ゾーン 最終章

 マーク・ダグラスとポーラ・T・ウエッブの「ゾーン 最終章」を読みました。

ゾーン 最終章──トレーダーで成功するためのマーク・ダグラスからの最後のアドバイス (ウィザードブックシリーズ)

ゾーン 最終章──トレーダーで成功するためのマーク・ダグラスからの最後のアドバイス (ウィザードブックシリーズ)

  • 作者: マーク・ダグラス,ポーラ・T・ウエッブ
  • 出版社/メーカー: パンローリング
  • 発売日: 2017/08/12
  • メディア: 単行本
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マーク・ダグラスの「ゾーン」はトレーディングの心理面を解説した有名な本です。この本は続編っぽい題名ですが、マーク・ダグラスが亡くなった後にビジネスパートナーでもあった奥さんが彼の原稿をまとめて電子出版した本だそうです。

前著との比較ですが、「ゾーン」が極端に読みにくい本(文章に癖があるうえ「フォース」のような独特な用語も使われています)だったのに比べて、この本は読みやすい文章で書かれていました。また、前著に頻繁に登場した「流れ」のようなオカルトっぽい部分も少なくなっており、より受け入れやすくなっていると感じました。

一方で主な内容自体はそれほど変わっていないので、初めて「ゾーン」を読むのであればこちらの方が取っつきやすいと思います。

 

本書で最も重点的に解説しているのは、分析によって有利な手法を見つけることはできても個々の取引で勝つか負けるかは分からないという確率的な考え方です。以下のような話が全体の6~7割にわたって繰り返されています。

私たちには個人で相場を動かすほどの力もないし、相場を動かすすべての力を知ることもできない。

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よってトレードが絶対にうまくいくという保証を得ることはできない。

分析によって勝つ可能性の高いパターンを見つけることはできるが、個々の取引の結果はランダムであり損失のリスクを無くすことはできない。

この確率に基づく見方を受け入れることで、どんな結果が出てもそれを受け入れることができるようになる。トレードで発生する損失は必要不可欠な経費であり自分の間違いとは考えなくなる。損失に対する苦痛や不安が無くなる。

マイナスの感情から自由になることで自分のシステムに従って正確にトレードすることができるようになり、一貫した成績を残せるようになる。

逆に自分は何が起こるかわかっている、分析によって確実に勝つことができる、すべての予測が正しくなくてはならないといった信念で取引している限り、エッジのあるシステムを持っていてもそれを活かすのは難しい。

 

これ以外には、確率的考え方を身につけるための実践方法、機械的トレードの先にある主観的トレード(裁量手法)と直感的トレードなどについて書かれています。

主観的トレードについては、その場にある情報を最大限に利用できる柔軟性があるため全体として見れば機械的トレードよりも良い結果を生み出すことができるとのことです。この裁量トレードにおいては精神状態が重要であるという話が書かれています。

直観的トレードについては解説がほとんどないため主観的トレードとの違いがいまいちわかりませんでした。著者によると「相場の集合的な意識に同期したトレーダーは値動き方向の変化を予想できる。それはまるで群れの真ん中にいる鳥か魚のようだ。」とのことですが、ややオカルトチックです。ただ、トレードで勝つのに直感的トレードは特に必要ないとのことです。

 

この本は基本的にトレーダー向けなので、期待値のあいまいなファンダメンタル投資家にそのまま適用できる話ではないかもしれません。

ただ、メインで解説されている確率的な考え方はどんな投資家にとっても役立つと思います。前半から中盤にかけてずっとこの話が続くので少しくどい気もしますが。。

とはいえ著者も書いているように頭で理解するのと実際に信念になるのは大きな違いがあるので、この本のようにじっくり説明してくれた方が良いのかもしれません。