YY(YY)3Q決算

中国のライブストリーミング大手です。ゲーム動画配信サイトのフヤ(HUYA)を子会社に持ちます。

3Qは売上高+33%の増収、営業利益-7.6%の減益でした。Non-GAAPの営業利益は+12.9%の増益です。

過去4四半期の希薄化EPS(特別損益があるのでNon-GAAP)を合計すると51.1RMB(7.16ドル)で、株価61.07ドルに対する実績PERは8.5倍です。

YahooFinanceのアナリスト予想を使った今期PERは8.6倍、来期PERは7.3倍です。

 

会社別に見るとYY本体の業績は売上高+13%の増益、営業利益-9%の減益でした。依然として売上は2桁伸びていますが営業利益は3Qまで横ばいです。

子会社フヤの業績は売上高+119%の増収、営業損失200万RMBでした。ただ、3Qまでの通期で見ると黒字転換しています。

バランスシートにはネットキャッシュ(現金+短期投資-有利子負債)が20.2億ドルあります。

 

現在のYYの時価総額は38.6億ドルです。PERはすでに一桁と低いのですが、現金や子会社フヤの価値(現在の時価総額37.7億ドルで17年決算の時点で48.3%を保有)を考えるとさらに割安になります。

YYの不安を挙げるなら成長性でしょうか。本体の業績は頭打ち感がありますし、フヤの成長率は非常に高いのですが、テンセントが議決権ベースで50.1%まで株式を買い増す権利(2020年3月8日~2021年3月8日の期間)を持つため、これが行使されると子会社から外れてしまいます。

一方で期待が持てそうなのは東南アジアで人気のライブストリーミングアプリのビゴライブ(BIGO LIVE)に投資しているところです。YYはビゴライブの筆頭株主で、さらに株式を50.1%まで買い増す権利を持ちます。

 

ライベント(LTHM)3Q決算

堅調な決算でした。

3Qの売上高は前年比で+19%(数量+17%増、価格+2%の貢献)の増収、EBITDAは+25%の増益、純利益は+18%の増益です。

2018年の調整EPSのガイダンスは0.89~0.91ドルで、株価は17.22ドルなので今期PERは19倍前後になります。

 

カンファレンスコールからのメモです。

・2018年のリチウム生産量は21Kt(LCE)になる見通し。2019年のキャパシティは22Kt、2025年に60Ktとの計画。

・2018年の水酸化リチウムの生産量は16Ktの見通し。キャパシティは2019年末に30Ktまで拡大する予定。

・2018年のリチウム需要は+17%の伸びで250Kt(LCE)程度。

・水酸化リチウムの需要は+27%の伸びで74Kt程度。正極材がNCA811や622に向かうことで水酸化リチウムの需要が増えている。

・2018年通年のリチウム価格は2017年に比べて+10%くらいの上昇になりそう。2019年は現在の価格よりもやや高くなると予想。

 ・中国のリチウム市場は夏のあいだ減速したが回復のサインがみられる。スローダウンは補助金政策の変更により在庫削減や高パフォーマンス素材への移行が起きたため。

・リチウム供給は増加したが、生産の遅れや生産量の未達があり、事前のアナウンスと実際の供給量を比べると半分以下のキャパシティの増加しか達成できていない。

 

中国のスポット価格の下落についてはギャラクシー・リソーシズと似たような見解です。また、過剰供給説に疑問をとなえる人の言うとおり供給の未達も起きているようです。来年の価格見通しが良かったのはポジティブサプライズでした。

11月に入ってリチウム株が大きく反発していますが、売られすぎの反発なのか潮目が変わったのか注目したいと思います。

 

マカオのカジノ株 その2

前回の記事でアメリカ系の3社を見たので今回は中国系の3社を見てみます。

 

0027 ギャラクシー・エンターテインメント

サンズ・マカオと首位を争う会社です。

主なカジノリゾートはマカオ半島地区のスターワールド(2006年)とコタイ地区のギャラクシー・マカオ(2011年)です。ギャラクシー・マカオは5つのホテルを含む宮殿のような巨大カジノリゾートです。

 

業績は下のグラフのとおりです。利益率は一桁の年もありますが、2017年は17%まで上がっています。

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マカオのカジノ株

香港に上場しているマカオのカジノ株を調べてみました。

今回はマカオのカジノ市場とアメリカ系の3社について書きます。

 

市場規模

マカオのカジノ市場は2009年~2014年まで順調に成長した後、政府の規制強化によって大きく落ち込みました。2016年中頃に底打ちした後は現在まで回復が続いています。

下のグラフはマカオ・ゲーミング規制当局が発表している月次の売上高です。

2018年は10月まで前年比+14.3%と堅調ですが、9月と10月は前年比+3%に減速しています。

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HPではゲームごとの売上も発表されているので、VIPバカラとそれ以外をグラフにしてみます。

