ケネス・フレンチ教授のデータを使って最近の日本株の投資ファクターの成績をチェックしてみます。
まずは2009年6月を起点とした各ファクターのロング・ショートの累積リターンのグラフです(2009年上半期はモメンタムのリターンが極端に悪くて見にくいため09年6月を起点にします)。
2018年はこれまで好調だったサイズのリターンが横ばいです。モメンタム、投資、バリューのリターンはマイナス、好調なのは収益性だけです。
リターンが特に悪いのはバリューで、8月までの前年末比は-10.7%という成績です。バリューはここ10年ほぼ機能していません。
次に25ポートフォリオ(サイズ5グループ×バリュー5グループ)の2018年のリターンです。
1(割高) | 2 | 3 | 4 | 5(割安) | |
1(小型) | 2.9% | -1.4% | 1.9% | -0.5% | -4.6% |
2 | 9.2% | -3.4% | -6.6% | -7.6% | -10.4% |
3 | 1.2% | 5.3% | -5.2% | -3.4% | -5.6% |
4 | 1.5% | -2.0% | -6.1% | -6.3% | -5.0% |
5(大型) | 3.2% | 0.9% | -3.0% | -5.2% | -6.5% |
割高グループ(左列)と割安グループ(右列)を比べると、最も割高なグループのリターンが最も良い一方で、割安になるほどリターンが落ちています。バリューファクターはまったくダメです。
サイズに関しては明確な傾向はないようです。
アメリカの成績も見てみます。日本株と同じく09年のモメンタムクラッシュの影響を除くため09年9月をスタートにしています。
各ファクターリターンは強い時期と弱い時期がありますが、全体としてみるとモメンタムが有効な一方でバリューが弱いです。
2018年もモメンタムが+12%のリターンなのに対して、バリューは-11%と低迷しています。
アメリカ市場に関してはPBR(標準的なバリューファクター)以外にもPER・PCFR・配当利回りのデータが公開されています。
この期間ではPBRとPCFRの成績が一番悪いのですが、ややましなPERや配当利回りも累積リターンはマイナスです。バリュー指標は全面的に機能していないということでしょう。
感想
今年はバリューに加えてサイズの優位性も消えているため、小型バリュー株を好む投資家にとっては厳しい環境になっています。
特にバリュー株の低迷は深刻です。僕が株を始めたころはバリュー投資こそが投資の王道という感じだったのですが、いまはグロース株投資が一世を風靡しています。
このバリュー株のアンダーパフォーマンスはもう10年も続いています。過去を振り返れば特定のファクターが10年くらい低迷するのは珍しくないとなるのでしょうが、現実問題として10年間も負けている投資法を使い続けるのは難しいと思います。
ファクター投資をするのであれば、単一のファクターではなく複数のファクターを組み込んだマルチファクターを使った方が良いと思います。