鉱石系のリチウム銘柄 その2

前回はすでに生産を開始している銘柄を見ましたが、今回は生産までの見込みの立っている会社のメモです。

 

鉱石系のプロジェクトの一覧はこちらです。

各数字は会社のHPやプレゼンテーション資料から拾っています。最低でも資源量が発表されているプロジェクトを選びました。

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 Altura Mining

オーストラリアの Pilgangoora プロジェクトを持ちます。資源量は50.5Mt@1.01%(Li2O)と中規模です。生産・販売開始は2018年の2Qの予定です。

 

直近のIR資料によるとプロジェクトの計画数字は下の通りです。

・年間生産量は220Mt(6%Li2O)。炭酸リチウム換算で約30Kt。

・生産コストは320AUドル/トン

・EBITDAは販売価格550ドルであれば82百万AUドル、販売価格950ドルであれば196百万AUドル。現在の他社の販売価格は800~900ドルくらい。

・生産寿命は20年。

・生産量を440Mtまで拡張する計画あり。

オフテイク契約は Shaanxi J&R Optimum Energy や Lionergy と結んでおり、ステージ1の生産量のすべての販売先を確保しています。前者は中国のバッテリー大手でアルトラの筆頭株主です。

バランスシートは短期借入15百万ドルに対して、キャッシュが13百万ドルあります。

 

上の数字を使って、販売価格850USドル、生産コスト320AUドル、販売量220Kt、減価償却費・支払利息・その他40百万AUドル(ここはどれくらいかかるのか不明なのでギャラクシーを参考にします)、税率30%で計算すると税引後利益は94百万AUドルになります。

現在の時価総額が573百万AUドルなのでPERは6.1倍です。他の会社と比べて割安感があると思います。 

 

Pilbara Minerals

同じくオーストラリアの Pilgangoora プロジェクトを持つ会社です。資源量は213.3Mt@1.32%と鉱石系では最大級です。生産開始は2018年6月の予定です。

 

直近のIR資料によるとプロジェクトの計画数字は下の通りです。

・年間生産量は320Mt(6%Li2O)。炭酸リチウム換算で約44Kt。

・生産コストは277ドル/トン

・生産寿命は40年以上。

・生産量を440Mtまで拡張するステージ2のPFSが完了。DFSが進行中。

・PFSによるとステージ2の税後NPV10%は、鉱石の販売価格594ドルで2.1十億AUドル。年間生産量840Kt、生産コスト225ドル/トン、年間の予想EBITDA383百万AUドル、生産寿命17年、CAPEX207百万AUドル。

オフテイク契約は、ガンファン、ゼネラルリチウム、長城汽車、POSCOらと結んでいます。110Kt LCEを超える量で、ステージ2までの販売先を確保しています。

バランスシートには借入が125百万ドルに対してキャッシュが87百万ドル(+制限付き預金が134百万ドル)あります。

 

上の数字を使って、販売価格850ドル、生産コスト277ドル/トン、販売量320Kt、減価償却費・支払利息・その他50百万AUドル、税率30%で計算すると税引後利益は133百万ドルになります。

現在の時間総額が1.53十億AUドルなのでPERは11.6倍です。

また、ステージ2として販売価格850ドル、生産コスト225ドル/トン、販売量840Kt、減価償却費・支払利息・その他100百万AUドル、税率30%で計算すると税引後利益は411百万ドルになり、PERは3.7倍です。

資源量がかなり大きいためかアルトラよりもバリュエーションは高めです。

 

Nemaska Lithium

カナダの Whabouchi プロジェクトを持ちます。鉱石から炭酸リチウムや水酸化リチウムまでを生産する垂直統合のプロジェクトです。

資源量は44Mt@1.47%で、アルトラ・マイニングやクリティカル・エレメンツなどと並んで中規模クラスです。

 

アップデートされたFSによると税後NPV8%は2.4十億CAドルです。

前提条件は、年間生産量213Kt(6.25%Li2O)、販売価格は水酸化リチウム14,000ドル、炭酸リチウム12,000ドル(最初の5年は9,500ドル)、生産コストは水酸化リチウム3,655ドル、炭酸リチウム4,424ドル、生産寿命33年です。実現すれば水酸化リチウムの生産コストはかん水系も含めて最低になるそうです。ただし、CAPEXが801百万CAドルと高額です。

オフテイク契約は FMC、Johnson Matthey Battery Materials、ソフトバンク、Northvolt と交わしています。

高額な初期投資が問題でしたが、ソフトバンクからの出資や巨額の公募増資などで総額1.1十億CAドルの資金調達を完了しました。ただ、この過程で大幅な希薄化が起きたため株価も暴落しています。

 

現在の時価総額は727百万CAドルです。 

単純に(販売価格-生産コスト)×生産量でEBITDAを計算すると412百万ドルとなります。同じ条件で計算するとアルトラが174百万ドル、ピルバラステージ1が240百万ドル、ピルバラステージ2が687百万ドルなので、かなり大きな利益を見込んでいます。

ただ、プラント建設はこれからなので生産までまだ時間がかかりますし、本当に最低クラスの生産コストを実現できるかもよく分かりません。上の2社に比べるとやや不確定要素が大きいと思います。