ケネス・フレンチ教授のウェブサイトとAQR(クオリティ・ファクターのみ)のデータを使って日本株のファクターリターンを調べてみた。
まずは1990年以降の各ファクターの累積リターン。
※SMB:サイズ、HML:バリュー、RMW:収益性、CMA:投資、WML:モメンタム、QMJ:クオリティ。
パッと見てわかるようにバリューファクターのリターンがひとつ抜けている。
2番手はクオリティファクターでこちらもそれなりのプラスリターンとなっている。
サイズ、収益性、投資ファクターはプラスではあるが上の二つほど大きくない。モメンタムはほぼニュートラル。
日本株はバリュー効果が強いという評判どおりの結果だが、グラフを見るとリーマンショックのころからバリューファクターは横ばいジリ下げに転じている。
下のグラフは2009年(2008年12月を100とする)以降の累積リターン。
この期間だと成績が良いのはサイズと収益性ファクターで、かなり安定して利益を出している。
一方でバリューファクターは右下がりのマイナスリターンとなっており、リーマンショック以降はまったく機能していない。
サイズ2×バリュー3
大型株と小型株に分けたときのバリュー効果を見てみる。
1990年からの期間では、低PBRグループ>中PBRグループ>高PBRグループの順にはっきりと分かれており、バリューファクターが有効なのがわかる。大型株と小型株に関しては途中の波はあるもののほぼ同リターンとなっている。
期間を2009年以降で見ると、大型株グループと小型株グループのリターンに大きな差がついておりサイズ効果が強く出ている。
一方でバリュー効果は消え去っており、小型株では高PBRの方がリターンが良くなっている。
サイズ5×バリュー5
サイズ5グループ、バリュー5グループの25ポートフォリオの年率換算リターンも計算してみた。
まずは1990年からの期間。この期間ではすべてのサイズでバリュー株のリターンが非常に良い(右列の割安に行くほどリターンが高い)。
サイズ別では最も小型のグループが強いものの、中間のサイズでは傾向がはっきりしない。
1(割高) | 2 | 3 | 4 | 5(割安) | |
1(小型) | 2.1% | 2.8% | 3.6% | 4.7% | 6.0% |
2 | 2.0% | -1.0% | 1.1% | 3.3% | 3.0% |
3 | -3.1% | -0.3% | 1.1% | 1.5% | 3.8% |
4 | -2.5% | 1.3% | 1.6% | 3.1% | 3.3% |
5(大型) | -1.2% | 1.4% | 1.5% | 3.4% | 5.1% |
次に2009年以降だが、この期間ではバリュー株効果がほぼ見られない。小型株ではグロース株効果の方が強い。
一方でサイズ効果は強く表れており、最小グループのリターンはバリュー株で16%以上、グロース株では20%を超える高パフォーマンスとなっている。
1(割高) | 2 | 3 | 4 | 5(割安) | |
1(小型) | 20.5% | 18.1% | 16.6% | 16.6% | 16.3% |
2 | 19.8% | 13.7% | 10.0% | 14.1% | 11.0% |
3 | 9.2% | 12.1% | 13.4% | 10.2% | 9.8% |
4 | 10.1% | 13.0% | 11.5% | 9.1% | 9.3% |
5(大型) | 7.5% | 7.0% | 7.4% | 3.1% | 8.0% |
サイズ2×収益性3
近年成績の良い収益性ファクターのリターンも大型株と小型株に分けて見てみる。
まず全期間では、大型低収益グループが弱く、小型高中収益グループが強くなっている。ただ、大型株では中収益が最も良いなどはっきりした傾向ではなさそう。
2009年以降では特に小型株で収益性効果がきれいに出ており、小型高収益のリターンは非常に良くなっている。
感想
一般的には日本株はモメンタムが効かずバリューが強い市場とされている。
確かに長期で見るとそのような傾向になっているのだが、近年はバリュー効果がほぼ消えてしまっており、ファクター投資の難しさを感じさせられる。
個人的には、日本市場では実績のあるバリューファクター、他の指標と組み合わせて効果を発揮するサイズファクター、バリューほどではないものの他の指標よりも成績の良いクオリティファクターの3つを使うのが良いのかなと思う。