VIPバカラは2011年までは売上の7割前後を占めていましたが、その後は徐々に低下しており2018年(1月~10月)は55%になっています。

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バイドゥ(BIDU)決算

中国の検索最大手のバイドゥが3Q決算を発表しました。

前年比で売上高は+27%の増収、営業利益は-6%の減益です。

過去4四半期のEPS(特別利益があるのでNon-GAAP)で計算した実績PERは19.5倍になります。YahooFinanceのアナリスト予想を使った今期PERは20.3倍、来期PERは17.6倍です。

 

バイドゥの四半期業績をグラフにすると下のようになります。売上は大きく伸びていますが、利益の伸びはいまいちです。

2016年後半から2017年初めにかけて業績が低迷しているのは不正医療広告の問題の影響で、今四半期に減益なのは動画サイトを運営する子会社のiQIYIの損失が大きくなっているためです。

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中国の債務問題

アメリカとの貿易戦争をきっかけに中国株が売り込まれています。

低PER&高成長率の銘柄も多くなっており非常に魅力的なのですが、中国経済に関してはかねがね民間債務の急増が指摘されており、もしかしたら深刻な景気後退が起こるのではないかという不安もあります。

 

中国と世界の金融債務

中国と世界の債務問題に関してはたくさんレポートが出ています。たとえば岡三アセットマネジメントの資料はグラフが多くて見やすいですし、内閣府の資料は部門ごとの債務を詳しく解説しています。また、BISからは各国の債務データが簡単にダウンロードできます。

これらの資料からリーマンショック以後の中国や世界の債務状況をまとめると、、、

・先進国の債務/GDPは増加しているがそれほど大きく増えてはいない。民間債務/GDPはほぼ横ばいで政府債務が増加の原因。

・アメリカは家計の債務/GDPを大きく減らしたことで民間債務/GDPは減少している。

・新興国は民間債務と政府債務の両方がGDP比で大きく増えている。

・新興国の債務の増加率は国によってまちまちだが、ほとんどの国は無茶苦茶増えているわけではないし、そもそも債務/GDPの数字は先進国に比べてかなり低い。

・アメリカ、日本、ユーロ圏、中国の4地域で報告されている全地域の債務の75%を占める。

・中国は目立って債務を増やしている。債務/GDPは2008年の141%から2017年の256%まで急増しているし、256%という数字もアメリカやユーロエリアとほぼ同レベルの水準。

・部門別に見るとどの部門も大きく債務を増やしているが、家計部門と政府部門のGDP比は50%未満で日米欧に比べて小さい。一方で企業部門の債務/GDPは160%でアメリカの2倍、日本やユーロエリアの1.6倍になる。

・内閣府の資料によると中国の企業部門の債務の75%が国有企業によるものであり、企業部門の債務の一部は実質的には政府部門の債務と考えられるとのこと。

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テスラ(TSLA)決算

テスラが黒字決算を発表しました。これまできちんと決算を見たことがなかったのでこの機会に内容を見てみます。

 

業績

まずは過去5年の売上高と営業利益です。営業利益は赤字ですが、売上の伸び率は高いです。

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次に四半期の売上高と営業利益です。

長らく赤字が続いていましたがモデル3の生産が軌道に乗ったことから3Qは大幅増収の黒字転換でした。営業利益4.2億ドル、純利益3.1億ドル、営業キャッシュフロー13.9億ドル、フリーキャッシュフロー(営業-投資)8.3億ドルとすべてが黒字になっています。

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新浪(SINA)

中国のポータルサイト大手でウェイボーの親会社です。

時価総額は44億ドルでシナが持つウェイボーの価値58億ドルを下回っています。

 

ウェイボー

中国版ツイッターと紹介されることが多い会社です。事業内容に関してはアメリカ部さんの記事が詳しいです。

ウェイボーの2Qは前年比で売上高+68%の増収・営業利益+76%の増益と好調でした。

直近1年間の売上は約15億ドルでYYやモモと似たレベルです。テンセントやアリババの400億ドル前後に比べると小さい会社です。

直近1年のEPSを使ったウェイボーの実績PERは27倍です。YahooFinanceの数字を使った今期予想PERは21倍、来期予想PERは16倍です。高成長率が続くと仮定すると割安感があります。

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The Next Economic Disaster

金融危機における民間債務の重要性を解説した本です。

The Next Economic Disaster: Why It's Coming and How to Avoid It

The Next Economic Disaster: Why It's Coming and How to Avoid It

 

著者によると金融危機の原因は民間債務の急激な増加と持続不能な水準です。

民間債務の増加は通常は経済成長を助けますが、過度な貸出ブームが起きると質の悪い債務が増加してやがてこれが金融危機につながるそうです。金融危機の後は過剰債務を解消するために長期にわたる経済成長率の低下が起きます。

