PERがかなり低いうえ亜鉛や鉛価格が上昇していたのでほとんど調べず買ったのですが、株価は右下がりで今期の業績予想も減益でした。
資源価格は堅調なのになぜだろうと思ったので、遅まきながら少し調べてみました。
業績
2017年に大きく利益が伸びています。18年実績も増収増益でしたが、今期は減益予想です。
(億円) | 10/3 | 11/3 | 12/3 | 13/3 | 14/3 | 15/3 | 16/3 | 17/3 | 18/3 | 19/3 |
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売上高 | 836 | 1,036 | 1,059 | 1,037 | 1,186 | 1,211 | 1,141 | 1,140 | 1,336 | 1,370 |
経常利益 | 89 | 87 | 29 | 26 | 44 | 56 | 10 | 125 | 132 | 108 |
純利益 | 47 | 75 | 10 | -52 | 17 | 27 | -162 | 88 | 104 | 93 |
セグメント別の業績です。製錬、資源、電子材料、環境・リサイクル、その他の5つのセグメントがあります。
・売上高
(億円) | 10/3 | 11/3 | 12/3 | 13/3 | 14/3 | 15/3 | 16/3 | 17/3 | 18/3 |
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製錬 | 613 | 729 | 761 | 710 | 801 | 813 | 779 | 879 | 957 |
資源 | 37 | 61 | 110 | 141 | 189 | 182 | 133 | 257 | |
電子材料 | 64 | 81 | 70 | 64 | 68 | 70 | 62 | 59 | 62 |
環境・リサイクル | 42 | 48 | 29 | 43 | 49 | 60 | 47 | 45 | 54 |
その他 | 115 | 140 | 135 | 107 | 127 | 79 | 73 | 106 | 120 |
・利益
(億円) | 10/3 | 11/3 | 12/3 | 13/3 | 14/3 | 15/3 | 16/3 | 17/3 | 18/3 |
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製錬 | 60 | 57 | 11 | 15 | 43 | 51 | 18 | 83 | 33 |
資源 | -3 | -8 | -34 | -17 | -16 | -24 | 20 | 74 | |
電子材料 | 4 | 10 | 9 | 8 | 10 | 11 | 7 | 6 | 6 |
環境・リサイクル | 8 | 10 | 3 | 7 | 10 | 17 | 8 | 14 | 20 |
その他 | 13 | 15 | 15 | 11 | 11 | 7 | 8 | 8 | 9 |
調整 | -2 | -4 | -1 | -1 | 0 | -1 | -2 | -4 | -10 |
電子材料、環境・リサイクル、その他
この3つは製錬や資源に比べると重要度は低そうです。ただ、一貫して利益が出ているのは心強いです。
3つのセグメントのうち、ここ数年は環境・リサイクルの利益が大きくなっています。今期の決算短信によると「使用済みニカド電池の処理や硫酸リサイクルなど、その他のリサイクル事業については減収となったものの、主力製品の酸化亜鉛がタイヤメーカーの好調な操業もあり増販となりました。」とのことです。また、亜鉛価格の上昇の影響を受けているとも書いてあるので、亜鉛価格も業績を左右しそうです。
資源
資源部門は、2010年に関連会社だったCBHを子会社化したことでセグメントに登場しています。登場から2015年にかけて大きく売上が増えているのは2012年からラプス鉱山が操業を開始したためです。現在はエンデバーとラプス鉱山から亜鉛や鉛を採掘しています。
両鉱山の粗鉱生産量は今期計画では同レベルです。HPによるとプラント・設備のキャパシティはエンデバー1Mt超、ラスプ750Ktとあります。両鉱山ともに亜鉛と鉛の比率は2:1くらいです。
