価は大きく上げた。株価73ドルで今期PERは11~12倍くらいになる。

 

リチウムセグメントを見ると2Qの売上高は2%増収だった。数量が3%、価格が2%の貢献。

調整EBITDAは前年比で変わらず。EBITDAマージンは44%と高水準を維持している。

リチウムセグメントは全体の売上高の37%、調整EBITDAの54%を占める。

下半期のリチウム数量は中国のXinyuⅡの貢献もあり15,000~20,000トン増加するとのこと。XinyuⅡのキャパシティは水酸化リチウム20,000トン。年末までにフル生産に達する。

下半期の販売価格は横ばいかやや下落を想定する。2019年通期では横ばいかわずかな上昇となる。なおアルベマールは長期契約が主体なのでマーケットの価格変動の影響は少ない。

 

決算と同時にキャパシティ拡張計画の大幅な削減を発表した。従来の325,000~350,000トンLCEが新計画では225,000トンLCE(ミネラルリソーシズの持ち分40,000トンを含む)となる。かなりのインパクト。

これに伴って資本投資の金額は1.5Bドルの減少となり、フリーキャッシュフローは2021年にプラス転換する。

・従来の計画

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・新計画

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その他のメモ

・ミネラルリソーシズとのジョイントベンチャーの出資比率を60%に引き上げる。オーストラリアで建設中のKemertonのプラント(水酸化リチウム50,000トン)も60%の持ち分となる。プラントは2021年の上半期に稼働の予定。

・チリのLa Negraでは40,000トン近い炭酸リチウムを生産する。さらにキャパシティ40,000トンのLa NegraⅢ・Ⅳの拡張が2021年1Qに完了する予定。ただし品質検査のプロセスなどもあるため2021年の販売量の大きな増加は予想しない。

・炭酸リチウムの価格下落はしばらくは続く見込み。

・需要は強いことに変わりない。水酸化リチウムは予想よりも強いかもしれない。

・供給面ではいくつかのプロジェクトに遅れが出ている。また現在の市場環境では運営の難しいプロジェクトも出てくる。在庫は減少していると考える。2020年は需給が引き締まるのではないか。

・今後数年で811(ニッケルメインの正極材で水酸化リチウムを使用する)がEVの主要になるとは考えていない。技術的な難しさがある。

 

アルベマールはリチウム以外のビジネスが半分を占めていること、長期契約を基本にしていることからリチウムの価格変動の影響を受けにくい。同業他社が軒並み業績悪化している中でもほとんど利益が落ちていない。逆に言えばリチウム価格が上昇しても恩恵を受けにくい銘柄ともいえそう。

 

LTHM ライベント 2019年2Q決算

アルゼンチンのオンブレ・ムエルト湖からリチウム化合物を生産している会社。

炭酸リチウムの生産コストは最低クラス。戦略的にハイエンドの水酸化リチウムに注力している。

 

2Qの売上高は+6%の増収。数量が+21%、価格が-13%、為替が-2%の寄与。

営業利益は-58%の減益、調整EBITDAは-41%の減益。

EPSは0.11ドル。通期のガイダンスは0.56~0.66ドル。株価は6.76ドルなので今期PERは10~12倍くらいになる。

ガイダンスで4Qの業績改善が示されたことから株価は急騰した。といってもここ1か月の下落を戻した程度。

業績改善は数量の増加による。下半期は上半期に比べて30%の増加を見込む。数量の増加は季節性と大雨の影響がなくなることなど。

 

その他のメモ

・下半期の炭酸リチウム・水酸化リチウム価格はともに下落するとの見通し。

・2Qの水酸化リチウムの販売量は前年比50%の増加。中国で3本目のラインが稼働してキャパシティは年間13,000トンに増加。

・アルゼンチンでは年間40,000トンへの増産プロジェクトが進行中。2020年末までに最初の9,500トンの拡張が完了する予定。(現在のキャパシティは年間20,000トン前後だったと思う)

・リチウムの需要は6か月前に予想した以上に良い。

・上半期のEV販売は前年比45%ほどの増加。中国は60%以上増加した。バッテリー容量では150%以上の増加となる。

・上半期の世界の水酸化リチウムの需要は50,000トン程度で前年比2倍。2019年の水酸化リチウムの需要は100,000~110,000トンになると予想する。前年比55~71%の増加。

