ライベントとガンフォンリチウム

リチウム大手の2社がニューヨークと香港に上場しました。ライベントはFMCからのスピンオフ、ガンフォンリチウムはA株とH株の重複上場です。

 

Livent(LTHM)

元FMCのリチウム部門です。FMC時代から20年以上もリチウムの生産を続けています。現在の生産量はSQMやアルベマールに後れを取っていますが、かつては2社と並ぶビッグ3の一角と見なされていました。

SQMやアルベマールはリチウム以外のセグメントが半分前後を占めているため、実績のある純粋リチウム銘柄はこの会社がアメリカ市場で初となります。

 

ライベントのリチウムはアルゼンチンの Hombre Muerto 湖から生産されます。リチウム製品の生産拠点は4か国7か所とのことです。 

生産量は2017年が18.5Ktでした。会社の計画では2025年に水酸化リチウムの生産キャパシティを55Ktに、炭酸リチウムの生産キャパシティを60Ktに増加させる予定です。※塩湖から水酸化リチウムを生産するには炭酸リチウム(ライベントはベースリチウムと記しています)を経ます。なので、Hombre Muerto から55Kt+60Kt=115Ktのリチウム製品を生産するわけではないと思います。

Hombre Muerto の炭酸リチウムの生産コストは業界で最も低いそうです。

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2018年上半期の業績は売上が+51%増加の210百万ドルでした。価格上昇が+23%、数量の増加が+26%、為替が+2%の貢献とのことです。

純利益は+154%増加の70.2百万ドルです。利益率は33%もあり非常に高収益です。

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バランスシートはキャッシュが1.5百万ドル、有利子負債がゼロです。

2019年の資本的支出は250百万ドルの計画です。

2025年までの投資額ですが、炭酸リチウムのキャパシティを60Ktに増加させるのに525~600百万ドル、水酸化リチウムのキャパシティを55Ktに増加させるのに80~170百万ドルが必要になるそうです。

 

現在の株価は16.23ドルで時価総額は2.3十億ドルです。仮に上半期の利益を2倍すると140百万ドルで予想PERは16.6倍です。

ライベントのプラス点は実績がありすでに高収益を実現していることと、数量増加による大きな成長が見込めるところかなと思います。マイナス点は下半期にリチウム価格の下落が予想されているのと、今後の供給過剰懸念でしょう。

 

ライベントについてはもう少し詳しい記事を書きました。

 

ガンフォンリチウム(1772.HK)

中国のリチウム大手です。リチウム資源の採掘からバッテリーやリサイクルまで手掛けています。セグメントの売上と粗利益はリチウム化合物と金属がほとんどでバッテリーとリサイクルはわずかです。

会社によると2017年のリチウム鉱物と製品の売上高は世界で4位です。炭酸リチウムの生産キャパシティは4位で10%のシェア、水酸化リチウムは3位で11%のシェアとのことです。

 

ガンフォンの持つ上流のプロジェクトは下のとおりです。

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現在はミネラルリソーシズやネオメタルズとのジョイントプロジェクトのマウントマリオンが主力です。マウントマリオンの生産キャパシティと生産数量は鉱石系で世界2位とのことです。ガンフォンはこの鉱山の生産量の100%を購入しています(2020年以降は他の2社が51%まで購入できるオプションがあるそうです)。

生産中の他の2つのプロジェクトですが、Ningdu Heyuan はかなり小規模、Pilangoora はガンフォンの持分が少ないです。

開発中のプロジェクトではリチウムアメリカズの Cauchari-Olaroz がメインになりそうです。ガンフェンはプロジェクトの37.5%を持つほか、リチウム・アメリカズの16.9%を持つ筆頭株主です。

Mariana は資源量1.9Mtと塩湖としてはやや小さめのサイズ、Avalonia は開発の初期段階とのことです。

 

自社の権益からのリチウム購入量とサードパーティからの購入量は下のとおりです。2017年はマウントマリオンが稼働したことで自らの供給が35.3Ktまで急増しています。

なお、炭酸リチウムと水酸化リチウムの生産キャパシティは2018年に57.1Ktまで拡大するとのことです。

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業績は過去3年を見るとすごい伸びです。売上は3倍以上、純利益は10倍近くまで増えています。

2018年1Qも+67%の大幅な増収でした。純利益はその他の収入・利益(主に金融資産やデリバティブの評価益)が減ったことから減益ですが、粗利益段階では2倍以上の増益です。

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バランスシートは、キャッシュ1.2十億RMBに対して、有利子負債2十億RMBです。

 

株価は初日に28%暴落しましたが、金曜日に10%戻しました。時価総額は21十億HKDで、上半期の純利益×2倍を使うと予想PERは12~13倍程度になります。

成長率が非常に高くPERはやや割安といった感じですが、足元で中国のリチウム価格が暴落しているのが不安材料です。会社によると18年1Qの炭酸リチウムの販売価格は136,276RMB/トン(19,076ドル)でしたが、現在の中国の炭酸リチウム価格は11,000ドル程度まで落ちています。下半期は利益が急減する可能性があるので少し様子を見たほうが良いのではと思います。

 

ガンフォンについての記事です。