このセグメントの問題は、エンデバー鉱山の寿命が残り少ないことです。HPによるとの残りの埋蔵量(reserves)は2020年までは生産可能で、かつ周辺の探索も続けているとのことですがどこまで持つかは不明です。現在、会社の評価が割安なのはこの問題が大きいと思います。
なお、もうひとつのラスプ鉱山の採掘寿命は15年以上とのことです。
セグメントの業績ですが、おおむね鉱山の生産量と資源価格に連動しているようです。
下グラフは資源セグメントの利益と亜鉛・鉛価格の比較です。価格が大きく上がり始めた2017年から黒字転換しています。
次に資源セグメントの売上高と亜鉛・鉛の粗鉱生産量×価格の比較です。両者はだいたい連動しているように見えます。
資源セグメントの今期計画は以下の通りです。
・資源価格は亜鉛3,200ドル、鉛2,400ドル、銀17ドル、為替105円を想定。
・粗鉱生産はエンデバー697Kt(前期437Kt)で、ラスプ722Kt(前期703Kt)。
・資源セグメントの利益は81億円という予想。
現在の資源価格は亜鉛3,192ドル・鉛2,463ドルとおおむね予想値に一致しています。これより価格が上がれば、素直に業績も上振れするのではないでしょうか。
製錬
このセグメントの業績はちょっと分かりにくかったです。
まず亜鉛・鉛・銀の製錬生産量を見るとかなり安定しています。
2013年 | 2014年 | 2015年 | 2016年 | 2017年 | 2018年 | 2019年 | |
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亜鉛(千トン) | 108 | 115 | 99 | 100 | 98 | 101 | 115 |
鉛(千トン) | 88 | 91 | 87 | 91 | 91 | 93 | 93 |
銀(トン) | 354 | 363 | 401 | 411 | 419 | 336 | 320 |
ところが利益はブレが大きいうえ、単純に資源価格に連動しているわけでもなさそうです。
両者の乖離の理由のひとつとして在庫の評価損益があります。
2015年から決算説明会資料に収支の前期比較が掲載されているのですが、ここに書かれている在庫の評価損益で製錬のセグメント利益を調整すると多少はなだらかになります。
ただ、今期の精錬部門のセグメント利益は、亜鉛や鉛価格の多少の値上がりを前提としているにもかかわらず例年よりも大幅に低い10億円という数字です(ここ10年の精錬部門のセグメント利益の平均は38億円)。これは在庫の評価損益だけでは説明がつかないと思います。
在庫の評価損益の他に業績を左右する要因としては、原料鉱石の買取条件というのがありそうです。日経産業新聞にこんな記事も出ていたので、今期の計画が悪いのはこれが原因なのかもしれません。
東邦亜鉛の丸崎公康社長は8日の決算説明会で、2018年積みの亜鉛買鉱条件について、製錬側に「非常に厳しい」との見通しを示した。鉱山と製錬は例年2月に亜鉛鉱石の長期契約交渉を本格化するが、今期は双方の提示条件の開きが大きく、月内で決着しない様相という。鉱石の供給ひっ迫感が続く中、TC(溶錬費)や契約実収率をめぐるつばぜり合いが激しい。
有利子負債
有利子負債は約530億円です。一方で現預金は約130億円、棚卸資産は約400億円あります。
今期純益の約100億円からすると、いまの資源価格で推移するのであればそれほど悪い財務内容ではないかなと思います。 エンデバー鉱山の利益がなくなるとやや厳しくなりそうですが。
感想
今期の業績に限れば、精錬部門の予想利益がちょっと控えめに感じます(買鉱条件がどう決まるのかはよくわかりませんが、資源価格の見通しが悪くないにもかかわらず過去のセグメント利益の平均と比べても大幅に低いので)。資源部門も含めて亜鉛・鉛価格が上がれば業績も素直に上振れするのではないでしょうか。
ただ、問題はエンデバー鉱山の先行きが暗いことだと思います。エンデバー鉱山の業績へのインパクトは大きいので、この問題があるかぎり株価が大きく上がるのは難しいのではないかと感じました。