バリュエーションで株価を予測できるか?

PERの水準がその後の株式リターンを予測するというキャンベル教授とシラー教授の研究は有名です。

この研究で使われた景気循環調整済みPER(インフレ調整をした10年間の利益を使ったPER)は、CAPEレシオまたはシラーPERとして株価の割高・割安を測る指標として広く使われています。

しかし一方でこの指標は株価予測の役に立たないという主張も見かけます。

実際の投資においてCAPEレシオはどれだけ使えるのか?この点を少し調べてみました。

 

CAPEレシオと株式リターン

CAPEレシオのデータはシラー教授のHPで公開されています。

このデータを使ってCAPEレシオとその後10年の実質株式リターンを散布図にすると、高いCAPEレシオはその後の低リターン、低いCAPEレシオはその後の高リターンをもたらしているのがわかります。

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しかし、期間をその後10年ではなく1年にするとCAPEレシオと実質株式リターンの関係はほぼ消滅してしまいます。

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つまり今後10年という長期で見ればCAPEレシオはリターンの予測に役立つものの、今後1年といった投資家が最も知りたい期間のリターン予測にはあまり役に立ちそうにないということです。

 

他の指標との比較

CAPEレシオの有効性を他の指標と比較したレポートもあります。

Vangard の Forecasting stock returns では1926年~2011年の期間における米国株価に対する15の指標の予測力を検証しています。

下のグラフがその一覧で、一番左がCAPEレシオ、二番目が実績PERです。青い棒は今後10年の実質株価リターンへの説明力、薄茶色の棒は今後1年の説明力となります。

グラフを見てわかるように、今後10年という期間ではCAPEレシオやPERの説明力は0.4前後あり、他の指標に比べて高い値です。

しかし、今後1年という期間ではCAPEレシオやPERの説明力は低く、むしろ配当利回りといった指標の方が高くなっています。ただ、それらの指標の説明力もリターンを予測できるとは言えないレベルです。

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CAPEレシオの上放れ

もうひとつCAPEレシオの大きな問題は、1990年代以降にこの指標が過去の平均より上方に切り上がっていることです。

1880年から現在までのCAPEレシオの平均値は16倍弱ですが、1990年以降の期間ではリーマンショックの一時期を除いて常に平均以上の数字で推移しています。

一方で株価は1990年から現在までに8倍になっているため、平均以上のCAPEレシオを見て株を売った投資家は大きな機会損失を受けることになりました。

 

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 Shillar PE Ratio

 CAPEレシオの上放れについてはこちらにも書きました。

 

まとめ

・CAPEレシオは今後10年といった長期の株式リターンの予測には役に立つが、今後1年といった短期の予想にはほとんど役に立たない。

・90年代以降のS&P500のCAPEレシオはほとんどの期間で平均以上の数値となっており、単純にこの指標を使ったマーケットタイミングで超過利益を得るのは難しそう。

 

株価がバリュエーションを無視してどこまでも上がるというのは考えにくいです。したがってCAPEレシオやPERが重要なことは間違いないです。

しかし、短期ではCAPEレシオの有効性が低いことから、マーケットタイミングとして使うのであれば他に何らかの工夫が必要になると思います。