中国株の中間決算

少し前に中国株二季報でチェックした銘柄の中間決算をざっと見てみました。気になった銘柄の中間業績とPERを表にします。

中国株二季報 2018年夏秋号

中国株二季報 2018年夏秋号 その2

中国株二季報 2018年夏秋号 その3

 

銀行

4大銀行は手堅い数字でした。株価もそれほど値動きがありません。

不良債権処理会社は両者ともに減収減益ですが、中国華融資産管理は大幅減益の決算が出てきました。事前にトップ失脚という悪材料はありましたがひどい決算です。

コード 会社名 株価 売上高 営業益 PER (二) 配当
0939 中国建設銀行 -1.8% 6% 5% 5.1 5.7 5.2%
1288 中国農業銀行 0.0% 11% 6% 4.7 5.3 5.5%
1398 中国工商銀行 -1.4% 7% 0% 5.6 5.8 5.2%
3988 中国銀行 -1.1% 1% 1% 4.1 5.1 6.1%
1359 中国信達資産管理 -4.7% -10% -4% 3.8 3.5 8.6%
2799 中国華融資産管理 -10.9% -7% -87% 39.4 2.2 11.7%

※株価は前回掲載時からの値上がり・値下がり率です。

※ 売上高と営業益は中間決算の前年比です。営業利益がない会社は税前利益を使いました。

※PERは中間EPS×2で計算しています。季節性は考慮していません。(二)は二季報に記載されている今期予想EPSを使って計算したPERです。

※配当は二季報に記載されている予想配当を使って計算した利回りです。予想配当の数字がない銘柄は0%になっています。

※中間決算後の株式分割などは考慮していないのでおかしい数字があるかもしれません。

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逆イールドカーブについての記事のメモ

イールドカーブは短期金利と長期金利との差をグラフ化したものです。通常は短期金利よりも長期金利の方が高くなるのですが、両者が逆転することもあり逆イールドカーブと呼ばれます。逆イールドカーブは将来のリセッションを示唆すると言われています。

逆イールドカーブと景気の関係についてはこんな感じに説明されるようです。

景気拡張期には中央銀行が短期金利を徐々に引き上げます。一方で長期金利は投資家の景気への期待を反映して当初は上昇しますが、彼らが景気に悲観的になるにつれて上昇が鈍り短期金利とのスプレッドが縮小します。イールドスプレッドが縮小すると銀行の収益性が悪化するため、貸出が鈍り景気が減速します。

この逆イールドカーブについて書かれた記事をいくつか読んだのでメモします。

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SQMの決算

2Q決算が出ています。

前年比で売上高+26%の増収、税前利益+30%の増益でした。

EPSは0.51ドル。過去4四半期の合計は1.79ドルです。株価43.59ドルに対する実績PERは24.4倍になります。YahooFinanceの予想EPSを使った予想PERは22.7倍です。

 

リチウムセグメントについてはこんな感じの話です。

・リチウムセグメントの売上高は前年比+22%。全体の29%を占める。

・2Qの販売数量は11.1Ktで前年の11.5Ktからやや減少。

・年間70Ktへの生産能力の拡張が完了。第4四半期にはその生産量を実現できる。

・下半期の販売量は上半期より50%増加する。

・2Qの販売価格はやや上昇。下半期はSQMの生産増加やオーストラリアの新規供給がありやや下がると予想。

・今年のリチウム需要は前年比20%を超えるだろう。

・来年にかけては水酸化リチウムの需要増加が炭酸リチウムよりも大きいと予想される。

・CORFOとの合意が4月10日から適用されたが2Qのコストは前四半期と同じ。

・Mt Holland のスポジュメン鉱石の生産開始は2020年、水酸化リチウムは2021年。少なくとも45Ktの生産量となる。

・SQMの販売価格は基本的に四半期ごとに顧客と決定する。現在は3Q4Qの価格を決めている。供給増による価格への圧力はある。翌年以降についてはどうなるかわからない。