・上半期の中国では811やNCAの正極材(水酸化リチウムを使用)の割合は10%程度と見る。1Qから2Qに25%増加した。ニッケル主体の正極材への移行はより早く急激に起こるのではと感じている。

・オーストラリアのスポジュメン生産のキャパシティはさらに増加。供給過剰と過剰在庫がある。この在庫が解消されないとリチウム製品の価格低迷は解消しないだろう。

・中国のスポジュメン精鉱コンバーターのコストは8,000~9,000ドル/トンとのこと。

 

7419 ノジマ 2020年3月期1Q決算

売上高11%の増収、経常利益15%の増益、EBITDA25%の増益だった。

中間予想の経常利益は7%の増益なので進捗は良さそう。

 

セグメント別に見ると、主力のデジタル家電専門店運営事業が8%増収、18%増益と好調だった。決算短信の説明は以下のとおり。

「デジタル家電専門店運営事業においては、エアコン、冷蔵庫、洗濯機、PC本体等が好調に推移いたしました。
また、当社の強みであるお客様に寄り添ったコンサルティングセールスがお客様のニーズに合致し、新商品や白物家電の比率が向上し、売上総利益が伸長いたしました。」

デジタル家電専門店5店舗を新規出店、2店舗を閉店し178店舗となっている。

インターネット事業は減収だが利益は37%伸びた。

キャリアショップ運営事業は6%の減収だが利益は横を維持した。

買収した海外事業は赤字だが赤字額は少ない。

 

今期PERは7倍を下回るくらい。この会社はのれんが大きい。のれん償却前純利益を使うとPERは4.5倍程度と非常に安くなる。

 

株主還元が良さそうな大企業 通信株

REITの利回りが低くなってきたので代わりに株主還元の良さそうな銘柄を探してみる。

まずは業績安定かつ高配当の通信株。

 

・NTTドコモ

予想PER15.2倍、予想配当利回り4.5%。

自社株買いも行っており過去5年間の発行済み株式数は継続的に減少している。「取得した自己株式については、保持の必要性を勘案しつつ、全て消却することを検討していきます。」とのこと。

配当と自社株買いを合計すると7%を超えそうな勢いだが、PERが15倍と高いため利回り向上には限界がありそう。

携帯料金の値下げから目先の業績悪化が見込まれているのがマイナス。

  EPS DPS 配当性向 株式数
2011年3月 118.0 52 44% -0.3%
2012年3月 111.9 56 50% -0.3%
2013年3月 119.5 60 50% 0.0%
2014年3月 112.1 60 54% 0.0%
2015年3月 101.6 65 64% -2.6%
2016年3月 141.3 70 50% -3.9%
2017年3月 175.1 80 46% -4.0%
2018年3月 201.7 100 50% -1.0%
2019年3月 187.8 110 59% -4.3%
2020年3月 174.1 120 69%  

※株式数は純利益÷EPSで株式数を逆算してそれを前年比較した。

 

・KDDI

予想PER11.1倍、予想配当利回り3.6%。

自社株買いも行っておりここ3年は発行済み株式数が毎年1.5%前後減少している。

中期経営計画では、配当性向40%超、機動的な自己株買い、全ての自己株式を消却を株主還元に挙げている。

株主還元は決して悪くないのだが、NTTドコモやソフトバンクには及ばないかなという印象。

  EPS DPS 配当性向 株式数
2011年3月 79.6 21.7 27% -1.5%
2012年3月 96.9 23.3 24% -6.4%
2013年3月 96.9 26.7 28% -6.9%
2014年3月 105.3 30.0 28% 5.7%
2015年3月 132.9 43.3 33% 3.3%
2016年3月 170.8 56.7 33% -0.1%
2017年3月 197.6 70.0 35% -1.5%
2018年3月 221.7 85.0 38% -1.4%
2019年3月 235.5 90.0 38% -1.9%
2020年3月 259.1 105.0 41%  

 

・ソフトバンク 

予想PER15.1倍、予想配当利回り5.7%。

配当性向85%程度を目標に掲げており配当利回りは携帯3社のうちで最も高い。

ただ、ドコモやKDDIに比べると借入金が大きい。営業利益や営業CFの3~4年分ではあるが。

 

・NTT

傘下のNTTドコモとNTTデータが上場している。

その他に地域通信事業(フレッツ光など)と長距離・国際通信事業を行っている。移動通信事業の1兆円の利益におよばないが、地域通信事業の利益は3,607億円、長距離・国際通信事業の利益は1,001億円ある。

