ファクター投資の米国市場での有効性

米国株の投資ファクターのリターンは、Kenneth French 教授のHP にて公開されています。

今回はこのデータを使ってファクター投資の有効性を見てみます。

 

ファクターリターン

まずは全体像を見るためにサイズ、バリュー、収益性、投資、モメンタムの5ファクターの累積リターンをグラフにしました。

期間はデータの揃っている1964年~2016年、いずれもロング・ショートの超過リターンです。

グラフを見るとモメンタム(WML)のリターンが際立っているとともに2009年の暴落が目を引きます。この暴落ですが、モメンタムファクターは株価底打ちからのリバーサル局面でショートサイドに莫大な損失が出てしまうことが原因です。

f:id:sapa21:20180222072448p:plain

※SMB(サイズ)、HML(バリュー)、RMW(収益性)、CMA(投資)、WML(モメンタム)

 

モメンタムを除いた4ファクターのリターンが下のグラフです。

すべてのファクターが右上がりのプラスリターンですが、個別に見ていくとそれぞれ長期にわたり低迷している時期があります。

サイズファクターは1984年~1998年まで、バリューファクターは2006年~2015年まで右下がりの損失となっており、収益性ファクターは1964年~1983年まで、投資ファクターは2003年~2015年まで横ばいで推移しています。

f:id:sapa21:20180222072506p:plain

 

10グループ別のファクターリターン

ロング・ショートはおおまかな傾向を見るのには良いのですが、現実世界ではほとんどの投資家がロングオンリーのため必ずしも参考になりません。

そこで各ファクターの10分位数グループ別の成績をグラフにしてみます。

ポートフォリオは時価総額ウェイトと均等ウェイトの2種類、期間は1927年~2016年、1964年~2016年、2003年~2016年の3種類です。

1964年を起点にしているのは収益性と投資ファクターのデータがこの年から始まっているからです。

2003年を起点にしているのは直近のリターンを知りたかったためです。2000年が起点だとITバブル崩壊の影響が強すぎる気がしたので2003年にしました。

 

サイズファクター

左の1が最小の時価総額グループで右の10が最大の時価総額グループです。

1927年と1964年を起点とした期間は、時価総額ウェイトも均等ウェイトもゆるやかなサイズ効果が見られます。

しかし、2003年~2016年の期間になるとサイズ効果はほぼなくなっています。

f:id:sapa21:20180222072811p:plain

f:id:sapa21:20180222072819p:plain

 

バリューファクター

左の1が最もPBRの高い割高なグループで、右の10が最もPBRの低い割安なグループです。

1927~2016年と1964~2016年の期間は比較的安定したバリュー効果が見られます。

2003年~2016年の期間は、時価総額ウェイトではバリュー効果がなくなっていますが、均等ウェイトでは最も割安と割高のグループにバリュー効果がやや見らるかなという感じです。

f:id:sapa21:20180222072900p:plain

f:id:sapa21:20180222072909p:plain

 

バリュー・ファクターとしてはPBRのほかにPERや配当利回りのデータも掲載されているのでそれもグラフにしてみます。

 

PERのデータは1952年からです。

1952年~2016年の期間はきれいな右上がりのグラフで、割安株ほどリターンが高くなっています。

一方で2003年~2016年の期間では、時価総額ウェイトは最も割安なグループのリターンが高くなっているものの、それ以外は平坦で明確な傾向がありません。均等ウェイトも平坦なグラフで割安株効果が見られません。

f:id:sapa21:20180222073605p:plain

f:id:sapa21:20180222073615p:plain

 

配当利回りは1928年からのデータです。

配当利回りとリターンにはどの期間を見ても直線的な関係は見られません。

配当利回りが最低のグループのリターンが悪い傾向があること、配当利回りがほどほどに高いグループのリターンがやや高めな傾向があることくらいでしょうか。明確な傾向ではありませんが。

f:id:sapa21:20180222073632p:plain

f:id:sapa21:20180222073646p:plain

 

モメンタム・ファクター

左の1が最もモメンタムが弱いグループのリターンで、右に行くほどモメンタムが強いグループとなります。

1927年~2016年と1964年~2016年の期間は、時価総額ウェイトも均等ウェイトも非常にきれいな右上がりのグラフになっています。数あるアノマリーの中で最も安定して機能しているとされるだけあります。

しかし、2003年~2016年の期間になると極端な敗者(1のグループ)が弱いのは同じですが、高モメンタムグループのリターンは大きく落ちてしまっています。

f:id:sapa21:20180222073751p:plain

f:id:sapa21:20180222073801p:plain

 

収益性ファクター

収益性ファクターのデータは1964年からです。

左の1が最も収益性の低いグループ、右の10が最も収益性の高いグループとなります。

時価総額ウェイトのグラフを見ると、収益性が最も低いグループのリターンは明確に悪いです。それ以外はあまり明確な傾向がなさそうです。

均等ウェイトでも最も収益性の低いグループのリターンが低いのは同じですが、1964年~2016年の期間では収益性効果はほぼ見られません。2003年~2016年の期間では収益性が低いグループのリターンが悪い感じです。

f:id:sapa21:20180222073835p:plain

f:id:sapa21:20180222073846p:plain

 

投資ファクター

収益性ファクターと同じく1964年からのデータです。

左の1が最も投資の少ないグループ、右の10が最も投資の多いグループです。投資が少ないほどリターンが高いというアノマリーです。

1964年~2016年の期間ではおおむね左上がりの直線となっており、投資ファクターの効果が見られます。

2003年~2016年の期間では、均等ウェイトでは投資ファクターの効果がありますが、時価総額ウェイトでは凸凹のグラフとなっており微妙な感じです。

f:id:sapa21:20180222074241p:plain

f:id:sapa21:20180222074249p:plain

 

感想

5つの主要ファクターに関して言えば、1927年や1964年を起点とした長期で見ればどれも有効性があると言えそうです。

しかしながら2003年を起点とした期間では、特にサイズ、バリュー、モメンタムの主要3ファクターのリターンが大きく落ちてしまっています。

もともとファクターリターンは10年単位で低迷することもあるのでこれだけを見て効果がなくなったと安易に言うことはできません。とはいえアノマリー発表後に超過リターンはかなり落ちるという論文もあるので、ここ最近のファクター効果が弱くなっている可能性はあるのかなと思います。

ファクター投資をするのであれば、複数ファクターに分散するなど何らかの工夫をしたほうがいいと思います。