トレンドとバリュエーションの併用

株式市場へのシンプルなアプローチという記事でトレンドとバリュエーションを併用してマーケットタイミングを判断する方法が紹介されていた。

トレンド(月足の10か月移動平均線)とバリュエーション(シラーPER)を組み合わせて上昇トレンド&割安、上昇トレンド&割高、下落トレンド&割安、下落トレンド&割高の4つの領域を作り、その4つの領域のS&P500のリターンを計算するとマイナスリターンになったのは下落トレンド・割高のときだけだったそうだ。

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この結果から、現在マーケットのバリュエーションは割高であるものの、株価が崩れて下落トレンドに入るまでは心配しなくていいとアドバイスしている。

 

ところでトレンドとバリュエーションで判断するという戦略はシンプルで良いなと思ったのだが、元記事を見ると対象期間が1900年~2013年となっている。

個人的には戦後のみの成績も知りたかったので、株価とシラーPERをダウンロードして過去50年くらいのリターンも調べてみた。

 

まずはYahooFinanceで取得したS&P500の株価データを使った結果(シラーPERはシラー教授のHPからダウンロードできる)。

対象期間は1966年~2016年10月までで配当は含まれていない。割高・割安を分けるシラーPERは1966年~2016年の平均である19.8倍とする。

各領域の年率リターンは以下のとおり。下落・割高局面を除く3領域でプラスで元記事と似た傾向になった。

・上昇トレンド&割安局面 8.6%(181か月)

・上昇トレンド&割高局面 9.2%(235か月)

・下落トレンド&割安局面 7.0%(121か月)

・下落トレンド&割高局面 -8.2%(73か月)

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次に配当込みのリターンも知りたかったので、株価にMSCIのUSインデックス(配当込み)を使ってみる。期間は1971年1月~2016年10月で、シラーPERの分岐点は期間平均の19.7倍とした。

こちらも元記事と同じく下落・割高局面以外は大きなプラスとなった。

・上昇&割安局面 11.4%(190か月)

・上昇&割高局面 12.4%(218か月)

・下落&割安局面 9.4%(83か月)

・下落&割高局面 -2.5%(59か月)

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シラー教授のデータにはインフレを調整した実質株価も掲載されているので、それを使ったリターンも調べてみる。期間は1966年~2016年10月で、シラーPERの分岐点は期間平均の19.8倍とする。

このケースだと下落・割安局面でマイナスリターンとなってしまった。

・上昇トレンド&割安局面 7.5%(163か月)

・上昇トレンド&割高局面 7.2%(221か月)

・下落トレンド&割安局面 -5.3%(139か月)

・下落トレンド&割高局面 -6.9%(87か月)

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以上のようにどの株価データを使うかによって結果はやや変わってしまう。

ただ、上昇トレンドであればバリュエーションが割高でもプラスリターンというのは一貫した傾向のようだ。