アルベマール決算
3Qは売上+3%の増収、営業利益+11%の増益、調整EBITDA+12%の増益でした。
調整希薄化EPSは1.31ドル、過去4四半期のEPSを使った実績PERは20倍くらいになります。YahooFinanceのアナリスト予想のEPSを使った今期PERは17.8倍、来期PERは15.7倍です。
リチウムセグメントは売上高+1%の増収、調整EBITDA-1%の減益でした。売上への貢献は価格が+6%、数量が-5%です。
リチウム価格は2Q比でフラットで2019年も下落は予想していないとのことです。
数量の減少はハリケーンや停電や環境調査のための予期せぬ操業停止が原因とのことです。
会社の発表しているリチウム生産の拡張計画は下のグラフのとおりです。
アルベマールに関してはいくつかニュースが出ています。
・UPDATE 2-Albemarle freezes Chile expansion plans in wake of lithium tech scrutiny
チリの拡張プラン(La Negra Ⅴ&Ⅵ。上のグラフ右上の斜線部分)をストップしました。経営陣は需要が高まっている水酸化リチウムに対応するためと言っていますが、報道によるとアルベマールが主張する新技術について疑問がもたれているようです。
アルベマールは新技術を使うことでアタカマ湖から追加の水を汲み上げることなしに生産量を増やせると主張していますが、これについての十分な証拠を提供していないそうです。
La Negra Ⅴ&Ⅵ が稼働すると現在認可されている80Ktの生産量を超えるため新たな許可が必要になりますが、詳細を提供しないと申請が却下されてしまう恐れもあるとの話です。
アタカマ湖は過剰採水による環境問題が指摘されています。
・Chile to file arbitration suit against lithium miner Albemarle by Dec. 15
Corfo がアルベマールに訴訟を起こすとのニュースです。
アルベマールはアタカマ湖からの生産物の~25%をチリのバッテリー素材メーカーに割引価格で販売する契約を結んでいますが、これに違反しているとの話です。
アタカマを巡る契約や紛争については Drama in the Atacama: A Lithium Telenovela が詳しかったです。
・Mineral Resources signs $1.1B lithium deal with Albemarle
ミネラルリソーシズの持つ Wodgina の50%を11.5億ドルで取得することを発表しました。
ミネラルリソーシズの資料によると Wodgina の資源量は259.2Mt@1.17%です。鉱石系でトップクラスの大きさです。
Wodgina はすでに鉱石の輸出を開始しており、現在はキャパシティ750Kt@6%のスポジュメン濃縮施設を建設中とのことです。また、将来的には水酸化リチウムプラント(ステージ1が50kt、ステージ2が100Kt)も建設する計画です。
SQM決算
3Qは売上高-3%の減収、純利益-26%の減益でした。
リチウムの販売数量が前年比で27%減少したことからリチウム部門の売上高は-9%の減収となっています。
数量の落ち込みはキャパシティ拡大のために既存プラントを改修しているのが原因ですが、下半期は上半期比で50%増加という話だったので大きな下振れとなります。今年の販売数量は45Ktの見込みです。
一方で炭酸リチウム価格は2Q比横ばいの16,500ドルで4Qもこの水準が続くそうです。こちらは下期に弱含むという見通しからの上方修正になります。需要が強い一方で複数プロジェクトが遅れているとのことです。
過去4四半期のEPSを使った実績PERは25.4倍です。YahooFinanceのアナリスト予想を使った今期PERは23.1倍、来期PERは19.4倍になります。
今年のリチウム市場の動向
・供給過剰によるリチウム価格の下落が心配されていたが今年に関しては杞憂に終わった。
・中国のスポット価格は暴落しているが国際価格は影響を受けていない。中国のスポット価格は補助金政策の変更などの国内事情に反応していた可能性が高そう。
・需要は引き続き強い。昨年からのSQMの年間需要の予想は14%→17%→20%→25%とコンスタントに上方修正されている。
・供給は複数プロジェクトの遅れから伸びていない。かん水系は思うように増産できていないし、オーストラリアの鉱石プロジェクトのピルバラやアルチュラは事前のアナウンスより生産開始が遅れている。
・ニッケルメインの正極材の増加により水酸化リチウムの需要が大きくなっている。
・水酸化リチウムの需要増加に伴って鉱石系のリチウム資源の開発が活発になっている。かん水系は生産も増産も時間がかかるうえ、水酸化リチウムに関してはコスト面の優位性も炭酸リチウムほどではないとのこと。また、かん水系のリチウム資源はチリやアルゼンチンといった新興国に分布している一方で、鉱石系のリチウム資源はオーストラリアやカナダといった先進国で開発可能というのも大きそう。