パチンコ・パチスロ大手。フィリピンに巨大カジノを建設中の会社です。
業績
ここ2年は連続して経常減益となっています。今期も減益の予想です。
11/3 | 12/3 | 13/3 | 14/3 | 15/3 | 16/3(予) | |
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売上高 | 45,019 | 74,858 | 99,182 | 86,760 | 88,085 | 100,300 |
経常利益 | 6,643 | 33,368 | 44,873 | 23,626 | 22,055 | 19,200 |
純利益 | 4,468 | 31,380 | 27,449 | 9,409 | 10,173 | 9,300 |
今期予想も含めた過去5年間の平均は売上898億円・経常利益286億円です。今期予想は売上1,003億円・経常利益192億円です。
株価は1,846円で時価総額は1,500億円くらいになります。PERは今期予想で16倍、5年平均で9倍くらいです。
バランスシート
15年6月期の現金と有利子負債は下記のとおりで財務は良好です。
現金 39,155百万円
投資有価証券 58,330百万円
関係会社長期預け金 28,964百万円
短期借入金 28,782百万円
1年内償還予定の社債 500百万円
ウィンリゾートの持ち株
ウィンラスベガスやウィンマカオを運営するウィンリゾートが発行した額面19億ドルの受取手形を持っています。ユニバーサルとウィンリゾートの関係はこのへんに書かれています。
BS上でのウインリゾート株式は取得原価で計上されています(その他有価証券に「当社の連結子会社が保有する株式であり時価は存在するものの、売却を行うことが困難であり時価を把握することが極めて困難であるとみなされる」540億円ほど計上されています)。
また、受取利息は裁判所に預けられていますがBSには反映されていません。
ユニバーサルの時価総額が1,500億円でPBRが0.6倍前後なので2,000億円というインパクトは非常に大きいです。
なお、ウィンの株は3割減で強制的に買い戻されたとのことですが、株価下落により受取手形の価値は現在の市場価値(10Bドルの約20%)と同じくらいになっています。
贈収賄疑惑
2013年にフィリピン高官への贈収賄疑惑が報じられています。
この問題については、ユニバーサルがフィリピン側の調査が終了し疑惑が解消されたと考えているとのIRを出しています。詳しい事情は知りませんが、フィリピンのカジノが開業するのは確かな様子なので当面の問題はないのではと思います。
フィリピンのカジノ
2016年12月にマニラベイリゾーツをオープンさせる予定になっています。
2012年のIRですが、立地は空港の側で45万㎡、カジノフロアの面積は2万8千㎡、客室数1050(VIP向け450)、スロット3000台、ゲームテーブル500台となっています。カジノ施設のほかに、高級ホテル、レストラン、商業施設、バジェットホテル、レジデンス、世界最大級の噴水やビーチクラブ等を兼ね備えた一大複合リゾートとのことです。
やっぱアルゼ株でしょ!!さんに株主総会の様子が書かれており、建設額は総額で4,000億円にのぼるそうです。3Qの自己資本は2,166億円なのでかなり大きい金額です。
まずは第一ステップとしてホテルに2000億円、第二ステップとしてショッピングセンターなどに1000億円、第三ステップとして状況に応じて開業後の2年か3年で1000億円の投資を検討しており、概算で4000億円ぐらいになる。
ホテル建設に掛かる2000億円のうち、既に1000億円は投資しており、残りの1000億円はファイナンス会社から調達することになっている。第二ステップでは1000億円の投資を計画しており、続けて検討していくことになるが、今のところ増資する計画はなく、独立性を維持できる範囲でマニラベイリゾーツの運営会社を上場させ、その資金を使って投資していきたい。
カジノの収益予想
同業の業績を見てみます。
Bloomberry Resorts Corp
マニラベイリゾーツと同じベイエリアにあるソレアリゾートアンドカジノ (2013年3月開業)を運営する会社です。
HPによると、カジノフロアの面積は18,500㎡、1,400のスロットマシン、295のゲームテーブルと88の電子ゲームテーブル、488のホテルルームとのことです。2014年11月にオープンしたスカイタワーは、312のホテルルーム、66のゲームテーブル、233のスロットマシーンとなっています。規模としてはマニラベイリゾーツの方が大きいようです。
業績はこんな感じです。決算書がここで見れました。
3Qまでは14%の増収です。通期に換算すると約27,500百万ペソで、現在のレートで572億円となります。
2013年 | 2014年 | 2015年 | |||
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1Q | 2Q | 3Q | |||
売上高 | 12,343 | 24,122 | 6,343 | 5,986 | 7,094 |
税前利益 | -1,160 | 6,482 | 136 | -280 | 635 |
純利益 | -1,315 | 4,072 | -533 | -786 | -189 |
Travellers International Hotel Group
2009年にオープンした空港側のカジノ施設リゾートワールドマニラを運営する会社です。HPによれば13,167㎡のゲームエリアとのことです。
業績はこんな感じで Bloomberry よりやや大きな売上高です。
2013年 | 2014年 | 2015年 | |
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売上高 | 33,381 | 31,563 | 27,719 |
税前利益 | 2,806 | 5,520 | 4,066 |
純利益 | 2,739 | 5,445 | 4,017 |
マニラベイリゾーツはソレアやリゾートワールドよりも大型なのでそれ以上の売上を期待したいところです。
利益率ですが、ソレアの14年が17%、トラベラーズは14年が17%、15年が14%でした。海外では、ラスベガスサンズやウィンの良い時で営業利益率25%くらいになります。
これらの数字からマニラベイリゾーツの売上と利益を考えると、期待先行で売上1,000億円・利益200億円、もうちょっと保守的に見ると売上700億円・利益100億円くらいでしょうか。
ただ、1年目はソレアのように赤字でしょうし、分離上場で持ち分を減らせば当然これよりも利益は減ります。
なお、今期のフィリピンのカジノ業界は逆風が吹いており、メルコクラウンフィリピンやブルームベリーリゾートは損失、トラベラーズも大きな減益となっています。
こちらの記事によれば、フィリピンカジノは中国のハイローラーに大きく依存しており、中国経済のスローダウンと腐敗の取り締まりによる影響が響いているとのことです。
感想
・カジノ事業で順調に利益を出せれば、今期純益100億円の会社が50~200億円くらいの上積みを期待できるのではと思います。
・パチンコ・パチスロ事業の規模が大きいのに驚きました。カジノがうまくいったとしても、パチンコ・パチスロ事業の業績は無視できません。
・ウィンの受取手形2000億円はインパクトが大きいです。
・現在のフィリピンカジノは作れば売れる状況ではないみたいです。悪い時期にオープンしてしまう心配はあります。
・フィリピンには巨大カジノが何軒も作られていますが市場はあるのだろうかとは思います。ラスベガスやマカオにカジノがあるのはわかりますし、シンガポールも交通の要所でカジノもひとつなのでわかります。しかし、フィリピンは人口が多いとはいえ国内にそこまで大きな市場があるように思えませんし、旅行者の多い国でもないし、実際お客さんが来るのだろうか?という疑問は感じます。
2019年1月の記事です。