民間債務以外の政府債務、経常赤字、財政赤字、為替レートといった指標は危機の予測に役立たないそうです。

 

このような債務の増加が危機を引き起こすという話は他の場所でも見かけるのですが、この本の特徴は危機を予測する明確な条件を設定しているところです。

著者によると、主要国においては以下の2つの条件を満たしたときに危機が起こる可能性が極めて高くなるそうです。

① 民間債務/GDP比が5年で18%以上の上昇

② 民間債務/GDP比の水準が150%以上

 

この条件も含めた主要22か国(世界のGDPの81%)に対する検証の結果は以下のように書かれています。

① これまでに起きた危機において民間債務/GDP比が5年で18%以上増加しているか?

22か国で起きた危機のうち民間債務のデータがあるのは22個。このうち19個は5年で18%以上の債務の伸びがあった。

債務の増加が見られなかったのは2008年のドイツとスイス、1993年のインド(これは比較的小さい経済)。

 

② 1. 民間債務/GDP比が5年で18%以上の上昇、2. 民間債務/GDP比の水準が150%以上、の条件を満たした国で危機またはGDPのマイナス成長が起きたか?

2000年以前でこの条件を満たしたのは6回。そのうち、ノルウェー、スウェーデン、日本、韓国で危機が起き、スイス、カナダではGDPのマイナス成長が起きた。だましはない。

2000年以後でこの条件を満たしたのは11回。そのうち9回は危機かGDPのマイナス成長が起きた。どちらも起きなかったのはオーストラリアと韓国でいずれも2000年代後半。2001年のノルウェイを除いてすべて2007-08年関連になる。

 

③ 1. 民間債務/GDP比が5年で18%以上の上昇、2. 民間債務/GDP比の水準が100-150%、の条件を満たした国で危機またはGDPのマイナス成長が起きたか?

民間債務の水準を100-150%にすると予測力が落ちる。それでも13回のうち10回は危機かGDPのマイナス成長が起きた。外れは3回。

 

危機の数が22回と比較的少なく、しかもそのうち10回が2007~2008年に偏っているのが気になりましたが、民間債務の急増が金融危機をもたらすというのは直観的に納得できますし、ある程度の基準が設定されているのは分かりやすいと思いました。

なお、この本は2014年の発行ですがその時点で中国の民間債務の急増が指摘されています。中国の民間債務については長らく問題視されていますがこれまで危機は起きていません。これがどういう結果になるか気になるところです。

 

ギャラクシーリソーシズ3Q

アクティビティレポートとカンファレンスコールが出ています。

ギャラクシーはオーストラリアのマウントキャトリンでリチウム鉱石を生産中の会社です。マウントキャトリンの他にもアルゼンチンのサルデビダとカナダのジェイムスベイを開発しています。

3Qのマウントキャトリンの生産量・販売量・キャッシュマージンは減少しました。採掘予定地の許可が遅れたため、低品質の鉱石の生産が主になったためです。許可は10月1週に下りたそうです。

サルデビダは現在戦略パートナーを探している段階で2018年末までの発表が目標とのことです。

なお、サルデビダは北部分を280百万ドルでポスコに売却することが決定しています(残った部分でも十分な資源量があります)。これにより会社のバランスシートはキャッシュ450百万AUドル・有利子負債ゼロになるそうです。現在の時価総額953百万AUドルの半分近いキャッシュです。

 

カンファレンスコールでは中国のスポット価格についての話がありました。中国のスポット価格は海外事情よりも国内事業に左右されているのではないかという内容です。

・6月に中国の補助金政策が長距離車に有利に変更されたことで低品質の素材の在庫削減が進んだ。この在庫削減は多かれ少なかれ終わったと見る。

・中国青海省の塩湖からのリチウム生産量が増えた。これらは低品質でバッテリー用途の基準に達しない。

・青海省の生産増加や中国の経済環境もあって財務の弱い会社がキャッシュを得るために通常よりも低価格で製品を売った。

・中国の炭酸リチウム価格が80,000CNYまで下がったにもかかわらず水酸化リチウムの価格は150,000~120,000CNYを維持している。

・中国からの水酸化リチウムの輸出価格は底堅く16,000~22,000ドル程度。

・中国へ持ち込まれる新たなスポジュメン鉱石を観測しているがわずかな量しか増えていない。

 

リチウムアメリカズのプレゼンテーション資料には中国のスポット価格とSQMやオロコブレの販売価格が掲載されており、ギャラクシーの言うとおり国際価格が安定していることや中国のスポット価格で炭酸リチウムの下げが水酸化リチウムより大きいのが確認できます(水酸化リチウムのスポット価格もけっこう下げていますが)。

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