業績は安定しておりリーマンショックでも大きな落ち込みはない。成長率は高くないものの意外なことにここ数年で利益を4~5割増やしている。地域通信事業が利益をけん引した。

予想PER9倍、予想配当利回り3.7%。

継続的な自社株買いを行っており今年も去年並みの2,500億円の取得を計画している。配当+自社株買いの総合利回りは6%を超えそう。

  EPS DPS 配当性向 株式数
2011年3月 192.6 60 31% 0.0%
2012年3月 183.3 70 38% -3.6%
2013年3月 216.2 80 37% -5.0%
2014年3月 254.6 85 33% -5.1%
2015年3月 236.9 90 38% -4.9%
2016年3月 350.3 110 31% -3.7%
2017年3月 390.9 120 31% -2.8%
2018年3月 455.8 150 33% -2.5%
2019年3月 440.3 180 41% -2.7%
2020年3月 453.2 190 42%  

 

通信株は業績が安定しているのが良いと思う。ただ、携帯料金の値下げによる目先の業績悪化が不安点。

個人的にはNTTが面白そうだと思ったが、地域通信事業の利益は横ばいになっているしNTTドコモの減益が見込まれているのが残念。

 

3496 アズーム 2019年9月期3Q決算

駐車場サブリースと月極駐車場のポータルサイト。サブリースの売上が9割近い。

サブリースは駐車場の空き区画をオーナーから借り上げ自社のポータルサイトなどを通じて獲得したユーザーに貸し出すという事業。

 

3Qは前年比で売上高46%の増収、経常利益42%の減益だった。

決算と同時に通期の売上高を-5%、経常利益を-61%下方修正している。

下方修正の理由は以下のとおり。

・駐車場問い合わせ増加に対応するため2Qまでに営業人員を積極採用したが、社内教育体制の不備から売上高が伸びなかった。

・売上高の下振れを取り戻すため教育体制を整備したうえ3Qも新規採用を進めたが、採用が3Q後半に集中したため売上高の貢献が当初の想定を下回った。

 

カーパーキングへの問い合わせ件数は計画通りで、サブリースの稼働率も順調に向上しているとのこと。ただ、前期の決算説明資料を見ると目視だが今期の問い合わせ件数は30%以上の増加となっているので、3Qまでの24%増加という数字は想定を下回っている気もする。

マスターリース台数やサブリース台数は右上がりに伸びている。計画に対する進捗はやや悪く見えるが前年と前前年は4Qに大きく伸びているのでいまのところ不調とも言えないと思う。

 

決算を受けて株価は20%近く下げた。時価総額は3,731百万円で今期PSRは1.3倍くらいになる。

会社が発表している中期目標によると来期は売上高44億円・営業利益5.6億円、再来期は売上高65億円・営業利益11億円。これが達成できれば来期PERは10倍程度になる。売上高が5割伸びている会社としては非常に割安感がある。

ビジネスモデルについてはシェアードリサーチが詳しいレポートを書いている。

遊休駐車場の活用というのは面白そうだし、ストック型の収益というのも魅力だと思う。ただ、新規上場で規模が小さいだけに計画通りに成長が続くかはよく分からないと感じた。

 

8699 澤田ホールディングス 2020年3月期1Q決算

モンゴルのハーン銀行を主力とする会社。

1Qは売上高12%の増収、経常利益5%の減益、純利益41%の増益だった。

主力の銀行関連事業は小幅だが増収増益を確保した。証券関連事業と債権管理回収関連事業は減益、IT関連事業の赤字は縮小。

有価証券売却益があったため純利益は大幅の増益。

 

同時に出ているハーン銀行の4~6月期(澤田の2Qに計上される)の純利益は前年比で5%の減益だった。ただ、融資残高と預金残高は20%以上の伸び率となっている。

 

澤田HDは業績予想を出していない。四季報の予想純利益を使うと今期PERは5.8倍になる。実績PERだと6.1倍。数字的には割安感がある。

 

会社の今後の業績はモンゴル経済次第だと思う。モンゴル経済は2016年に底打ちして回復を続けている。2019年1Qの実質GDP成長率も8.6%と好調だった。IMFは今年の経済成長率を6.3%以上と予想している。

ただ、足元では石炭価格が下がっているし、銅価格も2018年に下がったのち横ばい状態になっている。モンゴルは鉱業部門の比率が高いので資源価格が低迷しているのは不安要素だと思う。