 

中国のネット株

かなり大きく売られている銘柄が多いので、好みの銘柄のPERをチェックしてみました。

 

コード 会社名 株価 PER(実) PER(予) 直近四半期
増収率
直近一年間
売上高
0700 Tencent 337.0 35.0 32.8 30% 41,821
BABA Alibaba 172.8 47.0 29.1 61% 37,540
BIDU Bidu 222.7 20.3 21.7 24% 14,089
JD JD 32.2 290.3 53.7 33% 62,449
WB Weibo 74.9 35.8 26.8 68% 1,474
YY YY 73.6 11.2 10.0 45% 2,061
MOMO Momo 38.2 21.6 15.2 64% 1,488
SOGO Sogou 9.1 36.4 37.9 43% 1,085

※実績PERは直近4四半期のEPSで計算しています。

※予想EPSはYahooFinanceの数字を使いました。

※直近1年間売上高の単位は百万ドルです。

 

YY

ライブストリーミング大手。ゲーム動画配信サイトのHUYAを子会社に持ちます。

2Qの業績は+45%増収、+19%営業増益と堅調でした。HUYAを除くYY単体では+27%増収、+19%営業増益です。

3Qのガイダンスは+25~30%の増益と成長鈍化ですが、会社はワールドカップの放送時間とライブストリーミングのピーク時間が重なることが原因と言っています。

株価は決算後に暴落しており、現在のPERは実績11.2倍・予想10倍という低評価です。いま中国で爆発的に人気が出ているショートムービーとの競争が不安材料になっているようです。ただ、それを差し引いても割安だと思います。

 

Bidu

検索最大手です。

2Qは+24%増収、+29%営業増益でした。PERは実績20.3倍(前年3Qは特別利益が大きいです)、予想21.7倍です。 

バイドゥは新規事業への投資や医療広告不正事件によってしばらく業績が落ちましたが、ここ1年は復調傾向です。ただ、営業利益率は20%弱でかつての50%超えからするとまだ低い水準です。

検索以外の事業は、2017年にフードデリバリーをライバルに売却し、2018年に動画サイトのiQiyiをスピンオフでIPOして現在はAIに注力しています。AI向けのプロセッサ、音声アシスタンスDuerOS、自動運転プラットフォームApolloといったビジネスです。

決算は堅調でPERも手ごろな数字ですが、グーグルが中国再参入を検討という悪材料が出ています。実現すればかなりのインパクトがありそうです。

 

Weibo

テンセントの WeChat と並ぶ二大SNSの一角です。

2Qは+68%増収、+76%営業増益でした。月間アクティブユーザーは431百万人で前年同期比で70百万人の増加とのことです。PERは実績36倍・予想27倍になります。

この会社は成長率が非常に高いですね。売上はバイドゥの10分の1と小さいので伸びる余地も大きそうです。ただし、営業利益率は36%とかなり高いので大幅改善は期待しにくいかもしれません。

不安材料としてはショートビデオプラットフォームの Douyin(TikTok)を持つ Bytedance と激しく対立しているところです。Bytedance はニュースプラットフォームの Toutiao を運営しており Weibo (あるいは親会社のSina)は脅威を感じているようです。

 

JD

アリババに次ぐECの大手です。アリババの天猫がモール型なのに対して、JDは自社で販売・配送を手掛けるアマゾン型です。

2Qは+31%の増収、営業赤字でした。直近1年の売上を使ったPSRは0.7倍で過去最低の数字になっています。

とはいえPSRは結局のところ利益率次第です。PSR0.7倍は利益率10%でPER7倍、利益率5%でPER14倍、利益率1%でPER70倍になります。2017年のアマゾンのAWSを除く北米事業の営業利益率が2.7%(直近四半期はかなり改善して5.7%)なので、小売単体で高い利益率を出すのはなかなか難しいかもしれません。

あとは売上の成長率が徐々に低下しており30%を割れそうなのも気になります。赤字ならば目を見張る成長率が欲しいところです。

 

