株式投資のリスクはどれくらいあるのか?

前回の記事で長期的な株式投資の実質リターンはだいたい年4~7%くらいに落ち着きそうだという話を書いた。

このリターンがすんなり得られるのであれば株を買うことに躊躇する必要はないが、残念ながら株式投資にはリスクもある。

ではそのリスクとはどれくらいのものなのか。

 

年間で損失が出る確率

一般的な感覚としてはリスク=損をすることだと思う。そこでまずは年間でマイナスリターンになる確率がどれくらいあるのか見てみる。

下のグラフは1970年~2016年までのMSCI JAPANの年間リターン(名目・配当込み)の分布。

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47年のうちマイナスリターンになったのは16回で全体の34%、そのうち-10%を超える損失は11回、-20%を超える損失は4回、-30%を超える損失は2回だった。

おおよそだが、3年に1度マイナスの年があり、-10%を超える損失が4~5年に1度、-20%を超える損失が11~12年に1度起きたことになる。

 

次にMSCI USA(名目・配当込み)の損益分布。

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こちらは日本株よりも極端な損失や利益が少なく中央寄りの分布となっている。

47年のうちリターンがマイナスになったのは9回で全体の19.1%、そのうち-10%を超える損失は6回、-20%を超える損失は3回、-30%を超える損失は1回だった。

アメリカ株の場合はマイナスリターンは5年に1度くらいの頻度で、-20%を超える損失は約20年に1度しか起きなかったことになる。

 

最後にMSCI WORLD(名目・配当込み)。

こちらはマイナスリターンになったのが4年に1度(12年/47年)で、-10%以上の損失が6~7年に1度(7年/47年)、-20%以上の損失が23年に1度(2年/47年)という結果となった。

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どれくらいの損失が発生するか

次にドローダウンチャートを使って損失の大きさを見てみる。まずはMSCI USAの月足。

ギザギザの谷の深さは株価の直近ピークからの下落率を示す。谷から0%に戻ると損失をすべて回復して新高値をつけたことを意味する。

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MSCI USAの場合、1974年、2002年、2009年に-40%を超える損失があり、そのうちの2009年は-50%を超える損失を記録している。これらはいずれも景気後退の前後にあたる。

その次に大きいのは1987年で-30%近い損失となる。これはブラックマンデーで景気後退を伴わない暴落だった。

 

続いてMSCI JAPANの月足ドローダウン。

日本株は1990年のバブルを境に状況がまったく違ってくる。バブル前の期間では1974年に-40%近いドローダウンが発生しているものの、それ以外に大きなドローダウンはない。

一方で1990年以降はひどい惨状で高値を回復しないまま損失が拡大している。最高値からの下落率は7割近くに達する。

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上のグラフではバブル崩壊以後が見にくいので92年7月を起点としたグラフも載せておく。

株価の山と谷の差を見ると、89年12月~92年7月が-56%、94年5月~95年6月が-27%、96年4月~98年9月が-34%、00年3月~03年4月が-52%、07年6月~09年2月が-57%となる。

短期間に5回の大幅下落が起きており、そのうち3度が-50%を超える大損失となる。

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これらの結果を見ると厳しい下げ相場では-40~60%もの損失が発生すると言えそうだ。

 

株価の長期低迷期

最後に長期にわたって株価が低迷した期間の年足チャートを見てみる。

1966~1981年のS&P500、2000年~2012年のMSCI USA、1989~2014年のMSCI JAPANの名目と実質の株価(配当込み指数)をチャートにした。

 

・S&P500 1965年~1983年

インフレによって株価が低迷した時期に当たる。

名目株価は72~74年を除き余り下げていないが、インフレが激しかったため実質株価で見ると長らくマイナス圏で推移している。株価が本格的に反転に入るのは80年を過ぎてからで、結局15年以上も低迷が続いたことになる。

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※データはシラー教授のHPより取得している。 

 

・MSCI USA 1999年~2013年

ITバブル崩壊とリーマンショックという2つの下落相場が連続した期間。

名目株価は2010年に、実質株価は2013年にリーマンショックの落ち込みを回復した。

ITバブル絶頂時の株価がスタート地点とはいえ、21世紀のアメリカ株でもタイミングを間違うと10年以上も低迷してしまうということだ。

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・MSCI JAPAN 1989~2016年

バブル崩壊後に長期低迷している日本株の推移。

バブル崩壊から27年経っているが、株価はいまだにピークの大きく下回っている。株価のボトムでは名目-65%、実質-68%という下落率となる。

ただし、バブル崩壊直後の90~92年を除けば、この20年間は横ばいだったとも言える。あまり救いにならないが。

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まとめ

以上見てきたことをまとめると、株式投資で年間リターンがマイナスになるのは時期や国にもよるが4年に1度くらいで、厳しい下げ相場では損失はマイナス40~60%にも及び、ときに10年以上にわたって株価が低迷することもある、というところか。

この見返りとして長期的に年間4~7%くらいの実質リターンを得ることができる。

こうして文字にするとリスクが大きすぎて正直あまり魅力的に見えない。。。