(追記)

Momo

ライブストリーミング大手。

2Qは+58%の増収、+91%の営業増益と好調でした。月間アクティブユーザーも前年比+18%の増加です。

PERは実績21.5倍、予想17.3倍とYYに比べて評価されています。

モモは今四半期にマッチングサービスのタンタンを買収しました。タンタンは中国の Tinder と紹介されるマッチングサービスのトップで、有料会員は3.1百万人です。なお、モモ単体はこの市場では2番手だったそうです。

2Qではタンタンの業績の1か月分が連結されています。マッチングサービスが入る Value-added Service は全体の1割弱の売上高なので、当面のインパクトはそこまで大きくないかもしれません。

 

マーケットタイミング戦略を検証している記事

いくつか見つけたのをメモします。

 

Combine Market Trend and Economic Trend Signals?

株価のトレンドと失業率を組み合わせたマーケットタイミング戦略を検証しています。以下の戦略が比較されています。

① SPY - 配当調整したS&P500ETFのバイアンドホールド。

② SPY:SMA10 - 月末のSPYが10か月移動平均線を上回っていたらSPY、下回っていたらTビル。

③ UR:SMA12 - 失業率が12か月移動平均を上回っていたらSPY、下回っていたらTビル。

④ Either - ②と③のどちらかがSPYを指定していたらSPY、両方がTビルを指定していたらTビル。

⑤ Both - ②と③の両方がSPYを指定していたらSPY、片方がTビルを指定していたらTビル。

1993年以降の期間の年率リターンは、Either 13% > UR:SMA12 11.3% > SPY:SMA10 10.8% > バイアンドホールド 9.4% > Both 9.2%となっています。バイアンドホールド以外の戦略は大きなドローダウンを回避しています。

なお、失業率の先読みバイアスを避けるために失業率と株価の移動平均に1か月のラグを取ると Either のリターンは13%から11.4%に、ラグを5日にすると12%に下がるそうです。

さらにこの記事ではシラー教授のデータを使って1950年からの検証もしていますが、1950~2000年の期間に限るとマーケットタイミングは明確な優位性を持っていないとの結果です(成績の良い② 株価トレンドや④ Either でもバイアンドホールドと同レベルのリターン)。

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中国のクリーンエネルギー銘柄

中国株二期報を見たときにクリーンエネルギー銘柄に魅力を感じたので少し調べてみました。

クリーンエネルギー銘柄のなかでも龍源電力のPERはやや高めだったので、下の4社を見てみます。4社はいずれも5大電力の傘下の会社です。

0735 中国電力清潔能源

0816 華電福新能源

0958 華能新能源

1798 大唐新能源

 

なお、4社の発電量に占める各エネルギーの割合は以下のグラフのとおりです。

華能新能源と大唐新能源はほぼ風力メインの会社で、他の2社も風力は2~4割を占めています。

中国電力清潔能源と華電福新能源の電力構成は分散されていますが、中国電力清潔能源は天然ガスがメイン、華電福新能源は石炭火力と風力がメインとなっています。

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ちなみに中国電力清潔能源の年次報告書によると、中国の2017年の発電量は6,417.9十億kWhで前年比6.5%の増加でした。自然エネルギーの発電はそのうち26.4%を占めています。

エネルギー別では、火力が4,624.4十億kWh、水力1,194.5十億kWh、風力305.7十億kWh、太陽光118.2十億kWhとのことです。前年比では火力+5.2%、水力+1.7%、風力+26.3%、太陽光+78.6%です。

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アルベマール決算

2Qの決算が出ています。

前年同期比で売上は+16%増加の853百万ドル、調整EBITDAは+18%増加の258百万ドル、調整希薄化EPSは1.36ドルでした。

2018年のEPSのガイダンスは20~25%引き上げて5.3-5.5ドルとしています。

また、会社は自社の株を割安として、これまで行っていた250百万ドルの自社株買いにさらに250百万ドルを追加しました。トータルで発行済み株式数の4.5%くらいです。

株価は98.77ドルまで上げています。ガイダンスを使った予想PERは18~18.6倍になります。

 

リチウムセグメントは、売上高が+30%増加の141百万ドル、調整EBITDAが+23%増加の141百万ドルでした。

リチウムセグメントの調整EBITDAは全社(その他、コーポレート費用前)の約50%です。

前年比でリチウムの販売数量は+15%増加、販売価格は+12%の増加とのことです。

 

Earnings Call Transcript のメモです。正確な情報はリンク先を参照してください。

・リチウム価格については、2018年はこれまでのレンジにとどまる見通し。

・会社のリチウム取引は長期契約なので中国価格には影響を受けない。

・中国のスポット価格は見ない。関係ない。

・価格下落についての提供できる仮説としては、補助金政策の変更により低グレードの炭酸リチウムが市場価格に影響を与えているのではないか?

・需給についてはバランスしている。

・2019年についての話はまだ早いがいまのところは良い感触。

・需給や価格の面で今後1年に何か変化が起きるとは予想していない。

・今後数年という長期スパンでは数量の面から成長が主で価格は中立的と計画している。

・2018年は50kトン近くの需要増加を見ている。2017年の市場規模は220kトンという推定。

・2025年に市場が800kトンに拡大するとの予想。

 

リチウム銘柄の決算(FMC、ORE、GXY)

FMC

18年2Qの決算は、売上+92%増の1,262百万ドル、調整EBITDA+222%増の371百万ドル、調整EPS+271%増の1.78ドルでした。株価は88.09ドルです。

リチウムセグメントは、売上+46%増の108百万ドル、EBITDA+85%増の51百万ドルです。

前年比でリチウムの販売数量は+22%増加、炭酸リチウムや水酸化リチウムの販売価格は+20%以上になったとのことです。

リチウム価格については上昇がまだ続くと見ているようです。

中国ではスポット価格が下落していますが、これについては6月に施行された中国の補助金政策の変更(短距離→長距離EVへのインセンティブ)の結果として炭酸リチウムから水酸化リチウムへのシフトが起きており、それに伴うプラントの改修や在庫削減を理由に挙げています。

とりありず中国の炭酸リチウム価格はあまり役に立たないという見解です。 

FMCのアルゼンチンのキャパシティは2017年の実績が18Ktで、2018年は21Ktのガイダンスです。また、2019年に30Kt、2020年に40Ktに拡大する計画です。

なお、リチウムビジネスは Livent Corporation として2018年10月に分離上場する予定です。

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貿易戦争への対応

ここ最近は貿易戦争が話題になっていますが、このイベントにどう対応すべきかを考えています。

とりあえず現在までにネットで見た情報と現時点での僕のスタンスを書いてみます。

 

関税の状況

・鉄鋼とアルミニウムへの関税が3月に発動。

・7月初めに中国への500億ドル規模の製品に対する25%の関税の一部が発動。

・中国の報復に対して2,000億ドル規模の製品への関税を検討中。

・さらなる報復に対しては3,000億ドル規模の追加関税を行うとの発言。

・輸入車への関税引き上げを検討。

現状では、トランプ大統領の発言はあくまでも交渉材料であり本格的な貿易戦争には突入しないという見方が多いようです。しかし、鉄鋼・アルミに対する関税や中国に対する最初の関税も実現しているので完全に口だけの脅しというわけでもなさそうです。今後は中国に対する追加の関税が実現するかが問題になると思います。

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鉱石系のリチウム銘柄 その3

前回・前々回は生産中または生産までの見通しの立っているリチウム銘柄を見ましたが、今回はプロジェクト初期~中期段階の投機的な銘柄を見てみます。

 

鉱石系のプロジェクト一覧はこちらです。

各数字は会社のHPやプレゼンテーション資料から拾っています。最低でも資源量が発表されているプロジェクトを選びました。

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